柄谷行人『世界史の構造』ノート2
2.交換様式のタイプ
商品交換(交換様式C)と異なるタイプの交換がある
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未開社会の再分配(首長による互酬的な強制による共同寄託)と、国家による再分配(継続的な略取のための再分配)は異質である。
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国家は首長制の延長にあるのではなく、略取→再分配という交換様式Bに基づいている
商品交換において重要なのは、相互の自由を前提するにもかかわらず、相互の平等を保証するものではない。
商品交換は、生産物やサービスが直接交換される、、、わけではなく、実際は、貨幣と商品の交換として行われる。
その場合、貨幣と商品、またはその所有者の立場は異なる。貨幣を持つ者は、暴力的強制に訴えることなく、他人の生産物を取得して、他人を働かせることができる。
それゆえ
貨幣を持つ者と商品を持つ者、あるいは債権者と債務者は平等ではない。
貨幣を持つ者は、商品交換を通して貨幣を蓄積しようとする。←貨幣の自己増殖としての運動としての、資本の活動である。
資本の蓄積は、他者を物理的に強制させることによるのではなく、合意に基づく交換を通してなされる。
それは、異なる価値体系での交換から得られる差額(剰余価値)によって可能となる。
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貧富の差を生み、交換様式Bによる「身分」とは異なる「階級」(相互に結びつくこともある)を生み出す。
道徳的な領域は、経済的な領域とは別に考えられているが、それは交換様式と無縁ではない。
ニーチェ は、罪の意識は債務感情に由来すると述べた。彼は交換様式Aから生じる負い目であることを見なかったが、交換様式Cが浸透した現代では、負い目は金で返せる。罪の意識が薄れる。
道徳的・宗教的なものは、一定の交換様式と深くつながっている。
したがって
経済的下部構造を、生産様式としてではなく交換様式として見るならば、道徳性を経済的下部構造から説明できる。
交換様式Aは、富や権力を独占できない。国家社会では、交換様式Aは従属的な地位におかれ、そこでは交換様式Bが支配的となる。その下で、交換様式Cも発展するが従属的である。
交換様式Cは資本制社会において支配的となる。
交換様式Aは抑圧されるが、消滅することはない。「抑圧されたものの回帰」←フロイトとして回復する。これが交換様式D
原始キリスト教などにおける共産主義
社会主義は根本的に交換様式Aを高次元において回復する。
実際の社会構成は、これらの複合体である。
交換様式Cがドミナントとなる資本制社会は、資本制生産によって規定される。
資本制生産を特徴づけるものは、分業と協業や機械の使用といった形態ではない、人間が商品化されるのではなく、人間の労働力が商品化される社会。
それには土地の商品化を含め、社会全体に商品交換が浸透しないと生じない。
マルクス主義者は国家やネーションをイデオロギー的上部構造とみなしてきた。しかし、国家やネーションが資本主義的な経済的構造に還元されない自立性を持つのは、「相対的に自立性を持つイデオロギー的上部構造」としてあるからではなく、それらが、それぞれ異なる経済的下部構造、すなわち、異なる交換様式に根ざしているからだ。
『資本論』は商品交換が形成する世界だけをを解明しようとした。それは、他の交換様式が形成する世界、つまり国家やネーションをカッコに入れることによってなされた。
すべて酒とレコードと本に使わせていただきます。