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会計学は探偵に最も必要な分析力

探偵と警察の調査の違いとは何でしょうか?探偵は民事における調査、警察は刑事事件における調査を担っていますが、これだけでは説明は不十分です。もっと具体的に言えば「探偵は公開情報に基づき調査する」のに対し「警察は職権に基づき調査する」というのが専門的な答えです。
職権を一切与えられていない日本の探偵にとっては、公開情報の活用は必須項目です。代表的なものを言えば会社・不動産登記、新聞雑誌検索、卒業名簿、国会図書館が挙がります。そして、企業調査で重要になってくるのが会計学、すなわち貸借対照表と損益計算書です。
これら財務諸表は公開情報の中で究極の一次情報といって良いでしょう。重要な公開情報を読めないなら、自分で探偵失格と言っているようなものです。

会計に間する分析は各探偵によって様々です。ただし、業種ごとの特徴や他業種との比較する方法などは押さえておきたいです。以下は有価証券報告書を参照にして作成した、近年の5社の貸借対照表、損益計算書、効率性分析のダイジェストです。

武田薬品工業/三井不動産/キャノン
セブン&アイホールディングス/ファーストリテイリング

以上の5社がA~Eのどれに該当するか比較研究しましょう。
※この問題はビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門(早稲田大学ビジネススクール著)の11章アカウンティングとファイナンスを参照に作成しています。

【解答】
A▶︎三井不動産
他社に比べ圧倒的に有形固定資産が多く、この時点で三井不動産であると決定的。
B▶︎武田薬品工業
他社よりも早く新薬の開発をするため、研究開発費526,087円は売上高の14 %と高い。一方で売上原価が低く、研究開発における失敗分の補填をしている。
C▶︎ファーストリテイリング
衣類も比較的、売上原価が低いのが特徴。タレントを起用してPRもするため、広告宣伝費が増える。
D▶︎セブン&アイ
小売で食品を扱うため、在庫回転期間が表内で最も早い。
E▶︎キャノン
メーカーであることを考慮し、武田薬品の次に研究開発費をかけている。

すぐにわかる順番に解答ポイントをまとめてみました。もう少し解説すると、有形固定資産で見るとAは不動産とわかりますが、Cのファーストリテイリングの有形固定資産が低いのは、実は東レなどに外注し製造拠点が少ないからです。こういう点は実地の情報が要ります。Bは特許など知的財産で無形資産が高く、また、医薬品は急な発病に対応するため在庫が多く、在庫回転期間が長く、製薬会社らしい特徴が出ています。

これ以外の分析で解答を導き出した方もいるでしょう。会計は世界共通の公開情報です。もう一度言いますが、公開情報の活用こそ探偵の基礎概念です。これから依頼を頼む探偵に「貸借対照表を読めますか?」と試しに言ってみてください。ある程度の力量がわかるはずです。


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