就学援助制度マニュアルのレシピ

第1 就学援助マニュアルの必要性

 前回までのnoteでは、就学援助制度について概観しました。今回のnoteでは、就学援助制度マニュアルの作り方を見ていこうと思います。その前に、なぜ、「制度マニュアル」が必要となるかについて確認します。
 事務マニュアルや制度マニュアルは、本来、ある程度完璧に要綱や要領が策定されていた場合、不要かと思います。しかし、要綱や要領は、細かく定めると改正の手間が増えてしまうことや、弾力性のある運用をすることができなくなってしまいます。このため、多くの自治体では、就学援助制度について、ざっくりしたものを上位の行政規則(たとえば「要綱」、「規程」等の名称)で定め、若干細かくしたものを下位の行政規則(例えば「要領」「要項」等の名称であって、各自治体で定めるもの)によって定めることが多いかと思われます。
 しかし、これでは、実際に運用するにあたり、「実務を経験しなければ何も説明することができない」状況になりかねません。また、「この制度はおかしい」と住民の方に言われても、説明することができず、不信感を与える原因となるでしょう。
 そのような状況になることを防ぐため、自分がマニュアルを作成した時に注意した点を記載します。もし、「こういう質問への対処は?」等の疑問が生じた場合には、コメント等を頂けると嬉しいです。

2 就学援助マニュアルのレシピ

1 対象者

 まず、費目毎の対象者を確認します。
 基本的には、準要保護者については全ての費目を、要保護者については修学旅行費や医療費等が対象となります。自治体によっては、ほかの費目等も支給していることがあるため、自分が所属する自治体の要綱等を確認してみてください。

2 支給金額

 次に確認するのは、各費目の支給金額です。
 文科省が示している要綱に準じた金額を支給しているものと思われますが、自治体ごとに要綱等で金額を決定しているかと思われますので、確認して一覧にしてみるのが良いかもしれません。

3 支給基準

 4月に認定する自治体や、10月に認定作業を行う自治体等、様々な自治体があるかと思います。その後、転入者は独自で認定することとなるかと思いますが、転入者にかかる就学援助費について、「いつ」の時点で認定されていれば「どの費目」が対象となるかについて確認しましょう。
 例えば、PTA会費については、年額を支給することとなるのか、それとも、月額換算で支給すべきなのかという点や、要保護世帯から準要保護世帯に移行した場合(又はその逆の世帯)について、どのような取扱いとなるのかについて整理することが望ましいように思われます。もし、基準等がなければ、支払いを拒否する根拠を欠くものと思われます。このため、どのように考えるかを示しておく必要があるかと思われます。

4 支給時期

 例えば、修学旅行費を支給する場合や、校外活動費を支給する場合、どのタイミングで支給することとなるかについて検討を要します。修学旅行を実施する学年になったら自動的に基準額を支払いするのか、それとも、実際に修学旅行を実施したあとに精算行為を行い、実費額を確定した後に実費額か上限額のいずれか低い方を支給することとなる場合等が想定されます。修学旅行は金額が大きく、旅行前に支払いできるかどうかは大きな関心ごとです。このため、「どれくらいの金額」を「いつ」支給できるかについて説明できるようにした方が良いものと思われます。
 もっとも、精算行為が伴う場合、「いつ」を明示することは困難です。このような場合には、「いつくらいに精算行為が行われる予定」かを示し(又は示すことができないことを説明し)、いつ頃支給できるかがわかれば、目安の日付を伝えることが望ましいかと思います。ただし、これについても、精算行為が終わらなければなんとも言うことができないので、陳謝するだけになることも想定されます。

3 最後に

 以上のは、ざっくりとしたレシピとなります。最低限、上記のものをまとめた表を作成するのが楽かと思います。一覧性があるように表記することで、自分にもほかの人にもわかりやすいように事務を行い、「誰でもできる事務」に変化させることにより、制度をよりよくするために考える時間を増やすことが自分の目標なので、上記の記録を残しました。

 最後になりますが、「この部分も書いておいた方がいいよ~」とか「こういう整理方法があるよ~」等の意見があれば、コメント下さいますと幸いです。

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