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中国知財 最高人民法院による「人民法院の独占禁止と不正競争防止典型案例」 案例1~5

2021年9月27日 最高人民法院は「人民法院の独占禁止と不正競争防止典型案例」を発表しました。これは当該分野の審理業務の基本的な行動指南となるもので、これまで「知財の典型判例」として毎年四月頃に発表されていた典型案例とは異なり、より専門性の高い案例をピックアップして公開したものと思われます。この発表は、中国経済の発展・深化により、当該分野の事件が増加傾向にあることが背景にあるのではないかと思います。

典型案例は全部で10件発表されています。今回の記事では、個別の案例の判決文は追わずに、発表された10件中案例1から5までの概要を日本語訳しておきます。

案例1:「最適のこぎり」技術秘密侵害紛争案
——技術秘密侵害行為認定及び責任負担
【案号】(2019)最高法知民终7号

当該案例は「最適のこぎり」の技術秘密侵害に関し、二審において最高人民法院は、各方当事者を組織して現場検証と技術対比を行った。最高人民法院審理は審理を経て、以下のように判断した。

二審現場検証の実験結果に基づき、被疑侵害製品の切断方式と結果は係争技術秘密の工程フローを遵守しており、また、係争技術秘密の技術効果を実現しており、技術秘密侵害行為に該当するため、一審判決を取消し、路启公司の侵害の停止、経済損失及び合理的的な支出600万元の賠償を命じる。さらに、鲁丽公司の正当な理由なく人民法院が差し押さえた証拠を毀損する行為について、該公司へ罰金を科す決定をする。

【典型意義】

本案は複雑な技術的事実の解明と法律適用問題に関し、複数の開廷審理により徐々に技術秘密の実質的内容を明確にし、現場検証手段の助けを借りて権利侵害事実を明らかにし、合理的に挙証責任を分配して権利者の挙証負担を軽減し、充分に不誠実行為を厳しく罰し、公平競争秩序を維持する司法方針示した。しかも、当事者が重要証拠を毀損する行為について出した罰金の決定も、人民法院が誠実信用を守り、信用失墜を懲戒し、知的財産訴訟誠実信用体系を構築するという司法態度を示した。

案例2:「必沃(Biwo)」技術秘密許諾使用契約紛争案
——商業秘密刑民交叉案件の処理プロセス

【案号】(2019)最高法知民终333号

本案例は、協議約定に反して、秘密保持が要求された技術図面を利用して平編み機を生産した行為に関する。一審法院は、浙江省寧波市公安局が捜査した事実は係争協議と図面の関係内容をカバーしているため、公安機関処理プロセスに移送することを裁定した。必沃公司はこれを不服とし、最高人民法院へ上訴した。最高人民法院二審は、以下のように判断した。
本案は、慈星公司が、必沃公司の契約約定違反を理由として提起した契約訴訟であり、技術秘密許諾使用契約法律関係に関する。浙江省寧波市公安局が立案捜査した必沃公司による商業秘密犯罪の疑いは、必沃公司が慈星公司の商業秘密を侵害する疑いのある権利侵害法律関係に関する。両者に係る法律関係は異なり、同一法律事実に基づいて生じる法律関係ではなく、それぞれ経済紛争と経済犯罪の疑いに関し、両者の関係案件事実に重複するところがあるに過ぎない。一審法院は、本案と関係があるが、本案と同一法律関係ではない犯罪の疑いの手がかり、資料を浙江省寧波市公安局へ移送しなければならないが、本案に関する技術秘密許諾使用契約紛争を継続して審理しなければなららないため、一審裁定の取消しを裁定し、一審法院が審理することを命じる。

【典型意義】

該案は、中央による財産権保護及び企業家権益の保護、良好な法治ビジネス環境の構築についての司法政策要求を深く貫徹し、商業秘密刑民交叉案件の処理プロセス原則を明らかにし、民事訴訟当事者が犯罪の疑いがあることを理由に民事訴訟プロセスの正常運用が妨げられるのを避け、民事案件の公正と迅速処理プロセスを保証し、また、公安機関が経済紛争を理由に刑事立案を拒絶し、刑事責任と民事責任が混乱して、司法公正と権威に影響するのを避けた。

