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photo#03 : 昼と夜なら夜のほう
撮れなかった写真がある。
年初め、初詣に出かけた。人で賑わう大阪天満宮の本殿に賽銭を投げて境内をぶらりと回ると、塀の上に二、三の鳩がある。空は薄曇りの合間に陽が差して、灰色の雲を背に逆光の影がくろぐろと並んでいた。それは何気なく、しかし印象的な陰影だったが、逡巡して結局撮らなかった。単純に人混みの真ん中で足を止めるのが憚られたのだった。
撮れなかった写真というのは不思議なもので、意外とよく覚
photo#02 : 対象をあまり見ていない
なぜ写真を撮るのだろう、と考える。
考えざるを得ない、というほうが正しい。山道を歩きながら、なぜこんなことをしているのかと考える。背中の機材が重い。今日はやっぱり望遠レンズは置いてきてもよかったのではないかと思う。探し物は見つからない。なぜこんなことをしているのかと考える。
街へ遊びに出ようとして、鞄にカメラを入れておく。たぶん使わないだろうと思って、実際使わなかったりする。あるいは思いがけ
photo#01 : まずレンズを破壊します
写真を撮っている。主に植物の。
始めてから二年に満たない。あるいはもう二年近くになる。2022年の六月初め、北の最果て、礼文島に咲くレブンアツモリソウのそばで手を滑らせて、レンズを壊した。それが始まりということになる。
ちょっと奇妙に聞こえるかもしれない。レンズを扱っていたのなら、その時すでに写真を撮っていたのだろうということには普通なる。動画というのもなくはない。しかしそういうわけではなく
VR流れ藻(21-B):アバターという概念をめぐって・後編
(※前編はこちら)
アバターと自己
わたしはまた白い部屋に立つ。目の前にわたしがいる。あるいは彼女が。あるいはわたしが。
関わりはすでに2年を超えた。もともとアバターを頻繁に変えるほうではない。前のアバターも2年ほど使っていたように思う。いまだに前のほうが好きだったとぼやく人もいて、わたしは笑って聞いている。
ベースはよく知られた販売アバターで、桔梗という。対応衣装も非常に多いが、そのわ
VR流れ藻(21-A):アバターという概念をめぐって・前編
「Doppelganger 2019」というワールドがある。
白い部屋の中に、わずかなオブジェクトが浮いている。近づくと、奥の壁をすり抜けるようにして誰かが駆け寄ってくる。それはドッペルゲンガーだ。あなたであって、あなたでない存在。あなたが右手を振れば、相手も同じように右手を振る。ここにあるのは平面の鏡ではなく、円筒形のオブジェクトを中心軸として映し出される、立体的な鏡像のシステムだ。
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VR流れ藻(20):イベントの日々
SANRIO Virtual Festival 2024。
にわかに周囲が騒がしくなり、サンリオVフェスが始まっている。ざっと見渡したところで昨年より質と量を増したコンテンツ群が容赦なくぶん投げられていて、とても全部見られる気がしない。弱音を吐きつつB4会場枠:バーチャルクリエイターパフォーマンスのチケットは買ったのでそこは漏らさず見たい。と言いつつすでにいくつか見逃している。まあ再演もあるの
VR流れ藻(19):年末年始
2024年が来てしまった。
まさか来ると思わなかった。2024年って。VRChatに入り始めたのが2018年だから、じき6年ということになる。この文章も途絶えがちだけれど、ログインの増減はありつつも相変わらずVR空間内を漂っている。近頃も結構な頻度で顔を出していて、もうちょっと他にすべきこともあるだろうと思わなくもない。本を読むとか、何か書くとか。
そんなわけでこれを書いている。
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