見出し画像

僕たちの青春はまだ、佐久間宣行のANN0に残っている



部屋をぐるりと眺めてみた。埃が溜まった隅を見て、畳まれてない洗濯物を見て、これはさすがに掃除をしなくては、と立ち上がる。

いつものように検索をかけ、流れ出すジングルとともに、服を畳み始める。


ラジオが好きだ。

掃除をしている時、僕はラジオを聴く。

お笑いが好きだからバナナマンや山里亮太の番組なんかをよく聴いてたんだけど、最近特別のお気に入りがある。

それが佐久間宣行のオールナイトニッポン0

テレビ東京のディレクターである佐久間宣行が、フジテレビ系列のニッポン放送で放送しているラジオ番組だ。ややこしいね。

佐久間 宣行は、テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティー。
『ゴッドタン』『ウレロ☆未確認少女』を手掛ける。テレビ東京制作局CP制作チーム部主事、兼コンテンツビジネス局コンテンツビジネス部兼任。 (ウィキペディアより)

テレビの「出る側」でなく、テレビを「作る側」の人間が、「出る側」となったとき、何を話すのか。ここが注目されていた(いる)。

ネット記事なんかでも、『業界人の裏話』的な切り口で魅力を書かれることが多い。

ところがどっこい、このラジオで僕が特別に気に入ってるのは、集まっているリスナーだ。

佐久間さんの業界こぼれ話も面白いのだが、僕にとって、このラジオのメインはリスナーのメール

顔も知らないけれど気の合う奴らが、ラジオの向こうに沢山いると確信させてくれる。

"自分と同じ側の人間"とラジオを通じて繋がっている気がする。

クラスの中心で大騒ぎしてたわけじゃない。

けど友達とボケあったりして大笑いしてた、高校時代のあの頃がフラッシュバックする。

あー、このメール送った人も自分と同じような感覚で生きてきたんだろうな。

そんな話ばっかりしてたな。またあの頃みたいに話したいなあ。

笑えるのにどこか懐かしい感覚になる。

特にそれを感じたメールを紹介しよう。

語るよりも実例を聴いてもらうのがベストだが、なかなか該当回が見つからないものもあるため、書き起こしにて。

※書き起こしが無粋なのは重々承知の上です。



9/18放送回から。


リスナー「僕はこの世に生を受けてから25年以上、『あいつちょっとイキってんな〜』と思われるのが怖くて、いつも紺と黒の服しか着ていないのですが、」

佐久間「わかる〜」

リスナー「ささやかな抵抗として靴下だけめっちゃ派手なのを履くことにしています。ただ一度だけ、蛍光オレンジの靴下を履いているのを同じ地味系の友達に見られたとき、『お前靴下派手だな』と指摘され、『うん、一応ね』と変な言い訳してしまったことがあります」

佐久間「『うん、一応ね』(爆笑)
受け答えとして成立してないもんね。『お前靴下派手だな』『うん、一応ね』」

リスナー「いや〜、あの時は心の底から肝っ玉が冷えました。」

佐久間「あ〜、わかる。ちょっとした冒険のさ、誰にも触れられたくないときのオシャレを、ちょっと首根っこガツっと掴まれた瞬間、超びびるよね。うん、一応ね。わかるな〜、わかる。
俺髪染めたこととかなかったんだけど、(中略)すげー薄い茶色くらいにしたことだけがあるのよ、3ヶ月だけ。
そのときにオークラさんとかに『あれ?佐久間さん髪染めました?』って言われたとき、『うん、一応ね』って言った。(笑)
言った言ったわ、染めてんのに『うん、一応ね』って言ったの覚えてるわ」

わかる。

自分の中でちょっと冒険したオシャレ、でも派手にいくのは怖いから、見えるか見えないくらいの靴下で。

怖いけど一歩踏み出したい感じ。わかる。

これ、僕の話か?

