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#54 日産マーチAK12 「車高調整サスペンションキットの選定」

 間が空いてしまいましたが、通勤&トレーニングマシーン、AK12マーチ 12S 5MT車の足廻り変更検討その2です。

諸元値集め

 スプリングレートの相場調査と並行して、バネ上固有振動数を計算するための主要諸元を集めます。車重や軸荷重は車検証、ホイールベースはカタログから、EXCELにどんどん打ち込んでいきます。

カタログの側面図から乗員とスペアタイヤの位置を概算して重心位置と走行時質量での前後軸荷重を計算します

バネ上固有振動数

 次にサスペンションの前後バランスを見るためにバネ上固有振動数を求めます。

 固有振動数=√(スプリングレート÷単輪バネ上重量)÷(2π)

 求めたいのはバネ上、即ちボディの固有振動数なのでスプリングレートをホイールレートに置き換えます。サスペンション形式やスプリングの取付位置によりホイールレートへの換算が変わるので気を付けましょう。
 必要な諸元は、前後輪の単軸バネ上荷重、ロワアーム長とスプリング下端取付位置のレバー比、スプリング取付角補正係数です。レバー比は某H○S製車高調整サスペンションの取扱説明書などでも見つかるかもしれません 。

 ホイールレート=スプリングレート÷レバー比の自乗÷角度補正係数

 ここでレバー比の自乗で割るのはテコの原理です。例えばテコの長さを2倍にするとバネを縮める力は半分になりますが動かす距離は2倍必要なので、レバー比とストローク比で割らないと単位が合わなくなります。

K12マーチのサスペンションは
 フロント:ストラット式
 リヤ:トーションビーム式スプリング別置き
なので、フロントは角度補正係数(ACF) 、リヤはレバー比を使って計算します。

計算結果

 集めたバネレートで片っ端からバネ上固有振動数を計算します。単位は [Hz] なので1秒間に何回振動するか?ですね。

 さて、スプリング選定で注目するのは①前後平均バネ上固有振動数 と ②バネ上固有振動数の前後差 です。

①平均バネ上固有振動数
 数値が大きくなると固有周期が短くなります。同じ時間なら振動する回数が増えるので乗り心地は悪化します。(勿論ダンパー減衰力は同一の前提です)
 一方で硬いバネに変えてホイールレートを上げると同じ入力に対する変位量が減ります。ホイールはタイヤを介して地面に接地しているので実際にはボディの変位が減ることになります。例えばブレーキをかけたときのノーズダイブ(フロントの沈み込み)や、ステアリングを切ったときのロール(左右の傾き)ですね。
 普通の乗用車だと1.3Hz以下、スポーツタイプの車で1.5Hz越え、社外のサスペンションキットで2Hzとか、サーキット仕様はもっと高いですが、街乗りは苦痛でしょう。今回は用途(通勤〜ワインディング)を鑑みて、やや控えめですが 1.7〜1.8Hz 狙いとします。

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