涙の意味

また一人、大事な友人が天国へ続く階段をのぼっていった。

悲しさに押し潰されて、昨日は何もできなかった。

一年前の入院の時に、彼女とは知り合った。私より少し歳上のお姉さん。彼女との出会いは今でもはっきりと覚えているよ。

放射線治療から戻ると、デイルームの椅子に座って外を眺めるのが好きだった。その日もいつもの椅子に座って外を眺めていた。もう外はすっかり秋だなぁ。

「ここ、座って良いですか?」

振り向くとそこに彼女がいた。目にはうっすら涙を浮かべて。どうしたのかな?気になった。

お茶を買って二人で飲んだ。

うっすら涙が、止まらない涙に変わっていった。

分かるよ。不安だよね。怖いよね。辛いよね。家に帰りたいよね…

私はありきたりの言葉で、その場は励ますことしかできなかった。情けないよ。

それでも彼女は、涙を止めて笑顔を見せてくれた。その時の笑顔がとても可愛かった。彼女の笑顔は私を幸せにした。

それから毎日のように同じ時間にデイルームで会うようになった。

それでも彼女はいつも最初は泣いていた。でも少し話すと必ず可愛い笑顔を見せてくれた。日に日に話す内容も明るい話しとなり、冗談も言ってくれるようになった。声を出して笑ったり、時には怒りもぶつけてきたり。楽しい時間だった。長い入院、退屈な時間も減っていった。明日は何話そう?!彼女に会えるのが楽しみだった。

彼女にはお子さんが二人いて。小学生と園児。そのお子さんの話をしている時が一番いきいきとしていた。嬉しさが、幸せさが、愛しさが伝わってきた。コロナで面会が出来ずに、辛い思いをしただろう。お子さんたち、大好きなお母さんに会えずに寂しかっただろう。

「元気になって早く退院しなきゃね!」

彼女の声はいつしかとても力強い、はっきりとした声になっていた。

「来週、退院できるようになったよ!」

その言葉を聞いた時、安心した。

彼女が退院する日、お手紙をもらった。本当にシンプルな文章だったけれど、彼女の思いは強く感じた。伝わった。それしかないもんね!退院、本当におめでとう!その日の彼女の涙は、間違いなく嬉し涙だったんだろう。泣いているのに目がキラキラしていた。辛さの涙から嬉し涙に変わった彼女には、これから先、きっときっと幸せな未来が続くに違いないって思ったんだ。だから私も頑張って幸せな未来にしたい!彼女の嬉し涙が、笑顔がそう私に教えてくれた。

それから一週間後、私も退院した。彼女にメールをした。とても喜んでくれた。コロナが収束したら、会おうね!その約束が、お互いを勇気づけたと思ってる。

たまに連絡をする仲。その距離も心地よかったよ。いつも元気なメール。不安なんて、もうない位に。

でも、それは私に隠していたんだね。気づけなかった。悔しいよ。とても。涙が止まらなくて、旦那様に何て言葉を送って良いのか分からなくて。もう一度だけでも会いたかった。コロナが憎いよ。

家族を愛し、家族が大好きだった彼女。

自宅療養を選び、家族と過ごしたようだ。

旦那様からのメールには最後にこう書かれていた。

「家族に囲まれた安らかな最期を迎えられたと思っています。」

きっと最期まで素敵な笑顔でいてくれたのかなって思ってる。とても可愛い笑顔で。良かったね。最期の時を大好きな家族と過ごせて。それだけは本当に良かった。

一年で友人を癌で二人も失うなんて思わなかった。未だに信じたくないよ。何でこんな悲しいことが起こる?もう嫌だ。もう誰も死ぬなよ!死ぬなよ。生きてください!私も最期まで諦めず頑張るから!

死にたい!って思っても、言っても良いと思う。死にたいほど、死にたくなるほどに辛い時ってあるもの。だけど、本当には死なないで!

辛くても、今を、今日一日を頑張って乗り越えれば、明日もきっと大丈夫。乗り越えられる。そして次の日も、その次の日も。ずっと。

自分を褒めて励まして、自分を見失わないで。今を生きてください。

あなたはとても素敵だよ

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