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スマホを落としただけなのに・Another

★登場人物★


・あざらし
全身に脂肪を蓄えているので、人やシャチによく捕らえられるかわいそうな海獣。  


・シータ
「天空の城ラピュタ」のヒロイン。リュシータ・トエル・ウル・ラピュタとかいう金色のガッシュの最大呪文みたいな本名。  


・木村清
すしざんまいの社長。年々頭身がおかしいことになっている。    


・しずかちゃん
「キャー!伸びたサンドイッチ〜!」と裏声で叫ぶと楽しい。  


・飢えたヒグマ  
飢えているので、感覚が研ぎ澄まされている。  


・爪爪爪
マキシマムザホルモンの8枚目のシングル。中学生の頃、放送委員の特権を使って給食の時間に流していたところ担任からSMAPの「弾丸ファイター」を流すように指摘を受けた思い出。    


・ウィーン少年合唱団
歌が上手。    


・長友佑都
サッカー日本代表不動のサイドバック。
豊富な運動量と正確なクロスが持ち味で、サッカーが上手。


・海外の人
思考のリソースを節約するために、同じ服を好んで着る人。プレゼンが上手。


酩酊、冷えた空気が気持ちいい。
職場の飲み会が終わり深夜。上司たちと別れてそれぞれの方向に歩き出す。ジョジョの三部の空港のラストシーンのようだったと思う。

駅前を往く人はまばらで、居酒屋の看板もちらほらと灯りを落としていった。街から華金の熱がすっかり覚めていた。

腕時計に目をやると、とうに終電が無くなっている時間だった。

駅前から自宅までは徒歩20分程度。酔い覚ましがてら歩くのはちょうど良いだろう。
酔いが一瞬で覚めるような底冷えする寒さだが、打ちひしがれながらでも、今日は歩いて帰ろうと思った。
吐く息が白いまりものように浮かんで消えた。  

道中、コンビニの前で煙草を吸いながら、先ほどの飲み会にまつわる雑多な物思いに耽っていた。  

それぞれが口角に泡を溜めながら、口早に、声高に、紅潮し、仕事や人生についてを語っていた。順番に話し、誰かが応酬し、「今は頑張るしか無い」という結論に達し、グラスの酒を飲み干す。それの繰り返しだった。

語るに値する実績や不満、人生論は僕にはなかった。ただ早く帰って、ストレンジャーシングスの続きが観たかった。
だがここで興味なさげに俯いていてはノリの悪い奴だと明朝ゴミ捨て場でカラスの餌になっているかもしれない。

僕は鏡になった。誰かが笑えば笑うし、誰かが驚けば驚く。誰かが悲しそうな顔をしていれば同じ顔をして、その人が言われたいだろう言葉を推し量って、投げかける。

そんな事ばかりしていたからか、最近は自分の感情の所在さえも分からなくなっていた。

夢とかあるの、と上司に聞かれ、あ、はい一応僕は、と答えようとしたとき。注文したフライドポテトが卓上に置かれた。 湯気が上がっている。頼んだのは僕だった。
おお、ポテトだ。ポテトが来たぞ。ポテトだ。大の大人が揃いも揃ってポテトの登場に視線を奪われていた。

ポテトは若い人の食べ物とか思われがちだけど、私はすごい好きなんですよ。いつも食べちゃう。あ、ケチャップ上から全部かけちゃっていいかな。それとも別に分けようか。

年長の上司のポテトどうする提案により、時化た海が凪いでいくように卓上の熱も穏やかに冷めていった気がした。一旦僕に集まった注目も、いつの間にか散失していた。

夢の話もそのまま流れ、あとでぶり返すのも気恥ずかしかったので、その後も僕は鏡のように表情筋を使いながら、一切れだけ残った鯛の刺身の行く末がどうなるか考えたりしていた。その飲み会に僕はおらず、また居ようともしていなかった。