案例3:「爱奇艺(iQiyi)アカウント」不正競争紛争案
——VIPアカウントタイムシェアリング行為の認定

【案号】(2019)京73民终3263号

本案例は、動画APP iQiyiのVIP会員機能をタイムシェアリングするAPPを作成し、動画APPのVIPアカウントを購入しなくても、クラウドストリーミング手段によってiQiyiの一部機能を制限したという不正競争に関する。
一審法院は、竜魂公司、竜境公司の係争行為は不正競争となり、その侵害の停止、及びiQiyi公司の経済損失及び合理的な支出合計300万元の賠償を命じた。北京知識産権法院二審は、以下のように判断した。
竜魂公司、竜境公司の行為は、iQiyi公司の合法に提供するネットワークサービスの正常運営を妨害し、主観的な悪意が明らかである。竜魂公司、竜境公司がネットワーク新技術を運用して社会へ新製品を提供することは、業界新発展を促進するという需要に基づくものではなく、該行為は、長期的にも市場活力を徐々に低下させ、競争秩序とメカニズムを破壊し、ネットワーク映像市場の正常、秩序ある発展を阻害し、最終的に消費者福祉の減損となるため、不正当性を有する。北京知識産権法院は上訴を却下し、一審判決を維持した。

【典型意義】

本案は、ネットワーク環境下における新型不正競争行為について有効に規制を行った典型案例である。該案は、人民法院によるインターネット事業者と消費者の合法利益に対する有効な保護を体現し、また、人民法院によるイノベーション要素に対する考察を体現している。本案は、ネットワーク映像業界における新ビジネスモデルの合理的な境目を明らかにし、人民法院がネットワークプラットフォームの秩序ある発展、社会イノベーションの活力を奮い立たせることを促進し、公平競争市場環境を打ち立てるという司法方針を示した。

案例4:「陸金所金融サービスプラットフォーム」不正競争紛争案
——ネットワーク抢购サービス行為的認定

【案号】(2019)沪0115民初11133号

【案件概要】

本案例では、債権譲渡商品の取引を急いで購入するために、サイト会員が常に係争プラットフォームにログインし、頻繁に注目する債権譲渡商品情報をページ更新する必要があるというサービスに対して、被告会社が「代理購入ツール」ソフトを提供し、ユーザが係争プラットフォームが発表する債権譲渡商品情報を注目する必要なしに、所定条件で自動購入することを実現させた。
上海市浦東新区人民法院は、以下のように判断した。
陸智投公司が提供した購入サービスは技術手段を利用し、ユーザへ不正当な購入利点を提供し、係争プラットフォームが既に有する購入規則に違反して故意にその監督管理措置を迂回し、係争プラットフォームのユーザ吸引性とビジネス環境に対し深刻な破壊となり、不正競争と認定しなければならない。
上海市浦東新区人民法院は、陸智投公司が係争不正競争行為を停止し、影響の除去を開示することを命じ、また、陸金所公司、陆金服公司の賠償の主張を全額指示した。

【典型意義】

ネットワーク(早い者勝ち)購入サービスは、インターネット金融の迅速な発展の派生品である。本案は、インターネット不正競争案件の審理手法及び裁判規則を明確にし、すみやかに社会的懸念に対応し、兼顾了科学技術金融企業の競争利益と投資ユーザの消費者権益を両立し、金融プラットフォームビジネス環境の保護に対し、重要意義を有する。科学技術金融業界の秩序ある発展のため明確な規則ガイドラインを提供した。本案判決後、当事者は上訴せず、案件取得了好ましい法律效果和社会效果。


案例5:「720ブラウザ」不正競争紛争
——ブラウザ広告遮断行為の認定

【案号】(2018)粤73民终1022号

【案件概要】

本案例では、ネットワークユーザが被告企業の720ブラウザの組込機能によりデフォルトでMangoTVサイトのヘッド広告をブロックし、公告一時停止、会員広告免除の機能を実現した。一審法院判決では、原告快乐阳光公司の訴訟請求を却下した。広州知識産権法院二審は、唯思公司による技術中立の抗弁が成立せず、唯思公司の上述行為は誠実信用の原則と公認のビジネス道徳に違反し、社会経済秩序を乱し、不正競争となる、唯思公司は快乐阳光公司の経済損失及び合理的な支出80万元を賠償せよ、と命じた。

【典型意義】

ブラウザの映像広告遮断は、社会注目度が極めて高いインターネット競争行為であり、司法実践認定の難点でもある。本案二審判決では、ブラウザの映像広告遮断行為について多角的、総合的に評価し、インターネット不正競争行為認定の構成要素と適用場面を細分化し、不正競争防止法一般条項適用等法律適用の難点について有益な検討を行った。


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