ダンスとキャバ嬢と彼岸花5

キャバクラも飲食店。
楽しみ方も似ている。
星付きレストラン、寿司、焼肉、ラーメン、定食屋。
たまに食べると美味いけど毎日ステーキは食べられない。

煌びやかな内装で調度品も高級。
美女が揃ってて気遣いも出来て、営業メールや電話もしっかりしてる。
そういうんじゃなくて、名刺もくれないし話も合わせてくれるわけじゃなく、グラスも拭き忘れたりして、でも明るく元気。
そんな子と飲みたいこともある。

でも、今日は楽しかったけど、何か物足りなさがある。
お店の問題じゃなく自分の気持ちの問題なんだろう。

名刺はすぐには捨てられないから引き出しに突っ込んだ。
顔も思い出せなくなったら躊躇なく捨てられるけど、今はなんとなく失礼な感じがしてしまう。
特に裏に手書きのメッセージがあると。

仕事は雲行きが怪しくなってきて、直の社員は辞めるとか辞めないとかの騒ぎになってきているようだ。
巨乳事務員は残るようだが、忙しそうにしているので接触はあまりない。
空気の悪い職場からは早く帰るに限る。
前はラーメン好き社長のニンニク臭のする息で空気が悪かったがまだましだ。

痺れるラーメンを食べながら、帰りに中古ゲームショップに寄るかゲーセンに寄るか考えていたらメールが届いた。

「ご飯食べようよ」
まだ食べてないと返信して待ち合わせ駅に向かった。
急いだからかまだもが嬢は着いていないようだったが、突然背中を強く押されてよろめいた。
周りから変な目で見られた。

お腹が空いたというから何が食べたいかと聞くと、肉肉肉というので焼肉屋に入った。
注文するのも面倒なくらい話をしたかったからコースで頼んだ。
つまみながら彼女が初めに話したことは、ダンスの方が上手く行き始めていて全然店に出てないらしいということだった。
生活費も抑えてるそうだ。
色々と下衆なことを言おうかと思ったが飲み込んだ。
絶妙な焼き加減で皿に取り分けてくれるが、既にラーメン食べてきているので死ぬ気で食べた。
何故か少食だと思われるのは恥ずかしい気がした。
ダンスで食べて行けそうだけど、しばらく収入が厳しい、もっと勉強したい、そんなことを言っていてどこか迷っているように見えた。
酒も進んで大分酔っ払って少し顔が赤くなった彼女はかわいかった。
やりたいことや現状への不満、家族のこと、ずっと喋り続けているのを相槌を打ちながらただ聞いていた。
お店だったら有料だけど今日は無料でラッキーだなとも思った。

帰り道はフラフラで、道を蛇行しながら歩くのを支えながら、急に身体に触るなと怒られたらどうしようと思っていた。
でもしおらしくて、飲みすぎてごめんと聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で呟いていた。
派手なビルに着たらバイバイと言ってエレベーターに乗っていった。
しばらく外からビルを眺めて、窓から顔を出さないかと思ったが、そんなこともなく今度は大人しく家に帰った。

シェアハウスを建てて破産しましたが、キャバクラは給料から払ってますのでご安心ください。