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神戸⇄長浜往還記17

4月6日(晴れ)
朝おにぎり二個、納豆、晩セブンにてレンチンするチキン、ずり、豆腐、メンマ、春雨、焼酎

ホテルに置いてある『花より男子』につかまる。面白い。

4月7日(晴れ)
朝おにぎり二個、納豆、晩おにぎり二個、チーズ、ナゲット、黒霧島飲みながら、春巻き

神戸へ。明日は真舟のレコーディング。帰って練習する。自分で考えておきながらむずかしいフレーズ。げんなりする。

4月8日(くもり、雨)
昼「くりやん」にてポパイ丼、晩おにぎり二個、ナゲット、焼酎

真舟REC。かなりよいベース録れたのではないかと思う。声は楽器というが、その反対も同じで、楽器は声だということにやっと気づいた。気づいてはいたが言語化できて、血肉になった。ベースは、リズムを音にしたものであり、同時に歌声だ。スコット・ラファロ。ジェマーソン。ポール・マッカートニー。ジャー・ウォブル。ミック・カーン。おれにしか弾けないベース。それが見えてきた。
録り終わり、ケジャくんおすすめの「くりやん」へ行きポパイ丼とビール。このポパイ丼がむちゃくちゃに美味い。満足したあとで、太融寺へ。神仏習合、不動明王から空海、稲荷まで、なんでもござれのところで面白かった。 
そのあと辻くんとディスク・ユニオンへ。ボンゾ・ドッグ・バンド『gorilla』、トット・テイラー『マイ・ブルー・ピリオド』、スティーラーズ・ホイールのおそらく一番有名なアルバム、あとACID CASUALTIES『PANIC STATION』というぜんぜん情報出てこないレコードをジャケ買い。
録りは乾さん。DAISY LOOやLADYMAIDのときに録ってくれた人で、真舟でもお世話になっている。ひさしぶりに会えて嬉しかった。一緒に写った写真を太田くんに送る。


4月9日(くもり)
昼「松岡珈琲店」で玉子サンド半分、晩お好み焼き、こんにゃく、豆腐、鶏肉、じゃがいもチーズなど鉄板で焼いたもの

風が強い日。明け方はすさまじい暴風。家内と京都へ。西田くんと会って、夜は酒を飲む。ひさしぶりに京都に来た。

4月10日(晴れ)
昼まつたけのお吸い物を使ったツナの和風パスタ、ちくわのカレー炒め、晩「まさ」にて焼き鳥、厚揚げ、焼きおにぎり

料理を作ったり。エリアーデ読んだり。一日買ったレコードの音楽鑑賞。スティーラーズ・ホイール、聴いていたがじっくりサブスクだと腰すえて聴かなかった音楽。しぶいビートルズって感じ。タランティーノ『レザボア・ドッグス』にも曲使われてるとか。滋味あるアルバムって感じで、何回かしがむほどよくなるだろう。「Out side looking in」って曲がジョン・レノンの気配あってかっこよい。
しかしこないだ辻くんとも話したが、「身銭を切る」って言葉があるように、金を払うってことは、身を切るってことでもあって、そうすることで向き合い方が変わるってのはありますな。やっぱサブスク、無料(ではないが)で聴き放題って、出会いとしてはありがたいけど、ちょっとでも退屈したら次の曲に飛ばしたりするもんな。
その点レコードはちがう。一度回り出したら、わざわざ飛ばしたりするのが面倒なので最後まで流しっぱなしにする。それで、たいしたことないと思ってた曲が光ったりすることがたくさんある。
こういうアルバムかけながら車に乗ると気持ちいいんだろうな。土埃と風の似合うアルバム。


トット・テイラー『マイ・ブルー・ピリオド』、これもほとんど情報出てこないアルバム。三回流してつかめた。むちゃくちゃ良い。ジャズのカバーアルバムかと思ったが、たぶんどれもトット・テイラーの作曲なはず。この人のアルバム『PLAY TIME』はほんと名盤で、UK的なひねくれた転調、XTC、Blur、そういうところと共鳴する部分あり、しょっちゅう聴いているが、ちなみにこの人はイギリスの大瀧詠一と(誰に?)呼ばれているらしいが、このアルバムも、聴き飛ばせるような軽い音楽のふりして、その実なかなかにマジカルなコード進行、メロディーがある。そういう点では、ブライアン・イーノやエリック・サティみたいに、「家具としての音楽」、そういう品の良さがある。ピチカート・ファイヴ、オザケン、ようするに渋谷系の参照元でもあるだろう。ときおり、ルイス・フューレイみたいな色気もあり。

