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海外メディアから正拳突きを繰り出す

これは繰り返し言っているが探偵が活用するのはスパイテクニックや裏情報などではなく、公開情報に基づく分析だ。日頃から多くのメディアを精査し修行する必要がある。主にどんな公開情報を扱うかと言えば『会計による数字の分析』と『海外メディアによる比較研究』だろう。この二つの基本スキルがなければ探偵として話にならない。

(情報分析実例)過剰優遇医療

この1,2ヶ月で社会保険料に関する議論が急激に浮上した。70歳以後より医療費負担1~2割となり、これ以外の現役世代は3割負担という話。これがキッカケで『頻繁に通院する人の負担が低いのは保険原理としておかしい』『高齢者への措置が青天井にバラマキで現役世代の負担ばかり』と様々な問題が指摘されている。一方で『盲腸の手術1000万円かかるアメリカ比べればマシだ!』という反論もある。討論者からすれば優位となる情報が欲しい。
調査会社に持ち込まれる相談にはこういう議論で有利になるための情報やキーパーソンを尋ねられるのだ。あなたは何と答えるだろうか?

海外メディアを武器にせよ

昨今、仮想敵へ有効な発信を繰り返し行う『正拳突き』という概念がSNSで流行りつつある。探偵はクライアントに有力情報を渡し特大な正拳突きをさせるのだ。このとき、会計(数字)と海外メディアは古今東西の優位性を持つ。高齢者への措置が青天井にバラマキで現役世代は負担増大している、これを補完する海外メディアをピックアップした。

Patient cost sharing and medical expenditures for the Elderly
2015年10月10日
Kazuya Fukushima (東京大学公共政策大学院) らの論文の概要文 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26603160/

(ダイジェスト)
高齢化社会が加速する一方で医療費負担と高齢者の具体的な影響値は研究されていなかった。医療費負担の1割を導入したことで高齢者の医療需要は異質なものとなった。特に整形外科、眼科の外来受診は多くなる傾向にあり予算も高ウエイトだ。新薬需要ばかり加速しジェネリック医薬品が普及しない点も検討の予知がある。外来では健康な人の方が病気の人よりも医療サービスを受ける裁量が大きい状態だ。最後に、医療支出の増加が健康を改善するエビデンスは見つかっていない。

このように格安で医療を受けられる状態は病院、製薬に過剰な需要を生み費用増加していると指摘。そして、医療費負担が高齢者の健康に直結しないと語られた。他方で、ミハイロ・ヤコブリエヴィッチ氏はこの論文について、医療費の過剰な優遇が新薬指向を促し、日本の製薬市場の規模が莫大にも関わらずジェネリック薬品が普及していないとも賛同している。
ヤコブリエヴィッチ氏  : セルビア、クラグイェバツ大学
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2016.00073/full

もちろん、これは『単なる意見の一つ』であることは間違いない。しかしこのように海外メディアから知られていない情報を提供することで、クライアントは議論での発言力を高めることができる。これが使えないならまた探し、次々と情報を仕入れる。
『単なる意見の一つ』となるか『有益情報の正拳突き』であるか、発信をしてみなければわからない。探偵の情報収集は試行錯誤の繰り返しだ。


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