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地縛戒隷 調整録(とデッキ紹介)

ペガサス・J・クロフォードは武藤遊戯のデッキを「Amazing」と評した。
それゆえ、遊戯王の世界で「Amazing」は神聖な言葉とされている。
有史以来、いや宇宙開闢以来、「Amaging」をデッキ名に冠した決闘者はいない。「Amazing」は遊戯王における最大の称賛であり、同時に終着でもある。

つまり、「Amazing」が使われたデッキが現れた時は、

世界の終末―― "ラグナロク" の到来を告げると言われているのである。

環境の想定

ハッキリさせておくべきは、このデッキは所謂「オフ会での対戦」を想定して作っている。環境デッキと渡り合うほどでもないが、インスタ映えの40枚全部コンボ札なタピオカデッキでもない(プレイとビルドの比重が大きくプレイに傾いているのもある)

現代のオフ会環境はもはや「ラフテル以外全部」くらいの懐の広さを持つ。ビッグマムからコーザまでが一堂に会していると言っても過言ではある。
先攻5妨害立てて「相手がこの盤面をどのように超えてくるか見るのが楽しいんです!」というマジモンのヴリトラから、初対面のキャッチボールで160km投げてくる闇の茂野吾郎まで揃い踏みのコロシアム状態である。
「桜乃ちゃんは初心者だから手加減してあげなきゃ」という殊勝な越前リョーマはそこにはいない。遊戯王プレイヤーは桜乃相手でもナックルサーブを叩き込む。

そんな背景もあり、オリジナルのコンボは勿論魅力的だが、そこに執着してデッキパワーを落とすのであれば、細かいシナジーを100個くらい積んでおいてあとは当日の自分にお任せする――が近年の方針である。

開拓

新規の地縛でユニークなカードと言えばやはり「異界共鳴-シンクロ・フュージョン」だろう。

異界共鳴-シンクロ・フュージョン
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は融合・SモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
①:自分フィールドの表側表示の、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送って発動できる。以下のモンスターを1体ずつEXデッキから特殊召喚する。
●墓地のそのモンスター2体を素材としてS召喚可能なSモンスター
●墓地のそのモンスター2体を素材として融合召喚可能な融合モンスター

遊戯王 オフィシャルカードゲーム データベース より

「地縛囚人 ライン・ウォーカー」でサーチが可能、展開先もキマイラ混合でバロネス+ドラゴスタペリアという組み合わせが開拓されていた。
上手く使えばとても強力なカードではあるが、実は早々に見切りをつけていた。既存のデッキでバロネススタペリアを散々使っていて飽きていたという面も否定できない(本当の理由は後述)

前置きが長くなったが、今回注目したのは「地縛戒隷 ジオクラーケン」だ。

地縛戒隷 ジオクラーケン
融合・効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守1200
「地縛」モンスター×2
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地からフィールド魔法カード1枚を手札に加える。
②:相手のEXデッキからモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破戒したモンスターの数×800ダメージを相手に与える。

遊戯王 オフィシャルカードゲーム データベース より

このカードを見たデッキビルダーはとりあえずこう考えたはずだ。「毎ターン出してフィールド魔法回収したい」。今回のデッキはそこからスタートしている。

課題

まず最初に行き詰まったのは、先攻で蘇生制限を満たしたジオクラーケンを出力することであった。ジオグレムリンの融合効果がバトルフェイズ中の効果のため、先攻では効果が使用できない。
初動で(ジオグレムリンを経由せず)ジオクラーケンを出力するプランはあったのだが、シンプルに枠を取りすぎるのと「先攻でジオクラーケンを立ててもそんなに強くない」「サーチしたフィールド魔法で特に何かできるわけでもない」という点が引っかかっていた。

先攻で特定のフィールド魔法をサーチする目的なら他にも選択肢はあり、なんなら融合・Sしか出せないという効果が(大体)おまけでついてくる。

まとめると、

  • ジオクラーケンが絶妙に先攻で出しにくい

  • 出そうとするとスロットを圧迫する(ここが個人的に嫌だった)

  • そもそも出しても制圧効果はそこまで期待できない

  • フィールド魔法サーチとして使おうとすると制約が気になる
    (=他のカードの方が使いやすい)

と絶妙に悩ましい性能をしている。セルゲイを産んだママは出てこい。
無限にも等しい一人回しと、有限と言って差し支えない対人戦を繰り返し、調整班がたどり着いた結論は素直に後手取ろうであった。このシンプルな結論を飲み込むために途方も無い時間を過ごした。

