【M&A】危機で加速 寡占の歴史

こんにちは。新型コロナウイルスによる経済危機を見ていると、今のところは苦境への備えが無く、かつただでさえ本業の成績が悪い企業ほど倒産の危機に喘いでいるようにも思います。その一方で、このような危機を利用して更なる成長機会に活かそうとしている企業も多くあります。

この記事を取り上げた理由

目下の経済危機を元に強い企業がより強く、弱い企業がより弱くなるのは当然の流れです。そうするとマーケットはより硬直化に進むはずで、それがこれまでの歴史上マクロに市場構成などにどのような影響を与えてきており、長期的にはどのような懸念があるかを見てみたいために取り上げました。

要旨

①歴史を振り返れば、経済危機が寡占を加速させた代表例は1873年の大不況だろう。当時の重厚長大からハイテクへ、金融資本からファンドへ。顔ぶれは変わったが、似たような状況が生まれつつあるのかもしれない。

②米民主党の有力議員で、下院反トラスト小委員長のシシリーニ氏は「危機収束まで大型のM&A(合併・買収)は棚上げすべきだ」と4月に訴えた。買収で寡占がより進む恐れがある。

③2008年の金融危機の後も世界のM&Aは加速し、市場の寡占化は進んだ。米欧研究者の18年の分析では、米産業の75%で寡占率が20年前より上昇。特に金融危機後は企業数の減少も相まって寡占が加速した。勝ち組の力は分野を問わず増大し、とりわけデジタル分野では新興勢力の芽を摘む先制的な買収なども勢いづきそうだ。

解釈

市場が寡占状態になると、市場の公正かつ自由な競争を制限・疎外する可能性があることから、独占禁止法は定められています。M&Aの際に独禁法は必ず確認されるべき事項であり、審査の長期化や問題解消措置の適用などにより、M&A計画が影響を受けるリスクが一定程度存在します。

こう聞くと、いわゆるGAFAとかが作っているプラットフォームビジネスは思いっきり独禁法に違反するような気もしたのですが、こういったことは過剰執行の恐れがある事前規制ではなく、事後規制である「独占禁止法の積極運用を中心に据える」ことで対処されようとしているようです。

また、最近は海外の独禁当局は、将来競合者となる可能性のあるベンチャー企業等を競合者となる前に買収する案件(いわゆるキラー・アクイジション)を、将来の競争に深刻な悪影響をもたらすおそれがあるとして問題視するようになっています。

このように昨今のビジネス形態の変容とともに、経済状況の悪化も踏まえ、M&Aにおける独禁法の捉え方自体もこれまで以上に大きな論点になることが想定されます。

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