鯛の刺身は結局最後まで誰も手をつけなかった。  

ため息も混じった白煙が、夜気に溶けていく。
煙草を揉み消し、残り半分近くとなった自宅へと歩を進める。

その日は記録的な寒波が日本を覆い、寒さに強い東北人でさえ首を縮こめて震える他ない天候だった。雪こそ降っていないが、時折吹く冷たい風が辻斬りのように身を切っていった。時折往来する車があるものの、歩いている人は誰もおらず、電線を切る風の音だけが強くなっていく。孤独や寂寥の念ばかりが募っていくばかりで、足早に帰路を急いだ。

帰宅。鉄製のドアが温かみの無い音を立て、軋み、閉まる。
洗面台の前で、水がお湯に変わるまでの時間に自分の顔を眺めていると、瞬きと共に消えてしまいそうな、覇気も生命力も無さそうな顔がそこにはあった。家ではもう鏡のように過ごさなくても良いことに気付く。

少し温かくなった手で、ネクタイを緩める。
スーツを脱ぎ、ネクタイを外した時初めて仕事が終わった!と感じるのは私だけではあるまい。身軽になる度に、自分の時間がやってくる喜びが湧いてくる。靴下と下着を洗濯機に放り込む。

シャワーを浴びようとバスタオルを準備する。室内においてもその日の寒さは異常で、カスタネットのように歯を震わせてしまっていた。

途端、衝動。
夜もだいぶ深くなってしまったが、今日は、入ってしまおうか。

芯の芯まで冷え切ったこの身体を、心を、熱い湯で、満たしたなら––。

暖かい橙色の浴室灯が、湯を張る浴槽を照らしていた。揺れる水面。水位はゆっくりと、確実に上がっていく。

ボイラーのゴンゴンという轟音が浴室に響く。こんなに寒い夜更けにボイラーはきちんと駆動して役目を果たしている。

私の頭の中の運動会の放送委員が「ボイラーさん、早い。ボイラーさん、頑張ってください」と情感に欠けたエールを送っている。
ボイラーさん、寒いと思うけど、頑張ってください。

腕を入れて温度を確かめると、思わず口角が緩んでしまうような塩梅になっていた。  

男には感嘆を口から漏らしても許されるシチュエーションが三つある。
仕事終わりの熱帯夜にキンキンに冷えたビールの一口目を飲んだ後、限界まで我慢しているのになかなかトイレが見つからずあわや失禁、というタイミングで見つかったトイレで放尿をする際、そしてこの日のような夜に熱々の湯船に肩まで浸かった瞬間である。

複数の「あ」にどれだけ濁点をつけて表現しようと藤原竜也のようになってしまうので割愛するが、浴槽に浸かった私の口から漏れてきたのはカイジのときの死にかけている藤原竜也のそれに近かった。

とかく、寒い夜に湯船に浸かる瞬間の至福というのは筆舌に尽くしがたい。湯につま先をつけて肩までざぶんと浸かるその刹那、四肢の先から震えるような快感が脳幹まで突き抜けた。至福。この世の全てのエクスタシーが今日この湯船に詰まっている気がした。

この時の私の表情に近い画像を見つけることが出来たので添付をさせて頂きたい。


ちなみに私は25歳の男性であるが、お風呂が大好きである。
この日のように寒い夜でなくても、汗をかきたいときはおへその穴くらいまでの湯を張って30分〜1時間ほど湯船に浸かる。

そして手持ち無沙汰を紛らわすためにスマートフォンを弄ぶ。防水ではないので、タオルを敷いた風呂桶を湯船に浮かべ、その上でスマホを操作する。もし手からスマホが滑り落ちても、ふわふわのタオル(無印で買ったよ)に包み込まれるだけなので安心だ。

ここではスマホをシータ、ふわふわのタオルをすしざんまい社長で表現している。ちなみにこの画像をツイッターに投稿してみたが、ちょっぴりスベった。ちょっぴりね。

この日も同様にしてスマホをいじっていた。
身体の奥がぽかぽかと温まり、額にはじんわりと汗が滲んできていた。鼻歌の一つや二つ歌いたい気分だった。

その瞬間は唐突に訪れた。その時何の画面を見ていたのか、今となってはもう思い出せない。きっと今スマホを見ているあなただって、明日にはどういう思いがあって何を見ていたのかなんて、思い出せやしないのである。  

