12日のガザへの空爆とイスラエルへのミサイル攻撃について


 2019年11月13日午後、エルサレムにてこの記事を書いています。速報というか、ごく簡単な、現時点でのレポートという感じで。


 昨日、11月12日の早朝、パレスチナ自治区ガザ地区の一部をイスラエル軍が空爆し、パレスチナ武装組織「イスラミック・ジハード」の司令官であるBaha abu Al-Attaが自宅への空襲を受けて殺害されたという速報が、パレスチナとイスラエルの両メディアから出されました。死者は彼のみではなく、現在までに彼の家族を含む20人以上の死者と、重傷者を含む多数の負傷者が出ていることが、保健当局によって報告されています。

 この空爆とほぼ同時に、シリアの首都ダマスカスにも航空機からミサイルが撃ち込まれ、イスラミック・ジハードの幹部の息子2人が殺害されました。シリア当局はこの攻撃をイスラエルによるものであるとの声明を出していますが、イスラエルからの回答は現在のところないようです。

 これら一連の攻撃に応答して、昨日一日の間に250を超えるロケット弾が、ガザ地区内からイスラエル北西部に打ち込まれました。テルアビブなど複数の都市ではガザからの攻撃を知らせるサイレンが鳴り、すべての学校や職場を閉鎖するよう、イスラエル政府から指示が出ました。ミサイルの多くは迎撃されたようですが、いくつかは高速道路や工場に着弾したと報じられています。これまでにイスラエル側の死者は報告されていません。

 

 イスラエルへのロケット弾攻撃が始まると、大学やこちらの大使館などから警戒を呼び掛けるeメールが届きました。ヘブライ大学の学生たちにも少し混乱の空気があり、特に留学生たちは「旧市街へは行かない方が良いのか」「イスラムの聖地もあるエルサレムは攻撃の対象にならないと思う」などど、それなりに戸惑いを隠せない様子も見られました。結局ロケット弾の被害は一部の地域のみに限られ、エルサレムや「第三の都市」ハイファは普段通りの様子だったようです。


 ガザへの空襲のすぐあとに、イスラエルのネタニヤフ首相が作戦を実行したことを声明で明らかにしました。

 イスラエルは現在組閣プロセスの途上にあり、長い間右派政党リクードの党首として首相を務めてきたネタニヤフ氏が組閣権を失い、代わりに対立候補の中道左派「青と白」のガンツ氏がアラブや非シオニズム政党も含めた内閣を形成する可能性が高まっています。

 今回のガザ空爆について、政権を失えば数々の政治汚職の疑いで起訴される見通しも強いネタニヤフ氏が、アラブや非シオニストが政治力を持ちかねない状況を危惧し、ガザからの反撃が明らかに予想される作戦をあえてこのタイミングで実行することで、イスラエル世論を反アラブやセキュリティ問題に向けさせようとしているのではないか、という分析が、複数のアラブ系メディアから出されています。


 この混乱が今後のイスラエルの組閣プロセスにどう影響するのか、イスラエル内の衝突や対立がどうなるのか、かなり心配ではありますが、しっかり追っていこうと思います。

 現在進行中のイスラエルの組閣プロセスと(3回目の?)選挙については、大きな動きの中で前代未聞の状況になっていてかなり興味深いトピックなので、別で記事にすることにします。

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