2023年ベストアルバムズ10
もうそんなキセツ 年ベスの季節
俺は眼鏡をかけ直す
今年は、Rate Your Musicで年ベス用のリストを作り、日々それを成長させていく、という形式で新譜を聴いていました。
RYMの方でもアルバムごとにコメントを書いていますが、このnoteでは、リストの上位10枚についてより気持ちを強く書いていこうと思います。
気になったアルバムがあったら、聴いてください。
10 People In The Box「Camera obscura」
ポストロック/マスロックを中心にあらゆる音楽を縦横無尽に行き交うPeople In The Box 4年ぶりのアルバム。
開幕一枚目から申し訳ないが、僕はこのアルバムをどう言えばわからない。大好きになったの今年だし、よく言われるように歌詞も抽象的だし、キャリア全部聴き切ってないし……
ただ一つ分かるのは、バンド(複数人)で音楽を作ることを他の誰よりも楽しんでいるし、挑戦もしているということ。コロナ禍の空いた期間も巻き返すほどのアイデアや試行錯誤する力があり、それを増幅もさせられる。
このアルバムの曲、というより音は多種多様。ジャンルの壁を越えるとかではなく、音の壁を越えている。YouTubeでレコーディング風景がいくつか投稿されており、一瞬しか登場しないような音にも拘っている様子が見れる。
Highlight:水晶体に漂う世界
嘘のドリームポップみたいな音。不気味さと美しさが比例している。
9 V.A.「Xtalline:001」
音楽ライターでありレコード店のバイヤー/スタッフであり、音楽ジャンキーの門脇綱生、そしてシューゲイザーのメディア”Sleep Like a Pillow”のAroによるレーベル”Siren For Charlotte”の最初の作品。
門脇さんは”遠泳音楽”という音楽ジャンルを提唱している。遠いどこかやもう会えない人、天上世界を、シューゲイザーの美的感覚を持つ音楽を通して思い描こうというジャンル。このレーベルはそれを出していくレーベル。意味わからない?実際にこのアルバムを聴いたら多分わかるよ。
今作は13組のアーティストが集まり、それぞれのイメージする新しいシューゲイザー像を聴ける。ParannoulやWorld's End Girlfriendなどのビッグネームから、アメリカ民謡研究会やthat same streetなどの異彩を放つボカロPまで、色々いて嬉しい。
Highlight:that same street「Vesuva」
ボカロskramzでお馴染み?のアーティスト。君がいたあらゆる場所で叫ぶ。
8 betcover!!「馬」
(多分)みんな大好き現代のインディーヒーロー、betcover!!の5枚目。
2022年末の「卵」では誰もいない景色とそのムードを表現していた。その後出たライブ盤「画鋲」では一転して人間みのある名演奏を連続で繰り広げ、初聴の時僕は両方の鼻から鼻血が出た。
今作は8曲。少ない。でもすべてが強い特徴を持っている。「卵」はピークを「超人」に託し、他の曲は雰囲気に溶け込んでいるような(それでも良い曲いっぱい)感じだったが、今回はそもそもいっぱい強い曲が作れる柳瀬二郎が、どうやってムードを構築していくか、という感じがする。
「卵」の前日譚として作られたらしく、前の作品の延長でさえもこんなに満足感のあるものを作れるbetcover!!、今後本当にどうなってしまうんだろう。怖いです。
Highlight:鏡
正直全部ハイライト。今これを書いているときはこれの気分。
7 cero「e o」
ポップス、ブラックミュージック、電子音楽など幅広い要素を取り入れて音楽を作っているceroの5枚目。
前作までシティポップの延長としてギリギリ語れるような楽しい雰囲気を持ち合わせていたが、今作では一変。街に人がいない。人のいない街。
エレクトロニカやアンビエントを想起させるような音だがかといってそうでもない。でももちろんシティポップでもない。でもポップスとしては成り立ってる。でもポップスにしてはキャッチーじゃない。何?ceroはこのアルバムを誰に向けて作ったの?
とか考えていたが、むしろその塩梅がこのアルバムの肝なんじゃないかと思った。すべての中間を目指しているのに、ceroがそれをやることによってまったく平均的じゃない新しいものができる。多分それでいいんです。シティポップブーム終わったあとのシティポップの抜け殻みたいな感じにも捉えている。多分ポップスだから俺たちの方を向いてくれているさ。
Highlight:Tableaux タブローズ
アルバム全編そうだがハーモニーが綺麗。リンク切れの言葉たち…
6 カネコアヤノ「タオルケットは穏やかな」
シンガーソングライター、カネコアヤノの6枚目。
今作は今までと比べ、多様な編曲が聴ける。シューゲイザー、サイケ、グランジ、スロウコア・・・色々あってかなり激アツ。でもカネコアヤノの歌がずっと持ち続けている抱擁力、説得力がそのオルタナティブロック的な音と見事に調和し、パワーアップ。「闘い」すら感じる。
1月リリースだった&みんな聴いて、感想を言っているので色々考え続けてたが、普通にカネコアヤノの良い曲がいっぱい聴けるので良いアルバムです、という結論に至った。
カネコアヤノはなんだかんだずっと聴き続けると思う。良い曲をいっぱい作ってくれるからね。
Highlight:タオルケットは穏やかな
今の時代に向き合っている気がする。強い意志。
5 松木美定「THE MAGICAL TOUCH」
シンガーソングライター松木美定の1st。
長くジャズを学んできたようで、その素養をふんだんに発揮しつつも歌モノのポップスとして楽しめる作品。あとサイズがちょうどいい。
僕はジャズをほぼ知らない。ディグ的な意味でも勉強的な意味でも。でもなんとなく好き。みんなそうじゃない?よくわかんないけどオシャレでいいね。ジャズはそういう認識をされることをもう避けられない。