女の子とかに「靴下派手だね」って言われるのですらなくて、普段から一緒にいる友達に指摘される小っ恥ずかしさ。

お前そんなスタンスの奴だっけ、っていう空気をバリバリに感じた瞬間、誤魔化すしかないよな、『うん、一応ね』って。

しかもこれたぶん後々に引きずるね。

家に帰ったときとか、翌朝靴下を履くとき、『うん、一応ね』って意味わかんねーよな…どう思われたんだろうな…って思い出しちゃうタイプのやつだよね。

わかるなあ、わかる。

もう一つ、好きなメールの書き起こしを。


10/30放送回から


リスナー「先日、オールナイトニッポン最大の危機からの脱出に1人で参加しました」

佐久間「あー、我々が参加したリアル脱出ゲームね」

リスナー「好きなパーソナリティー2組を選べて、ゲーム中にアドバイスが貰えるとのことだったので、お笑い好きの僕は霜降り明星と佐久間さんの2組にしようかな、と思っていました」

佐久間「ありがとうございます」

リスナー「すると係の方から、お客様はこちらのお客様と一緒に脱出してくださいと言われ、組むことになったのが、恐らく深夜ラジオを聴いてないであろう、可愛いゴリゴリのギャル2人。しかも童貞丸出しの僕にもフレンドリーに話しかけてきてくれました。」

佐久間「いいじゃない」

リスナー「パーソナリティー2組を誰にするかの話題になり、ギャルたちは霜降り明星を選びました。じゃあ僕が佐久間さんを選んだらこちらとしても都合がいいや、と思ったのですが、
僕の口からは『僕ヒップホップ好きなんで、Creepy Nutsでいいですか?』と無意識で言ってました」

佐久間「(爆笑)うわー、傷つくー!まあでもね、ギャルだったらまあクリーピーかな?そうかあ?まあでもヒップホップだもんな。まあでも俺ではないな、確かにな。霜降りと、知らないおじさん。(笑)
まあな、クリアできたのかな?俺も行きたいなあ、まだ行ってないんですよ。なんか会社の後輩たち連れて行こうかな。1人で行くのは怖いから。1人で行ってさ、知らねえ奴と一緒でさ、『あれ?ここにいるおじさんが来てる』ってなるの恥ずかしすぎるから。それは嫌だから後輩たちと行こうかなと思ってます」

これもわかるなあ〜

知らないギャルにようわからんラジオを聴いてる地味な奴だと思われたくないよなあ。

ちょっとカッコつけて『ヒップホップ好きなんで』みたいな、一目置かれようとスカす感じ、やりがちだよなあ。

知らないギャルと、この脱出ゲームが終わったら一言も喋らないはずなのに、カッコつけてスカしてしまうの、わかるなあ。


おわりに


少しはこのラジオの聴取層が伝わっただろうか。

20代の僕の周りで、ラジオの話をしている人はほとんどいないけれど、日本全国のどこかには自分と同じように生きてる人がいるようだ。

高校生に戻りたいとは思わないが、あの頃の空気感をまた味わいたいとは思う。

バカな話に肩を震わせながらノスタルジックな気持ちになって、僕は家に散乱したゴミをゴミ箱へ押し込む。

少しでもこのラジオの魅力が、誰かに伝われば良いなと思っています。

(了)


文量の都合上削りましたが、以下オマケの書き起こしです。


11/20放送回から


リスナー「僕は今、アルバイト店員が胸の名札に名前ではなくアダ名を書くタイプの居酒屋でバイトをしているのですが、正直恥ずかしくて恥ずかしくてたまりません。
当然バイト仲間からはアダ名で呼ばれますし、お客さんからもアダ名で呼ばれ、由来を聞かれたりもします。
そこで佐久間さん。人に呼ばれても恥ずかしくないようなカッコいいアダ名を僕に付けてくれませんか?
ちなみに現在の僕のアダ名はチョリリンです。メガネを掛けた童貞のアダ名が、チョリリンです。」

佐久間「(爆笑) いやでも、メガネを掛けた童貞っていう以外さ、俺に情報ないんだよ。あー、メガネを掛けた童貞で愛知県でしょ。これしかないもんな。(中略)難しいやこれは。メガドね。メガネを掛けた童貞で略してメガド。」

このメールは佐久間さんが着地点に苦労した感じはありました。

ただ、アダ名の名札をつけた居酒屋で働くことを恥ずかしく思うこの感じ。

このリスナーも友達になれそうです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?