命ある限り

バンド仲間が死んだのは二人目だった。
しかも今日聞かされたのは元彼、というべきか。関係のあった奴だった。
奴と会ったのはもう5,6年以上前の話で、最初は態度もでかいわ「なんやこいつ」って思ったのが初めてだった。
正直良い印象ではなかった。
でも関わっていくうちに不器用で、他人の事ばかり気にしいで、心の奥底では優しさのある奴だったんだと分かった。
そんなところに惹かれていた。

とあることがきっかけで彼とは関係が破綻した。
それからしばらく疎遠だったが、とあるライブに顔を出した日に再び話すきっかけができた。
反省しつつも彼は彼のままだった。
その日ライブが終わって、道端で二人で缶チューハイ飲みながら語り合った。
何話したっけかな、覚えてねえや。
でもまた関係が友情に修復できたことは忘れなかった。

つい二週間前のことだ。夢に彼が出てきた。
まだ肌寒いはずの気候なのに夢の中では汗ばむほどの夏のような気候だった。
彼が手を伸ばして、後をついていくように二人で緑生い茂った道を歩きながらたわいもない話をした。
帰り際、あいつは「うちにご飯食べに来るか?」と言った。
わたしは「ごめんね、パートナーが待ってるから」と言ったら少し悲しそうな笑顔を見せた。
そこで目を覚ました。
起きてすぐ奴にラインを入れた。「今日夢に出てきたよ。元気?」
勿論今も既読にはならない。
今思えば奴は最期のお別れを言いに来たんじゃないかと。

きな臭えなあ、何でそんな最期までカッコつけるんだよ。
奴との過ごした数年間は苦しい思い出の方が多かったけど、目をつむるとどうしても思い出すことがあって、頭に離れない。
今日訃報を知って、思いのほか泣いた。
これでもかってほど。
でも、笑ってないときっと奴に怒られるんだろうな。
「パンチが足りねえぞ」と。

散文でどう締めればいいのかわからないけれど、どうか安らかに。
向こうに行ってももう誰の心配もせずただ幸せに。
みんな、全力で生きてるから心配すんな。

いつか会おうぜ。

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