見出し画像

シャミ子の進むべき道

こんにちは、シャントです。

今回はまちカドまぞくという作品に関して、これまでのシャミ子の目標について見ていくと共に今後のシャミ子の未来について考えていきたいと思います。何気にまちカドまぞくの記事は初めてですが、以前から書きたいとは思っていました。よろしければ最後までお付き合いください。

*ここからはまちカドまぞく6巻までのネタバレが存在します。未読の方はご注意ください。

シャミ子のこれまでの目標

 私が常々思ってるのは、「まちカドまぞく」は主人公である吉田優子(以下シャミ子)の目標あるいは目的というのが非常にはっきりしている作品であるということだ。巻のはじめにシャミ子の願望や目的が分かることが多く、各巻の終わりにはシャミ子の次なる目標が示されているのである。次に1巻から5巻までのシャミ子の目的を示していく。

1巻:「月4万円生活」の呪いを解くため魔法少女の生き血を手に入れる
2巻:桃の魔力を借りた分桃と一緒にまちを守るのを手伝う
3巻:桃と協力してまちに潜むまぞくを見つけ、桜の手がかりを探す
4巻:せいいき桜ヶ丘を治める、守るために仲間を増やす
5巻:せいいき桜ヶ丘を守る

 このどれもが基本的にはその巻の中で達成されているのだが、ここで注目したいのは2巻以降のシャミ子の目的が「まちを守る」ということを前提にしていることである。2、4、5巻の目的はもちろんのこと、3巻の目的も桃との協力関係が存在する以上は2巻の目的も内在するとみてよいだろう。この「まちを守る」という内容は1巻時点でこそ桃から持ち掛けられたことであるが、3巻でシャミ子が自身の記憶の層で千代田桜と出会ったことで彼女からも「まちを守る」ことを頼まれるのだ。この桜に託されるという点は重要で、4巻52丁目にてミカンとウガルルの一件を解決したシャミ子に桃が「姉のやり方に似てきた」と笑顔で話す場面があり、さらには5巻61丁目ではぱんだ荘に移転したあすらに現れた魔法少女の話を聞いたシャミ子が「私…桜さんからこの町を任されているんです ボスとしてそういうつまらないことは止めないと」と小倉に話す場面がある。ここから分かる通り、3巻以降シャミ子が千代田桜と同じ道、つまりは光の一族、闇の一族関係なくみんなの居場所を作るという方法でまちを守る道を進んでいることが示されていると考えられる。また、桃に桜のコアを返せない負い目を感じているからか、シャミ子は3巻以降桜を意識する場面もあり、上記の61丁目もそうだが、4巻41丁目の動物園へ一緒に行くことを誘う話でも桃にとっての桜のような存在になりたいというシャミ子の感情が読み取れる。

6巻で見えたもの

 さて、いよいよ最新巻の話に移りたい。6巻では一番最初の話である65丁目で魔法少女や町についてなど重めの話を桃としたがるシャミ子が描写される。実際この重めの話というのが今回のテーマになっていて、読んだ方ならご存知の通り、この6巻では66丁目から71丁目までの小倉救出編や73丁目の合コン回、75丁目より語られる桃の過去編というようにこれまで明かされていなかった千代田桃の過去がついに判明する。小倉救出編や合コン編では桃の過去などについては小出しに登場していたが、シャミ子が桃の記憶に潜り込むという形で展開された桃の過去編で一部の謎を残しつつも多く明かされたのである。

 グシオンの正体や桃がまちに戻った際に起こった事件、桃の出自が実際には壮絶すぎたことなど話したいところはかなりあるものの本記事の趣旨とはずれるので一旦おいておくとして、今回私が指摘したいのは77丁目のシャミ子の決意である。次にその決意のシーンを文字に起こしたものを示す。

「ぅぅぅ…守られまぞくじゃなくて…町とか…大事なものとか…なんか色々守れるまぞくになりたいなあ」
「なりたい…?」
「いや…違うな」
「『なりたい』じゃない」
「私はこれから自分を町を」
「桃の笑顔を守れるまぞくになる」
「絶対なる」
6巻77丁目P.118

 衝撃すぎる桃の過去を見たシャミ子は自分が何も深く考えないまま過ごし、そんな自分を歴戦の人たちが守ってくれていたのだと思い至る。そして、上記のようなセリフの中で自分や町のみんな、そして大切な存在である桃の笑顔を守り通せるようなまぞくになると決めるのだ。ここで述べたいのはこのシャミ子の決意の重さである。シャミは3巻や5巻ではまちを守ることや自分の能力のことなどに関して、事件が解決しても弱気になっていた。そしてそのたびに隣で桃が励ましてくれていた。6巻以前は桃の助力によって次なる目標に向かうことができていたのである。しかし、今回シャミ子は桃の過去を知ったあとに1人きりで外出し、そのまま1人で決意をする。今までとは違い、シャミ子1人で上記のような決意がなされていることに非常に意味があり、ここからシャミ子の決意の固さと重みを感じることができるだろう。たしかに、今までシャミ子の尽力で解決できた出来事というのは当事者たちにシャミ子が介入し対話する余地があったことに起因している。しかし、この6巻で登場して桃と対決した那由多誰何という魔法少女は自分の考えが間違いだと全く思っていない。迷いもなければ動揺もないため、シャミ子が介入できないのだ。今までの能力が通用しない相手が今後まちにやってくる可能性があることを考慮すればシャミ子がこのような強い決意をするのも頷けるだろう。