体勢を変えようと腰を浮かせた時だったか、額に浮かんだ汗を拭おうとした時だったか。なにかの拍子にスマホを握る右手の中で、一瞬バランスが崩れた。おっと危ない、と持ち直そうとした。
たとえそのまま落としても、すしざんまい社長のような包容力を持つタオルがスマホを受け止めるだけだった。しかしその時は、私の要らぬ防衛本能が予定調和を覆してしまった。  

湯に浸かっていた左手でスマホを支えようと咄嗟に手を出す。が、その左手は浮かんでいる風呂桶にぶつかった。それだけで済めばよかった。ただ、なんと運の悪いことに、その風呂桶が右手に持ちしスマホにクリティカルヒットしてしまった。負のピタゴラスイッチ。


「あっ」


スマホが、イヤホンジャックから少しの気泡を出しながら、湯に沈んでいく。時が一瞬、止まった。  

「きゃぁああああ」  

僕はしずかちゃんのように叫ぶその一方で、川辺でシャケを捕らえる飢えたヒグマのような俊敏さで、スマホを掬い出していた。  

その時僕は確かに全裸で、しずかちゃんで、ヒグマだった。  

荒い呼吸が浴室に響く。
思い出したかのように間を置いて、動悸が早まった。

湯船の底に着く前に取り出したとは言え、これは立派な水没だ。データが。思い出が。連絡手段が。つぶやけなかった下書きが。

熱い湯の中で僕は確実に、冷や汗をかいていた。

タイタニック号の沈没や、ターミネーターが親指を立てながら溶鉱炉に落ちていくシーンを忘れたとしても、自分の相棒のスマホが湯船に沈んでいく光景を簡単には忘れられないだろう。

恐る恐る、ホームボタンに親指を乗せる。
安否確認である。どうか、神さま。スマホの神がどんな顔なのか分からないまま、祈る。
無神論者の僕が神に祈りを捧げるのは、幼少の頃、渋滞の高速道路で猛烈な便意に襲われて以来、二度めのことだった。(漏らした)


◯月◯日 土曜日

健気だ。その身を湯船に沈められてなお、スマホは正確に時を刻んでいた。
がしかし、安心はしていられない。水没した直後は正常に作動しても、その後ひっそりと息を引き取るというのもよく聞く話だ。

僕が、必ず助ける。

そう誓い僕は、身体も充分に拭かず、スマホを持って浴室を後にした。

その直後だった。どこからか現れた少女が、目を逸らしながら緋色のマントを僕に差し出した。僕が疑問符を頭の上に浮かべていると、またどこからか現れたナントカティウスと名乗る輩が、口を開いた。

「君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、君の裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

うっせー皆ってだれだ!と僕は妄想の中に現れた二人のみぞおちに渾身の正拳を食らわせたあと浴槽に沈め、ばたつく手足がぴたりと静かになったのを確認して、リビングへ向かう足を早めた。むしゃくしゃしてやった。

このスマホはまだ、助かる。
私を、待っている人があるのだ(各種SNSで)。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ(各種SNSで)。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない(むしろスマホが無いと死ぬ)。
私は、信頼に報いなければならぬ。
今ははただその一事だ。走れ!ぼく!  