そこからはスムーズであった。先攻でジオクラーケンを立てるための枠をそっくり後手用カードに入れ替えることでデッキパワーが求める水準まで上がったので細部の調整に集中できた。
あとは、イカをグルグルしつつおまけでなにかできれば――というところであるが、やはりイカのことはイカに直接聞くしかない。イカ釣り漁業の現場に答えはあった。

諸君は、釣られたイカがどのように運ばれていくがご存知だろうか。




タクシーである。

デッキレシピ

レッド・リゾネーター→ヴィジョン・リゾネーター
サブテラーの継承でアメイジング

ちなみにデッキ名の「Amazing」とは、建築とお取り潰しを繰り返す迷宮城を「Oh…Amazing…」とペガサス氏が評したことから来ているのは言うまでもない。

カードあれこれ

地縛関連

これくらいかな? と思った3倍の枚数を投入。

ラビュリンス

迷宮城へのアクセス、ビッグウェルカムからのアリアーヌ初動、ツィオルキンの起動などで採用。ビッグウェルカムでアリアーヌを出力、グランドキーパーをバウンスすることで対象無効をケア出来るのも偉い(※グランドキーパーはアリアーヌの効果で再出力)
リンクモンスターの少ないこのデッキではストービーの役割が薄く(キーパー+スィーパーに足してグリフォンになれる点はある)、何より後半の処理のしづらさから「蘇生する処理が裏目(フィールドが埋まる)に繋がる=発動タイミングで思考することが増える」と判断しストービーを1に。構築段階で対戦中の思考コストを減らせるならそれはそれで良いという判断。

ヴィサス=スタフロスト/肆世壊=ライフォビア

ジオクラーケンからライフォビア→ヴィサスでツィオルキンに繋げつつ、グランドキーパーからスィーパー蘇生で守備を揃えやすいので相手のキーカード割ったりに使用。
ヴィサスの仕事が少ない(レベルとか素材指定の話)のとグランドキーパーが存在すると特殊召喚しにくいので、結構怪しい枠。

巨神封じの矢/イヴリース

ジオクラーケンのお友達として採用。バロネスのような効果を止めるモンスターをケアすべく、素材の揃ったタイミングで分かつ烙印からイヴリースの送り付けで「一回のリンク召喚(=素材爆破)」を相手に押し付け(ジオクラーケンは迷宮城で帰ってくる想定)、もしくは巨神封じの矢の墓地効果をチェーンする形で直チェーンを封じる。
超魔神イドでもイヴリースと同様(以上)の効果が期待できるが、場にセットできる=ビッグウェルカムのバウンス候補になれる、という点とあくまでジオクラーケンの補佐であるという言い訳が美しいという点でイヴに軍配が上がった。

ドロドロゴン/神炎竜ルベリオン

除外されたジオグレムリンの回収のため採用。
光属性がもう少し採用できればカオスクリエイター+偽No.1を採用予定だが採用できないので採用しませんでした。

パンクラトプス/ラディアン

捲り札としての採用。メインギミックを通したい時にシュッと妨害を減らしてくれる。ラディアンは墓地に送っておけば蘇生→ビッグウェルカムで回収して投げつけられるのが偉い。
クシャトリラ・フェンリルという最強札も候補に上がっていたが、能動的に除去するためにはバトルフェイズに入らなくてはならず、結局ジオグレムリン棒立ちのため不採用。

消えていったカードたち

ライン・ウォーカー/異界共鳴-シンクロ・フュージョン

グランドキーパー→ラインウォーカーからイカとアーデクを出そうとしていたが、イカの蘇生制限を満たせないのとそもそもどちらもチューナーだったという宗教上の理由で不採用。

トラップトリック

このカードの存在により「この罠ももう一枚増やすか……?」とデッキが歪み続けたため不採用。

デスピアの導化アルベル/烙印融合/アルバスの烙印

召喚権の食い合いと与えられる仕事の少なさでリストラ。

カオス・アンヘル-混沌の双翼-

イカ釣りより強くてデッキが転職しかけたので不採用。

所感

先手後手の割り切りや地縛初動の部分で難産ではあったが、最終的にはある程度の盤面の硬さと前後での対応力を備えたデッキに仕上がった。
というよりはジオグレムリンの回復効果(ではない)とグランドキーパーの場持ちの良さである程度そこの部分をキャリーするポテンシャルがこのカテゴリにあった。

シンクロフュージョンどちらもチューナー事件で挫けた感も否めた感はなくはないのだが、おそらくカジュアルのデッキビルダー諸兄も着地どうするかで悩んでいるはずなので、この記事が何かのヒントになることを願いながら文章を終えたいと思う。

追伸

ストーンスィーパー下がることないと思うんだが賭けません?

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