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【読了記録】今月読んだ本 ~23年8月編~

とけそう


中溝康隆『現役引退』

 先月読み切った本ですが先月分に載せてなかったので、ここで。
 昭和、平成の名選手24人の現役ラストイヤーに焦点を当てて書かれた本です。どんな名選手でも必ず引退する瞬間がやってきます。そういった現役最終年でも一線級で活躍し引退する者、ボロボロになるまでやりきった者、様々ですが、意外とその最終年について知らない。そんな引退間際が筆者の軽快な筆致で描かれています。

 私自身、野球ファンでペナントをニュースで追ったり、Youtubeでハイライトを見たりしていますが(中継は見れてないですし、現地観戦しない派です)、選手の引退も沢山リアルタイムで見てきました。近年ではチーム編成の都合で中々出場機会を得られず、日本での凱旋試合の最中バットを置いたイチローやチームの日本一を餞に引退した能見選手などが印象深いです。

 この本を通じても感じましたが、去り際の美学は本当に尊いものだと思います。引退の経緯は色々ありますが、間違いと思えるものはありません。自分の信念を貫いてユニフォームを脱ぐ姿はとても勇ましく思います。いつまでも現役を貫いてほしいと思う気持ちもありますが、こうやって世代交代は行われ続けているので、引退は選手の必然であり宿命でもあります。

 そういったドラマのような内容がこの本に記されています。ここでは重々しい言葉で書いていますが、内容はとても読みやすかったです。

山口桂『死ぬまでに知っておきたい日本美術』

 クリスティーズ・ジャパン代表の山口桂氏の著書です。世界的なオークションハウスの社長による「外」から見た日本美術の特徴、そして良さについて語られています。日本美術の真髄をよく言語化出来ているので非常に勉強になりました。

 私は水墨画や日本画に興味がありまして、長谷川等伯の『松林図屏風』などの作品はかなり刺さりました。「余白の美」というのが非常に感じられて好きです。以前のnoteにも書いたことがありますが、「描かないことの美しさ」は日本人の感性としてあるんじゃないかと。美術館に行きたくなりました。余談ですが、横山大観の『彗星』という作品も好きなのでぜひ検索して見てみてください。

 個人的に日本的美術と言われて代表的なのは、本書でも紹介されていますが「身の回りにある道具」に美を見出す民藝だと思います。明らかに観賞用として使用されたものに価値があるのは世界的に見てもよくある事例です(古美術とかファインアートっていうやつですね)。対して民藝は雑器、なおかつ無名作家による民衆的美術工芸に焦点を当てています。普段使いの皿、調理器具、染織とありふれたものでも「良いものは良い」という考え方は海外には少ない気がします。

 とはいえ、現在食器を手作りで作ったものを買うかと言われるとそうでない人が大半、というかほぼ100%だと思います。大抵は百均やニトリのようなお店で購入しているはずです。伝統工芸というのは大量消費社会とは滅法相性が悪いのが世の常なので、策を打たねば衰退していく定めです。美術館に行って作品を見ることも重要ですが、もっと身近な個人商店や地域の伝統工芸に触れてみるというのも「日本美術」を知る上で大事なことだと思いました。

トム・フィリップス著、禰冝田亜希訳『メガトン級「大失敗」の世界史』

 タイトル買いした本です。タイトル通り、人間はとにかく失敗するということがよく分かる本です。人類の祖先はどうやら木から落ちていたらしいという話。狩りをしたいがために外来生物を野に放つ人。害獣だからと雀を駆逐する人。遊戯にかまけて国を滅ぼす為政者。いつの時代もとんでもない失敗をする人はいます。

 実際のところ誤った行動をしている最中に「失敗」と断言するのは難しく、結果論として「失敗」がほとんどな気がします。明らかに金食い虫なプロジェクトもコンコルド効果が働いているので、やめるにやめられないといったこともありますね。あとオゾンホールや外来種の話も出てきていますが、環境問題も結果として失敗だった。当時は毒性や侵略性について考慮されていなかったというのもありがちです。

 環境問題はこれから起こるであろう、なんだったら既に起こっている「失敗」です。よく「地球はゴミで埋まる」なんて言われますが、絵空事ではないと思います。環境問題に限らず人間のやらかしによる認知できてない問題もまだまだあるはずなので、底の知れない怖さも感じます。

 話はズレましたが、人間の失敗事例を学んでこれを教訓?には出来ると思います。著者の英国皮肉が滲み出ていてかなり良かったです。

福井県立図書館『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』

 最後はライトな本で、図書館利用者の覚え違いタイトル集です。以前SNSでバズっていましたね。司書さんからすれば「臆せずどんどん聞いて欲しい!」とのことですが、それにしてもこの絶妙な間違え方には笑顔になります。
 一例では「るるぶ」→「ぶるる」、「とっとこハム太郎」→「トコトコ公太郎」など「ニュアンスは伝わるけど・・・」みたいな間違いが多く、逆に感心しました。

 あと図書館の司書サービスは本を探すだけではなく、情報を探してくれるという役割もあることが最後に書かれていました。今の御時世、ネットで大抵のことは調べられますが、それはあくまで「メジャー」なこと。郷土にまつわる情報など「マイナー」なことは中々出てきません。そういった内容について司書さんがよく探すことがあるそうです。頼りになる存在です。いつもありがとうございます。


 今月はここまでです。では。


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