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死ぬ瞬間~読書記録198~

アメリカで精神科医をされていたエリザベス・キューブラー=ロスの著書。キューブラー=ロスは、スイスチューリッヒに、三つ子姉妹の長女として生まれる。父親が医学部進学に反対で、自ら学費を捻出するため、当初は専門学校を経て、検査技師をしていた。その後、1957年、31歳の時にチューリッヒ大学医学部を卒業している。彼女は医学部での学生時代に知り合ったアメリカ人留学生マニー・ロスと共に学業をさらに続け、また働き口を探すべく、1958年アメリカにわたった。



日本では、1971年に川口正吉先生の訳で出版され、評価を得た。
その後、1998年に鈴木晶先生により、完全版として改訂版の訳が出された。

1965年、キューブラー=ロスはシカゴビリングス病院で「死とその過程」に関するワークショップを開始する。その中で死病の末期患者約200人との面談内容を録音し、死にゆく人々の心理を分析し、文面に顕したものである。地名、人名、その他プライバシーは伏せられているが、おおよそインタビューの内容は要約・編集されず、冗長であってもそのままにナマに記された。インタビューに際して、患者に対しキューブラー=ロスはまず許しを求め、このように切り出す。
「わたしたちは特別のお願いでここに来ました。N牧師とわたしは重病で死にかかっている患者について、もっと知りたいと考えているのです」

自分がこれから死に向かっていると告げられた人の状況は、だいたいにおいて、次のようなプロセスになるという。
1、否認
2、怒り
3、取引
4、抑鬱
5、受容

本を読み、どう感じるかは、年齢や経験にも大きな違いがあると思った。
私は、20代半ば、バブルで浮かれているような時に、アメリカかぶれの友人から勧められ、川口先生の訳でこの本を読んだ。
「他人事」。
もちろん、感動した友人には言わなかったが、正直な気持ちはこんなところであった。

だが、今、もうじき還暦。大きな病院に入院し、そこで手術もしたし、死も近い、となった今は、実感としてわかる。

1980年代の日本では、がん患者への告知は殆ど行っていなかった。
亡くなってから、「実は胃潰瘍じゃなくて」などが多かった。
21世紀になり、有名人もブログなどで「実は」などの報告もされたりと、心構えも違ってきていると思う。

さてさて、この本を読んだあとで、日野原重明先生、山崎章朗先生のホスピスに関する本を読むわけだが、かなりな影響をエリザベス・キューブラー=ロス医師から受けているのが窺える。

日野原重明先生は、聖路加国際病院で緩和ケアを。山崎章朗先生は世田谷の聖ヨハネ会桜町病院でホスピスをと。



日本人は無宗教と言いながらも、何故か、ホスピスは宗教を必要とするような気がする。それは、人は必ず死ぬ。それをハッキリと言うのは、キリスト教や仏教などの宗教であるから。
なんとかして延命しようとするのではなく、その患者さんを診るのであるから。
多くの医師に読んで欲しいと思う本であった。


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