見出し画像

山になった貴方へ

祖父が死んだ。朝日と共に起き日が沈んだら寝るそんな人だった。特段とした愛情表現はないけれども静かに見守ってくれて生きる知恵を教えてくれるそんな人だった。静かな愛情とでも言うべきなんだろうか
貴方なんて言うのは子生意気だけど後呂がいいから許してね。
父は長男で私は1番上つまり長子。
物心がついた時に思ったのは苗字がなくなっちゃうだった。そのことを5歳くらいの時夕食中に唐突に両親に言ったことがある。両親はものすごく慌ててた、そしてそんなこと気にしなくていいそう言われた。
祖父は一度も女であることを責めなかった。バスも1、2時間に一本のど田舎で周りに何か言われることもあったかもしれないのに私に何も言わなかった。母にも言わなかったらしい。
もしかしたら何も気にしていなかったのかもしれない。それくらい何も言わなかった。

祖父の家に1人や父と2人で行くと私はご飯を作った。母の横で手伝い覚えた料理をゆっくりと手際悪く。それをゆっくりと待ちゆっくりと食べてくれたあの時の顔を私は忘れられない。
そんな日の帰りのお小遣いがいつもより多かったことも忘れてない笑笑

犬と祖父と私と妹で山にも連れて行ってもらった。何を喋ったわけでもないけれどたらのめを取ったり、山菜を取ったり、獣道を歩いたり特段特別なことをしたわけではない祖父にとっての普通のことは私たちにとっての新しいことだった。

農業というか林業というか猟師というか、何を仕事にしていたのか微妙にわからないけれど

山を生業にして生きていたそれが1番正しいと思う


ワサビを作っていてその畑に3回くらい連れて行ってもらった。その時書いた作文が入選したこともあった。ちょっと嬉しそうだったね。

祖父はいろんなことを教えてくれた。お茶の淹れ方、天ぷらの作り方、箸の作り方。自然に逆らわずに生きること。安いものをたくさん買うのではなく高いものを少し買うこと。
それはきっと丁寧な暮らしだ。
今の私にはそんな生活できないかもしれないけれど穏やかなゆっくりと流れる時間を確かに私は見たんだ。

遺影探しの中で生まれたばかりの私を満面の笑みで抱く祖父の写真があった。見たことないくらい笑っていた。そう。私は愛されていたんだ。言葉のない愛情で



よろしければサポートお願いします。いただいたものはぽんしーと楽しい景色を見るために使わせていただきます。また記事にするので待っててください!!