ACID CASUALTIESは期待はずれかなあ。好みではない。ので寝かせる。なんか、普通のバンドって感じ。音も、いま一番どんくさい感じ。ジャケットはシュルレアリスムな感じで面白かったのだが。

なにより収穫だったのがThe Bonzo Dog Doo-Dah Band『GORILLA』で、ちょっとこれはまいった。のちにビートルズのパロディーバンド、ラトルズを結成するコメディアン兼ミュージシャン、ニール・イネスと(この人の曲がOASIS「Whatever」でパクられてたはず)、ヴィヴィアン・スタンシャルという二枚看板をしょった、まあコミックバンド的な扱いを受けてるバンドで、それでもニール・イネスの音楽的な実力は知っているし(レコードも持っている)、ヴィヴィアン・スタンシャルもサブスクでちらっとは聴いてた。たぶんボンゾ・ドッグバンドも聴いてはいたはず。でもやられたね。ふっとんだ。すごすぎる。諧謔のロック。つまり、権力というものにたいして向けるあざやかな中指。バンド名にも刻み込まれた「ダダイズム」の遺伝子。裏ビートルズと称されることあるらしいが、もしかするとビートルズ以上かもしれん。ヴェルヴェッツ、カンなんかと同じくらい重要なバンドなのでは。

01
ビッグバンド風の演奏。とぼけたジャズ。すぐに終わり、なにかを叩くような効果音と笑い。

02
キンクス的な哀愁あるサウンドだが、これがとんでもない名曲。かっこよすぎる。最後のほうはビートルズのウォルラスに近い迷宮感。おそろしすぎる。ザッパの気配もする。ニール・イネス。なんて偉大なんだ。

03
wikiによれば1920年代のような音楽とのこと。ラグタイムとかそういう時代か。実際その時代のカバーか? しかし、このとぼけが最高。SEの使い方もすごい。ビートルズ超えてるのでは。ケヴィン・エアーズに近いおもちゃ感もあり。

04
これもカバーかな。ジャジーな? 泣きの歌をあえてとぼけた調子で歌う。すぱっと終わる。このアクセント!

05
Wikiによると今度はカリプソとのこと。牧歌的な演奏に、ほんのすこしの不気味なメロディー。おふざけ。それからモンスターがやってくる! という部分の声の処理。もっとも最先端のセンスでしょこれ。Faustなんかも感じることができる。スタンシャル。天才かこいつ。

06
まのぬけたジャズ。ジャズのパロディー。この外しのセンス。やばすぎる。まんなかの謎の不協和音のソロパート。なにこれ? だんだん崩壊していくこの感じ、アルバート・アイラー「ゴースト」なんか引き合いに出してもいいかもしれない。最高に退屈な音楽。

07
もしかしてこの曲から「Death cab for cutie」ってバンド名がとられたのか? と思って調べるとその通りだった。wikiではエルヴィスのパロディー的な楽曲とのこと。

08
ピアノとおしゃべりによる幕間。

B面
09
メンバー紹介的な。イントロダクション。能天気なテーマの反復に、ときおり差し込まれる不吉なフレーズ。ディランみたいなトーキング・ブルースとして捉えてもいいし、この執拗な反復にミニマリズムも見出せる。クラウトロック、それからヴェルヴェッツへの通路もある。

10
wikiによればディズニー。とのこと。楽しいマーチ風の演奏。ミッキーの息子と娘というタイトル。アイデアやSE、エフェクトの使い方がすごい。

11
wikiによればノワール。危険な気配のするテーマの反復。ポエトリー。これヴェルヴェッツの3枚目の「The Murder Mystery」より早いよな? すごすぎる。エリック・ドルフィーみたいないかれた痙攣サックスが吹き荒れる。スタンシャル。巨大な謎と呼ぶにふさわしい。

12
ヴェルヴェッツ「シスターレイ」とまではいかないが、危なさは近い、狂気的な鍵盤による演奏。Faustやん。これ。すごい。

13
ニール・イネスによる甘く切ないバブルガム・ポップ。これまた名曲! どちらかというとイネスがポップで、スタンシャルが実験的なのね。

14
wikiによるとこれも1920年代の音楽風。とのこと。スタンシャルのふざけたボーカル。それにしてもこの展開の跳躍の作り方ったら。

15
エンディング。ビートルズ「グッドナイト」に通じる上品なおやすみミュージック。を、最後はみずからぶち壊し。これぞダダ。

というわけで総じて最高どころか、人生の何枚かに選ぶようなアルバム。もっと彼らについて調べる必要ある。



すべて酒とレコードと本に使わせていただきます。