ダンスとキャバ嬢と彼岸花4

今日はお店休みだから同伴じゃない。
じゃあこの後どうしたらいいんだと思ったら、映画観れたから十分だと言うので途中で何か食べて帰ろうとなった。
困った時の焼肉という教訓からそれっぽい焼肉屋に入り、適当に流して注文してガツガツ食べた。
よくあんな小さい口に肉がポンポン入るものだと感心していた。
食事中何度か、なんで今日遊んでくれたのか聞きたくなったが、聞いてしまって悲しい答えだったら怖いからそのまま飲み込んだ。
そもそもこんな可愛い子に手を出そうと思えるのはハイクラスな男で、我々凡人には恐れ多い。
美人ということがバリアーとなって近づけない。

地元は車が無いと不便だったけど、東京じゃ車はいらないよねと言う。
まあそうかもねと答えると、山とか海とか好き?と聞いてくる。
田舎育ちだから特に珍しいものじゃないかなと答えると、そうなんだけど東京にいると全然見ないからさ、たまに見えても泳ぐ海じゃ無いしねと。
故郷に帰りたいの?そうじゃなくて、普通誘わない?と笑った。
そうだよね、じゃあ今度車でどこか行こうかと話して店を出た。

最寄駅から少し歩き、派手なビルが見えたところで金髪嬢があのビルだと言った。
お店のキャバ嬢が友達でそこに居候してるらしい。
そのビルの上の方にはお店がいくつか部屋を借りていて寮として使っているけど、出勤が少ないと使えないらしく、居候させてもらっているのだと。

またメールするねと言って彼女はビルに入って行った。

会社の事務所が1階に入っていて、ビル全体を会社の広告としてペイントしているようだった。
こんなビルの上に可愛いキャバ嬢が何人も住んでいるなんて思わないだろう。
オートロックでもないごく普通のビル。
日中は社員が多いからセキュリティは案外高いのかもしれない。

その後しばらくは連絡もなく、こちらも巨乳事務員とよろしくやるのがいいか、やっぱりリスクが高いかと逡巡したり痺れるラーメンを食べたりという日々を過ごしていた。
たまにメールしてみても彼女はダンスの練習や活動で忙しくしていて、あまり店にも出ていないようだった。

先入観とか色眼鏡とか、特に初対面の人に対して評価をすることはよくある。
金髪のキャバ嬢というと、やはり酒をよく飲むとか、夜遊びが激しいとか、性に奔放とかそんなイメージがあった。
あわよくばと。
そこから金髪のダンサーへと属性を変えてみたらどうだろう。
少し被るかもしれない。
そこに身体が締まってるとか、食事に気をつけているとか、オーディションで役を取っているとか、特に想像がつかない。
身の回りにいない。
じゃあキャバ嬢が身の回りにいるかと言ったらそれもまた違うし、飲みに行ってるから仕事中の彼女達と話してるだけ。
中身なんてわからない。
西武線にゆられながらそんなことを考えていた。

唐突に
「携帯!これ見えないんですか?」
と怒られた。
田舎暮らしだと電車に乗ることはあまりなく学生の頃は自転車だった。
高校を出たら車。
東京は知らないうちに電車内シルバーシートでの携帯が禁止されていた。
男は窓ガラスに貼られた携帯禁止のステッカーを指差していた。

無人だからと座ったシルバーシートに後から乗ってきて対面に座った人は体が不自由だったのだろう。
なんとも気恥ずかしくなり、近くの駅で降りて、定食屋でビールを飲んだ。

よし、キャバクラに行くか。
今日は流しで行こう。
客引きと軽く会話をして街を一周。
二周目で譲歩してくれた客引きのところで交渉。
少し割り引いてもらって入店。
こういう時は無理やり客引きに勧誘された体で飲む。

細かいことは忘れたが、いい子が多い店だったと思う。
場内をスルーしてフリーを楽しむ。
今日はこういうのがいいんだ。

帰り道、名刺をトランプのように広げて眺めながら歩いた。

シェアハウスを建てて破産しましたが、キャバクラは給料から払ってますのでご安心ください。