リビングにて全裸。
まず何をすべきか考えた。スマホがまだ命の灯火を燃やしている以上、足搔けることは足掻きたい。データのバックアップとか、したい。

そこまで考えついたまでは良かった。

次の瞬間僕は、優先順位を整理する前にパワプロのアプリを起動し、引き継ぎコードを確認しながらそれを手帳に書き出していた。

書き出し終わったあと、大学時代の想い出の写真や友人の連絡先の確保より先に僕は、パワプロのデータのバックアップを優先するような薄情な男だと気付き、虚しくなった。

ものの5分ほどで、最低限必要な引き継ぎのパスワードの確認などが終わった。しかし、様々なサイトの会員情報や写真などの想い出の類には全く手をつけられていない。スマホはいつその短い一生を終えるか分からない。

とするとあとは、延命に尽力するのみである。

「タッパーの中に米を入れて、電源を切ったスマホを一晩入れる」
そんな曖昧なライフハックが脳裏をよぎった。
唐揚げに下味をつけるノリでスマホが助かるなどとは思えなかったが、その他の術を調べるためのスマホが瀕死なので、そんな泥舟でも乗るしかなかった。  

「米、米、米、、、」と呟きながら戸棚を漁る。今マキホルの爪爪爪みたいに言ってますけどもね、とナイツの土屋さんがフォローしてくれるので安心して探せた。  

米だ!

普段米を炊かない私は、戸棚の奥にある米を見つけて、世紀末の山賊のように叫ぶ。
タッパーが無かったので、ジップロックの中にたっぷりの米を入れて、電源を切ったスマホを入れてみる。


**シンデレラフィット**

圧倒的密閉感、、、!

私は生まれてこの方全身を米に包まれた経験は無いが、きっと優しい匂いがして、圧力も程よく、気持ちがいいのだろうと想像できる。    

ここまでドタバタと息つく間もなく行動していたが、ジップロックの封をした途端、静寂が部屋を包んだ。

身震いする。芯まで温まったはずの身体が、すっかり湯冷めしてしまったのだ。それもそのはずだ。僕はこの瞬間まで全裸だった。少女から差し出されたマントを身に付けるべきだった。パンツをタンスから出してくるのが面倒だったので、取り急ぎバスタオルを腰に巻いた。  

ーーやり切ったか?  

僕は僕に問いかける。
これで全て手は尽くしただろうか。明日スマホがこのまま目を覚さなかったとして、僕は後悔しないだろうか。

否。まだやれることはある。数えきれない思い出を共にしたスマホ。寝る時もお風呂の時も一緒だったスマホ。

出来ればもっと永く、共にーー    

僕はエアコンのリモコンを手に取り、送風口に対面する。  

(ここから各々闘いに向かう男に相応しい荘厳な音楽を流してください。きっとあなたの手にはスマホがあることでしょう。)    

埃を被ったリモコンに息を吹きかけ、ゆっくりと照準を定める。埃が舞う。老練な猟師の眼差しで、照射。

小気味の良い電子音が鳴り、ぐぁお〜、と寝起きの怪物の欠伸のような音を立ててエアコンが起動する。

25度。いつもの設定温度。
これでは足りない。27度。部屋はこれで大分暖かくなるだろう。だが僕が暖めたいのは、この部屋ではない。

僕はベッドの上に立つと、米に包まれたスマホを送風口に近づける。背伸びをすると、ほぼゼロ距離で温風が当たる。

乾燥の権化、エアコンの温風。
少しでもスマホが助かる確率を上げたい僕は、米スマホを更に力強く上へ上へと突き出す。温風は僕の身体ごと、米スマホを乾燥させていく。  

容赦のない温風が僕から水分を奪っていく。
段々と肌が突っ張っていくのが分かる。唇に縦皺が走る。視界が霞む。恐らくこれはーードライ・アイだ。僕はもう永くはないだろう。どこからか歌声が聴こえる。陽の光の様に暖かく、金糸の様に優雅で滑らかな歌声だ。



