校長スケッチ ユニフォーム

MIKAWA通信 2019年新緑号掲載

 新学期を迎え一ヶ月ほど経ちました。新入生の皆さんや卒業生の皆さん、またその他の新しい生活を始めた皆さん!慣れましかたか?
 ところで、三川には何種類かのユニフォームがあることを皆さんご存じでしょうか? じつは6種類ほどあります。一人の生徒が6種類ものユニフォームを着こなす学校は、世の中そうそう無いでしょう。三川では、ユニフォームを用途別にエレガントに着こなすことを、とても大切にしています。
 生徒たちが一番頻繁に着るのは、作業着と呼んでいるワンピースです。冬季は黒地に白いパイピングの入ったワンピースで、夏季はグレンチェックのワンピースです。これら作業着は、お昼間に寮の清掃・アイロン・調理といった仕事を行う時に着用します。もちろん、調理時にはエプロンを付けますし、野菜や魚などの下処理を行う場合には、二次汚染に気をつけて別の専用エプロンを付けます。昨今、作業着はストレッチ素材のパンツにポロシャツなどが多いのでしょうが、三川では女性らしいエレガントな身のこなしを身につけて欲しいと思い、ワンピースにこだわっています。一昔前の卒業生でしたら、ストレッチ素材でワインレッドのジャンパースカートと白いポロシャツが懐かしいことでしょう。
 先に述べたワインレッドは三川のテーマカラーで、今もいくつかのユニフォームのポイントカラーとして継承しています。一つは、調理実習に使用するコックスーツのチーフと前掛けです。コックスーツの袖は、鍋を掴んだりするために長めに作られていますが、その袖口もワイレッドです。ちなみに、コックスーツはもう一着あり、それは同じ学園の精道三川台小・中・高等学校の給食で調理をするためのユニフォームです。こちらは白地に黒いパイピングがアクセントとなっています。開校当初は、水色の割烹着で調理実習をしていたそうなので、随分洗練された雰囲気になったと思います。
 これで四つ紹介しましたが、残り二つは何かと申しますと、テーブルサービスをするためのサービス着です。フルコース実習を行う時は、調理だけではなく、テーブルでお客様に料理や飲み物を提供するサービスも実践します。その他にも度々テーブルサービスを練習するのですが、冬季はワインレッドのワンピースにアイボリーの小さいサテンエプロンを着用します。このワンピースは、かつて三川で教鞭をとっておられた熊澤先生が、一着一着縫ってくださった物を大事に使っています。既成品のカタログでは、なかなか私たちが思い描くようなユニフォームが見つからなかった時に、洋裁を習っておられた熊澤先生が制作を引き受けてくださいました。夏季は、ベビーピンクのブラウスに黒のラップロングスカートと黒のサロンエプロンを付けます。このラップロングスカートは、ガリガリさんでもぽっちゃりさんでもぴったりサイズになる優れものです。これもかつての職員の手作りで、換えがないので大切に使っています。これに黒のパンプスを履いて、華麗にサービスができれば完璧です。
 これらユニフォームは、毎回、寮の洗濯サービスできちんと洗濯・アイロンされ、生徒たちの手元に返されます。この洗濯・アイロンの理論と実践も生徒たちは学び、自分たちの仕事としてこなしていきます。ですから、自分たちが使用したユニフォームは、洗濯場に出せば自然ときれいになって返ってくるもの…、といった馬鹿げた勘違いをする生徒はいません。むやみに汚すと後の染み取りが大変ですし、袖を曲げたままやポケットにヘアピンやボールペンを入れたまま出すと、すんなり洗濯が開始できないこともよく知っています。こんな小さなことからも「物事には多くの人が関わっており、その人々のことを気遣って行動することが、社会を良くしていくのだ。」ということが学べるのです。
 汚れやシワのない美しいユニフォーム(着易さよりも、魅力的なデザインであることが重要です)は、不思議と着ている人に高潔な心を与えてくれて、真摯に仕事へ立ち向かわせてくれます。プロ意識を育てるためにも、ユニフォームは一役も二役も買ってくれています。いつの時代も学生服などは、改造したりずんだれてみたり、と試みられますが、専門職のユニフォームにはそれはタブー。ユニフォームを美しく着こなす(男性もですよ!)、それだけでも仕事の成果はぐーんと良くなりますので、是非皆様の職場でもお試しください。

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