レザーをオキシ漬けするな

それはそう、みたいなタイトル。オキシクリーンのパッケージにもそれなりのデカさではっきりと書いてある、革には使うなと。
それでも注意喚起のために書きました。裏に書いてあってもやってしまうアホがいるので。まあ私のことなんですけど…

ズボラの星、オキシ漬けについて

オキシクリーン、要は過炭酸ナトリウム。これをぬるま湯に溶かして衣類などを漬け込んでおくとあら不思議、洗っても落ちづらい皮脂由来の黄ばみや食べ物の汚れ、血液などの汚れがきれいさっぱり落ちちゃいます!というのが「オキシ漬け」と呼ばれる手法だ。
ごしごし擦る必要もなく、ただドボンと漬け込んでおくだけで綺麗になっている。この手軽さが私含めたズボラ諸姉や忙しいお母さん方などにウケ、近年ますます広まっている。

オキシ漬けに手を染めたのはつい最近のこと、ある暖かい日だった。
さぁて衣替えだとクローゼットから取り出したワンピースは、よく見るとなんとなく襟元が黄色い。
大量の南国の果物がデカデカと描かれている柄なので、最初は目の錯覚かと思った。パイナップル柄の残像で黄色く見えているだけかも? もちろん昨年洗ってからしまったし……。ところがどうやら錯覚ではないようだ。

絶望した。私は知っている。この手の汚れは落ちない。

しかしお気に入りのワンピースだったので、いきなり未知のクリーニング法を試すのも気が引ける。それならばと、お試しとして手放そうか悩んでいたクローゼットの中の諸々で実験してみた。私は箸遣いがヘタクソなのでいい歳してよく物をこぼしてしまい、不本意なシミをちょいちょい生み出してしまうのだ……。オキシクリーンの力、試せる服はごまんとある。
実験の結果、服に刻まれた私の恥の証は大部分が消え去った。これはいける!
確信を経て、本番のワンピースをオキシ漬けにした。やたらゴキゲンなトロピカルフルーツの模様は褪せることなく、(手洗い表記なのに)生地も傷まず、ただ襟元の黄ばみだけがきれいに落ちた。やったあ!

惨劇の全貌

オキシ漬け。これは神では?!
大きな成功体験を得てしまった私は、次なるターゲットを探した。それがまずかった。

今いちばん汚れが気になるもの。それは仕事に持っていっているトートバッグだ。
キャンバス地に茶色いレザーの取っ手がついた、レペットのバッグ。バレエコアです、というのは大嘘だが。キャンバスバッグは大きいしごわごわしているしで全く得意なアイテムではないけど、でかく書いてあるレペットのロゴによってなんとなくバレエ感、そこはかとないエレガントさを漂わせて煙に巻く作戦で選んだ。
ロゴドンにはブランドアピだけではなく、ブランドの威を借りることで苦手なアイテムを雰囲気で誤魔化して身につけられる効果があるのだと教えてくれた、ヘビロテアイテムだ。
これを通勤に使っていたが、さすがに生成りのキャンバスバッグを毎日使っていると底が薄汚れてくる。

なんとかしなければ。

そう思っていた矢先に、オキシ漬けを知ってしまった。
ハンドルがレザーなのがネックだった。レザーには使うなと、オキシクリーンのパッケージにはっきり書いてある。カジュアルなバッグに少しの高級感を足してくれる心強い味方だったはずのレザーハンドルが、初めて悩みの種となった。

「まあ、ハンドル部分が浸からなければいいでしょ」

結局、決行した。つまるところ、私は目の前の薄汚れた布をどうしてもオキシ漬けしてみたかったのだ。
薬剤を溶いたぬるま湯に、ざぶんとバッグの底を漬ける……洋服と違ってキャンバス地は吸水性が悪く、いまいち浸ってくれない。
このままでは不十分だ。もっと浸ってもらわねば。

一押ししたその瞬間。
レザー部分が溶液に触れた。ビニール手袋越しに触ると、なんだかぬるっと、嫌な感覚がある。
やってしまった、と思った。まあ少しだし大丈夫だろう。バッグを少し引き上げて、レザーがギリギリ当たらないぐらいの位置に整えた。
しばらく漬けておこう。バッグをそのままに、私は家を出た。
ハンドル部分、傷んでいないといいな。祈りつつ帰宅し、バッグを溶液から取り出した。

……液がいやに茶色い。

今までも薄黄色かったが、今回は輪をかけて茶色い。そんなに汚れていたのか。
バッグを見てみた。溶液の茶色は、汚れなんかじゃなかった。ハンドル部分の染料が溶け出していたのだ。ハンドル近辺のキャンバス地が、愚か者の紅茶染めのようにまだらに茶色くなっていた。
ダメ元で水や洗剤で洗ってみたが、無駄だった。

もうだめだ。こんなまだらのバッグを持って外へは出られない。ごめんねレペット。さよなら大嘘のバレエコア。

今回の教訓

・レザーをオキシ漬けしてはいけない。革が傷むだけではなく、染料が溶け出して周囲に被害をもたらす。
・やばそうだけどやっちゃえ!とゴリ押ししてはいけない。やばそうなら手を引く。


オキシ漬け、便利ですがものを選びましょう。素直に白Tとかに使っておくのが一番安全だし汚れ落ちもわかりやすくて気持ちいいと思います。

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