昔ギリシャのイカロスは
ロウでかためた鳥の羽根
両手に持って飛びたった
雲より高くまだ遠く
勇気一つを友にして  

丘はぐんぐん遠ざかり
下にひろがる青い海
両手の羽根をはばたかせ
太陽めざし飛んで行く
勇気一つを友にして


どれほど長い時間が経っただろうか。腕が震える。マジで粉吹く5秒前。この時の僕を枝か何かでつついたのなら、砂になってサラサラと崩れ落ちていたかもしれない。  

化粧水を塗りたい。目薬を差したい。リップクリームをハマダの唇になるまで塗りたい。
ありとあらゆる欲望が浮かんでは、あぶくのように消えていった。

爆弾を抱えて使徒に突っ込んだ零号機の気持ちが、今なら分かる。
大切な物を、守護りたい。その一心だった。

僕は腰巻バスタオルに差し込んでいたリモコンに手を伸ばし、ゆっくりと照準を定める。29度。まだだ。まだ行ける。絶対に救う。慈愛と諦観の混じった双眼。ボタンの上に置いた親指に力を込める。最大出力を引き出す。最後の温度上昇。僕は叫ぶ。


「身体持ってくれよ!!体感温度3倍だぁ!!」




30度





ウチのエアコン30度まで出るの初めて知った



未知の世界







あつい






遠のく意識










走る長友





その後普通にドライヤーで暖めた。早くて安全だから。僕はIQが高い。

万事を尽くした。あとは天命を待つのみだ。
僕は米スマホをエアコン直下のカーテンレールの上に置き、念のため手を合わせ祈りを捧げた。

ここまで随分と慌てふためいたものだ。全てを終えて一息つくと、どろっとした重い疲労感を覚えた。
時計を見ると午前2時を回っていた。

布団を被って目を瞑ると、飲み会で感じた心の靄が晴れているのを感じて、少し可笑しくなった。スマホを落としただけなのに。

きっと今の僕に必要なのは、他人を揶揄して遠ざける事ではなく、何かに夢中になるという経験だろうと思った。

段々と身体がマットレスに沈んでいくような気がした。


翌日、スマホは無事に機能した。



あの恐怖が再び帰ってくる。

今や誰もが持つスマホ。もしアカウントを乗っ取られたら。勝手にECサイトで大量注文されたら。私的な写真を拡散されたら。大切な人になりすまされたらーー。

原作は、誰にも起こりうる恐怖が故に多くの共感を呼び話題となった志駕晃のSNSミステリー。
2018年に公開された前作「スマホ落としただけなのに」では、キャッチーなテーマながら、緻密な伏線や、バカリズムや升野英知、バカリズムなどの個性的なキャストの怪演が物語を最後まで加速させ、邦画実写作品として4週連続1位を記録するなど多くの観客の心を掴んだ。

前作に登場した千葉雄大(多賀城出身だよ!)が主演を務め、ヒロインには先日グループ卒業を発表した乃木坂46の白石麻衣を迎える。

軽い気持ちでFree wi-fiを使用したことから、なんやかんやあって最終的に命を狙われてるっぽいヒロインを雄大くんは守れるのか。そして、アキラ100%はどういう立ち位置で登場するのか。

「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」は2月21日(金)から公開中である。



劇場へ急げ!!!





ちなみに僕は一切出演していない!



●    


「いかがでしょうか。彼は、水没したスマートフォンを直すため、米を乾燥剤代わりに使い、危機を回避したのです。これを奇跡と呼ばず、なんと呼べばいいのでしょうか。称賛に値します。皆さん、彼の機転と勇気に拍手を」





「thank you」




「しかしながら、私は思うのです。誰もが彼のように勇敢では無いと。英智と行動力を持ち合わせていないと。私たちに必要なのは属人的なスキルや知識ではなく、誰でも使える、再現性の高いツールです。なので、私たちは多くの資金と時間を掛けて、新たな開発に心血を注ぎました」 



「明日の新聞の一面は各社揃ってこの商品のことを取り上げることを予言しておきます。今日この場にいる皆さんは幸運です。そして私も私たちの成果をお伝えできることを大変嬉しく思います。どんなものが出来たのか、気になっていることでしょう。高い防水性を備えたスマートフォン?いいえ、違います。
私たちが開発したのは、シンプルなデザインを保ちつつ、水分を早急に吸収し、そして非常時には食して、多くの命を繋ぐことでしょう。その名もーー」




"i rice"






終わり


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