解雇と中間利益の関係

初めまして!
社労士試験合格に向けて勉強中のKohheです。
労基法テキスト7週目にしてようやく中間利益の話を理解しました・・・。
理解と暗記は違うというけれど、サラっとテキストを読んでるだけじゃなかなかツボを押さえられないものですね。
「使用者にとって平均賃金の6割は絶対に支払わないといけないけれど、中間利益の額が平均賃金の4割を超えた場合、中間利益の額を賃金額から控除してOK」というやつです。
さすがに7回も読んでるのでこの判例自体は頭に入っていますし、計算も出来ます。でも、どういう場合に誰にどんな得があるのかみたいな試験の得点にあまり関係の無い部分でよくわかっていませんでした。

ストーリーはこんな感じです。
”労働者Aは会社Xに勤めていましたが、不当な解雇予告によって会社Xを休業していました。労働者Aにとっては休業期間賃金を受け取れないと生活が厳しくなるため、会社Yで働き、頑張って中間利益を得ました。裁判の結果、会社Xの解雇は不当なものであったとして、解雇が無効になりました。”

労働者Aにとって、会社Xに対して30万円の賃金債権を持っている場合、通常の場合でも休業手当として平均賃金の6割は受け取れるわけですから、30万円の6割である18万円は労働基準法上労働者Aが確実にGetできる賃金なわけです。
このストーリーのもと、いくつかの場合を考えてみます。

(ⅰ)
平均賃金の6割合計分・・・18万円
中間利益・・・12万円
平均賃金の4割合計分・・・12万円
賞与等・・・0円

ここで、「中間利益」は「平均賃金の4割合計分」を超えません (12 = 12) から、中間利益の控除の話はそもそも始まらず、労働者Aが最終的にGetする賃金は会社Xから18万円、会社Yから12万円で計30万円です。

(ⅱ)
平均賃金の6割合計分・・・18万円
中間利益・・・12万円
平均賃金の4割合計分・・・12万円
賞与等・・・14万円

ここで、「中間利益」は「平均賃金の4割合計分」を超えません (12 = 12) から、中間利益の控除の話はそもそも始まらず、労働者Aが最終的にGetする賃金は会社Xから18万円 + 14万円の32万円、会社Yから12万円で計44万円です。

(ⅲ)
平均賃金の6割合計分・・・18万円
中間利益・・・25万円
平均賃金の4割合計分・・・12万円
賞与等・・・14万円

ここで、「中間利益」は「平均賃金の4割合計分」を超えます (25 > 12) から、中間利益の控除の話が関係してきます。平均賃金の4割を超えると「通常平均賃金の算定基礎に算入しない賃金」も控除の計算に含めますから、「12 + 14 - 25」で計算します。計算の結果1万円が導けますから、使用者としては18万円と1万円の19万円を労働者Aに支払う義務が生じます。労働者Aが最終的にGetする賃金は会社Xから19万円、会社Yから25万円で計44万円です。

おや、(ⅲ)では労働者Aは会社Yで25万円分も働きましたが、受け取れる総額は44万円。(ⅱ)では労働者Aは会社Yで(ⅲ)の場合より13万円分低い12万円分の労働で済んでいるものの、結局貰える金額は44万円と(ⅲ)の場合と同じになっていますね。
(ⅱ)の場合と(ⅲ)の場合で異なっている条件は中間利益の額だけです。
ここで労働者Aは頑張って(ⅱ)の場合より会社Yで13万円分も労働したのに、貰える額で言うと最終的には変わらないわけですから、13万円分の労働時間だけ無駄に働いたと見ることも出来ます。
逆に会社Xからすると、労働者Aが中間利益をたくさん得てくれたお陰で32万円の支払義務があったところ、控除が適用され19万円の支払義務で済んでいます。

(ⅳ)
平均賃金の6割合計分・・・18万円
中間利益・・・25万円
平均賃金の4割合計分・・・12万円
賞与等・・・0万円

ここで、「中間利益」は「平均賃金の4割合計分」を超えます (25 > 12) から、中間利益の控除の話が関係してきます。平均賃金の4割を超えると「通常平均賃金の算定基礎に算入しない賃金」も控除の計算に含めますから、「12 + 0 - 25」で計算します。計算の結果マイナスになりますから、使用者としては結局18万円のみを労働者Aに支払う義務が生じます。労働者Aが最終的にGetする賃金は会社Xから19万円、会社Yから25万円で計44万円です。

(ⅲ)の場合と(ⅳ)の場合で異なっているのは「賞与等」の条件のみで、結局労働者AがGetする賃金の総額は44万円。

要するにこの「中間利益の控除」の恐ろしい点は、中間利益が平均賃金の4割合計分を超えてしまうと賞与等の部分が目減りしていくというところなんですね。
もし賞与等がまったく無い会社なら、生活の充実のためにガンガン中間利益を得るべきですが、賞与等がある場合、平均賃金の4割合計分ピッタリに押さえておかないと、これを超えた瞬間賞与分がどんどん目減りしていくということです。

(ⅴ)
平均賃金の6割合計分・・・18万円
中間利益・・・12.1万円
平均賃金の4割合計分・・・12万円
賞与等・・・14万円

ここで、「中間利益」は「平均賃金の4割合計分」を超えます (12.1 > 12) から、中間利益の控除の話が関係してきます。平均賃金の4割を超えると「通常平均賃金の算定基礎に算入しない賃金」も控除の計算に含めますから、「12 + 14 - 12.1」で計算します。計算の結果13.9万円になりますから、使用者としては18万円 + 13.9万円の31.9万円を労働者Aに支払う義務が生じます。労働者Aが最終的にGetする賃金は会社Xから31.9万円、会社Yから12.1万円で計44万円です。
(ⅱ)の場合と比べ、中間利益が平均賃金の4割を超えたばっかりに賞与からの控除が始まり、賞与が1000円分目減りしました。

平均賃金の4割合計分をa、中間利益をb、賞与等の額をc、平均賃金の6割合計分をdとすると、a = c までは賃金の総額は d + b となり、ここで一つのターニングポイントを迎えます。以後 a + b = c となるまで会社Yでの労働時間は増える一方最終的な賃金は変わらないという地獄のような状態に陥り、 a + b < c となって初めて最終的な賃金の総額は増加に転じます。

この損益分岐をどう捉えるかですが、賞与等がある場合は、普通は賞与分の労働時間が無駄になるので中間利益が平均賃金の4割と同額になるまでで一旦ストップしておくのが得策かもしれませんね。不当解雇期間が相当長期に及び、日々の生活に切迫する場合はやむを得ないかもしれませんが・・・。
ただし、あくまで不当解雇となった場合の話です。
解雇有効となった場合最低ライン平均賃金の30日分の6割しか出ないなんてことは十分あり得ますし、賞与も就業規則に定めるタイミングで在籍していないと出ないことになってしまいます・・・。



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