でもこのアルバムは、そういう向き合い方も肯定してくれている気がする。楽しんでくれればいいんですと。すべてを受け入れてくれるようなポップセンスが確実にある。僕が思い込んでるだけかも。あと月光みたいな雰囲気感じるので好き。
Highlight:光線
キレッキレのイントロからサビでは広がるようなメロディに変化。
4 moreru「呪詛告白初恋そして世界」
東京の6人組バンド、moreruの3rd。
2022年の「山田花子」ではずいぶんと凶悪なノイズをまとったパンクという印象だったが、今作で一変、ノイズの質感が変わり、メロディー(メロディーとかでもない)が聴きやすくなってる。
カノン進行が出てきたり、インタールードでメンバーの会話が少し出てきたり。闇かどうかも分からない闇の中に居た以前よりもキャッチー。その温度差によってむしろポップさすら感じる。
でも彼らはもちろんブチギレることを辞めていない。ジャンルもネットもシーンも歴史も、自分も、君も、こういうレビューも拒絶しているように感じる。誰でも心の中にまだ宿っている、あるいはたった今全開の厨二心的なものを最も揺さぶり、油を注いでくれる一枚。俺たちはブチギレ続ける必要がある。
Highlight:(true end)神へ、いいえ
”私の音楽は 音楽を超えるだろうか 人生を超えれるだろうか”
3 THE NOVEMBERS「The Novembers」
ずっと進化し続けていることでお馴染みのTHE NOVEMBERS 3年振りのアルバム。
11月に(た、たまたま11月だっただけですが?)アルバムを全部周ってみたが、初期のダークな世界観のオルタナティブロックからもう”できあがってる”のにインダストリアルに突っ込み、2020年の「At the Begining」ではもう他に誰も行けない所までたどり着いた感じがして衝撃だった。
しかし今作は更にその境地をぶっ壊し、もっと先に進んでいる。シューゲイザーとかニューウェーブとかそんなものも関係なく吸い込んで前人未到の域を目指しているように感じる。でもこちら側のことを忘れているわけじゃない、ある程度近い距離にずっと居続けてくれている、す、すごすぎる…
アルバムには入らなかったが、4月に出た「かなしみがかわいたら」も、その近さの部分を証明している。
Highlight:かたちあるもの、ぼくらをたばねて
まるで未来に入り込むかのような音像。サックスが美しい。
2 Parannoul「After The Magic」
僕がRate Your Musicを見始めた2021年の秋、Top albums of 2021のチャート上位に青いジャケットを鎮座させていた韓国のアーティスト、Parannoulの3枚目。
今作はその青いジャケット「To See the Next Part of the Dream」のドロドロとした面影は一切無し。明るい。嘘だろお前、前まで部屋に引きこもって𝓢𝓱𝓸𝓮𝓰𝓪𝔃𝓮 𝓔𝓶𝓸やってたのに、ドアを開けて外に駆け出して行ったかのような開放感。
僕は前よりも好きです。普通に。絶望してた方が良いわけなんてないので。
ファンからコーラスを募集、ピアノ、ストリングス、エレクトロニカ、色んな人が参加、そのあと韓国インディー仲間と一緒にInto the Endless Night 46分、ライブ盤も出しちゃって。眩しい!でも美しい!美しいから好き!!次作はどうなっちゃうんだろう。ないとおもうけどまた原点回帰したらおもしろい。
Highlight:Parade
美メロがゆっくり時間をかけて変貌を遂げて、光の轟音へ…
1. The Otals「U MUST BELIEVE IN GIRLFRIEND」
カートゥーン調のキャラをあしらった、いとこ同士の男女ツインボーカルのシューゲイザーデュオ。2021年からの活動を総括するようなベスト盤的内容(曲数が多い)、しかしながら大きな一歩を踏み出すような初めてのフルアルバム。
彼らは「世界一とっつきやすいシューゲイザー」をスローガン?にして曲を作っている。万人を狙えるポップセンスと奥深い轟音を併せ持っている。
単純に曲が良い。良すぎる。何なんですかこれは!本当にそれだけで全部いけるかもしれない。良い曲がいっぱいある。夏!夏のロック苦手だったけど、逆にシューゲイザーであることでむしろ刺さる。
声も良い。女性の方は甘い感じ。まさにシューゲ。男性の方はいわゆる歌い手的な文脈に近い感じがする。その辺はよく知らないからそうじゃないかもしれないけど。まさに!というのと意外性の融合が生むミラクル。
あとトラックメーカーとの共作があったり、過去にはボカロ曲カバーしたり、スプリットアルバムではJ-シューゲの重鎮呼んだり、色々な繋がりがある。このポップセンスが炸裂してめちゃくちゃ売れたら邦ロックからオルタナからエレクトロまですべてが繋がるかも。
Highlight:サマータイム.JPG
夏祭りの夜感ある。夏のJPG(=思い出)を見返している。俺は今年の夏、何をしていたか…
まとめ
今年は去年よりも新譜を聴きました。というより20世紀以前のロックとかに興味が無くなった。現行の音楽最高!!でも将来20'sおじさんになる可能性が見えて悲しい。
文章書くのがめんどくさくて10枚に絞ったけどもっと良いアルバムいっぱいあります!!冒頭に貼ったRYMのリストも是非ご覧ください!ここにないアルバムにも短くですがコメント付けてます。
でもいっぱい聴いたように見えて他のディグってる人から知ったのがほとんど。別にそれでもいいと思ってるけどなんか見返すと特定の数人すぎるかもしれない。別にそれでもいいけども。
2024年も大好きな音楽が増えるように、頑張ります
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