 これは余談だが、今回の6巻は3巻と内容的に対応することが多いように思える。例えば、6巻では桃の過去が明らかになったが、3巻では千代田桜の出かかりを探す中でシャミ子の過去についても判明している。また、桃の過去を見たシャミ子が桃の笑顔を守れるまぞくになることを決意したように3巻の桃もまたシャミ子と千代田桜の関係を知ったうえでシャミ子が笑顔になれるような小さな街角を全力で守るという目標を話している。6巻77丁目の桃の笑顔のコマもこの目標を語っている際のものであるので、もしかしたらこの対応は意図的なものなのかもしれない。

彼女の進む先

 ここまでシャミ子の目標や6巻最終話時点での決意について見てきたわけが、今後シャミ子はどのような道を歩んでいくのだろうか。それについて最後に考えていきたい。

 何度も述べるように現時点でのシャミ子の決意は自分、まち、そして桃の笑顔を守れるまぞくになることである。これはシャミ子が今よりももっと強くなりたいと考えているということとなる。当たり前のように思えるが、そもそもシャミ子の強みとは何だっただろうか。シャミ子が持つ能力とはあらゆる有情非情の無意識に侵入するというもので、これによってシャミ子は無意識領域の中で当事者と対話をし、問題を解決してきた。前述した通り、近い将来対峙すると想定される敵である那由多誰何というのは対話のできないシャミ子と相性最悪の魔法少女である。それを踏まえれば、シャミ子の強くなるという願望はこれまでシャミ子が持っていなかった物理的な力ではないかと考えられる。現時点でのシャミ子はいわゆる「力を欲している」状態だと言えるだろう。

 ここでシャミ子の強みについて再び考えたい。シャミ子がここまで対話によって問題を解決してきたのは生来の優しさを持ち合わせていたからであり、たとえ友人を苦しめる使い魔であろうと仲間に恨みを持っている魔法少女だろうと突き放すことなくその優しさで対話してきたことこそがシャミ子の強みであるはずだ。しかし、ここに来て純粋な力を求めはじめるというのはシャミ子の強みを生かしきれなくなるために私は非常に不安に感じてしまうのだ。というのも力を求めるということは力によって無理矢理解決することに繋がるからである。私は度々シャミ子が千代田桜と似た道を進んでいることを指摘してきたが、何もそれに良い点ばかりあるとは考えていない。むしろ今後のシャミ子を考えると千代田桜と同じ道を歩むことは危険であると思うのだ。

 千代田桜は暗黒役所という光闇系の人のご町内セーフティーネットワークを作成し、せいいき桜ヶ丘を光や闇の一族絡みの人が住みやすいように整備した。しかし、6巻76丁目で那由多誰何はそれを「牧場」と言い放っている。つまり、シャミ子の理想とする千代田桜の実現したまちはすでに限界が示唆されていることになる。このまま進めば再び那由多誰何のような魔法少女が現れてまちのみんなを守れなくなってしまう可能性があるのだ。そのために力を求めるという決意だったのではないかという話もあるだろう。しかし、シャミ子よりも大きな力を持っていたはずの千代田桜は桃の記憶の改竄をヨシュアに頼んで何かとの戦いへと向かい失踪している。これが千代田桜が力を求めた結果かどうかはわからないものの、そもそも力を持っていたとしても自分はコアとなって現実への干渉ができないまま那由多誰何の活動を許してしまっているのだ。どちらにせよシャミ子が千代田桜と同じ道をたどるのはとても危なく、破滅へと向っている可能性があると私は思う。

 これが実際にそうなると決まったわけではないし、この考えが単なる妄想に過ぎないことはよく分かっているつもりだ。しかし、6巻での展開から考えるとシャミ子が力を求めた結果なんらかの挫折を経験してしまうという話があり得るのではないかと思うのである。だが、そのような挫折を経験する前にシャミ子が千代田桜も思いつかなかった新しい道を提示する可能性があるのもまた事実である。シャミ子だけが実現できるまちの守り方でシャミ子だけの道を進むことが失敗しない結末に至るために必要な鍵なのではないだろうか。

おわりに

というわけで初のまちカドまぞく記事でしたが如何だったでしょうか。初めて書いたわりにはかなり思い切ったことを書いてみました。きっかけは6巻を読んだオタクとの会話だったのですが、本誌を追いかけていた当時から考えていたことも盛り込んでいます。もちろんこの記事の意見には賛否両論あると思いますが、あくまで一人の読者として感じたこととして留めていただければと思います。当たり前ですが、賛成意見反対意見どんな意見・コメントでもお待ちしております。もしよろしければいいね・コメントして頂けると幸いです。また気が向いたらまちカドまぞくの記事も書こうと思います。次は創約3巻の感想かな…

それでは!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?