男と女としての両親の話

母が亡くなったあと、一人残った父は果たして大丈夫なのだろうかととても心配であった。(兄も含め実家から離れているゆえ)

父は割と一人で行動することが多く、それを見守るようなことがよくあったので、一人で生活する分には大丈夫だろうと思っていたけど、長年連れ添った母がいないことに対するメンタル面が特に気がかりだった。

しばらく経ってから父から連絡があり、お付き合いしている方がいると報告があった。

ぶったまげた。父に付き合っている人がいる?だと?詳細は割愛するが、真っ当な巡り合わせで聞いてるこっちが恥ずかしくなってしまうくらいピュアで清々しいものだった。

その報告があってから間も無く実家に帰ることがあり、お付き合いしている方と父と3人で食事することになった。それはそれはとても素敵な方でどこかしら雰囲気が母に似ているようでもあった。今でも実家に帰省するたびに3人で食事して近況を語り合っている。

親戚はいるというものの、そばに誰かいてくれるということは実家から離れて暮らす自分にとってとても有り難い存在である。

とはいえ冷静に振り返ると、父も一人の男なのだと気付き、何故か嬉しいような恥ずかしいような思いがこみ上げてきた。

父と母は馴れ初めとか語りたがらなかったこともあるが、高校の同級生ということ、そこからすっ飛んで自分の両親という認識になっていたので、それまでの過程がどんなものかさっぱりわからない。

今お付き合いしている方を見ると、父と母もこのような感じで人並みに男と女として恋愛をし、結婚したのかと改めて気付かされた。こそばゆい。

この一件のずっと前にも気付かされることがそういえば一つ。父と母と3人で食事したことがあり、2件目でどこか軽く飲もうかと辺りを歩き、ここのバーはどうかなと立ち止まった時に母がこっそり耳打ちしてきたのだ。

「ここのバーね、私が最初に付き合った人とデートした店なの。お父さんには内緒だけとね!」

ぶったまげた。そのような話は今まで子どもの前でした事がなかっただけに自分は唖然としてのちに大笑いした。そうか。母も女なんだと。(てことは父は2人目以降の付き合った人...?母は結婚まで何人付き合ったのだ...?)

そんな父と母のお陰で自分が今ここにいることは幸せである。

やはり気になるものは気になる。今度父に聞いてみようか。母のどこが好きになったのか。初デートはどこに行ったか。プロポーズはどちらがしたか。お前は知らなくてもいいんだとはぐらかされそうな予感はするが。。。

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