見出し画像

mӦgen.

ドレープの隙間
月明かりもない よいやみの街
幕の降りたカウンター
逆さのグラスに映る指先

ああ 今夜もまた
ふたりきりの
気まずい夜が始まる

ハムとスクランブルエッグ
焼けた小麦に染みるバター
香ばしいコーヒーの香りが
しんとした部屋を包み込む

軋む階段の上に見た
扉の下のラブ・レター
愛の無い言の葉が
罫線の間を埋める

ああ 今夜もまた
ふたりきりの
気まずい交信が進む

俺は 俺たちは
何故 日々を繰り返す
意味もない 他愛もない
愛しくもない時間

扉を指先で撫ぜる
ドアノブには触れないまま
背中合わせの部屋の温度は
感じることもできない

丑三つ時
時計の鐘は壊れて鳴らない
カラのポット 横の角砂糖 ひとつ
溶けた甘味は 苦くしみて
瞼の奥に消えた


画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?