見出し画像

物語に耽溺する

現ジャンルの推しの誕生日は出張先の熊本にいた。
今月は

1週目 九州、北関東
2週目 東海、関西、東北
3週目 東北
4週目 九州、信州

っていう「ツアーか?」と方々からツッコミを入れられるスケジュールで、その日も前夜から乗り込んでいたのである。

で、推しの誕生日なのに、朝イチからダメージを食らう報告があり、しばらくキツいことになりそうだなと思った。とはいえ所詮は仕事の話だし、本当にしんどいのは私ではない。…と思うと、不安を、身体と頭が打ち消して、緊急事態へ対処するモードになっていくのがよくわかった。そうだ、こういう人間でした。


いろいろなオタクやってるけど、主ジャンルは労働、と言っている。でも昔はそうじゃなかった。まぁ今も会社が好きとか業務自体が好きとかではない。ただ、1日の大半過ごすんだから、自分のやっていることや、一緒にいる人間のことは好きになったり心が動いたりしたいよな…と思って何年かかけて試行錯誤していたら胸を張って主ジャンルと言えるようになっていた。いい会社だし(いい会社であろうと努力している点含めて)と思うし、昔は照れなのか謎の向上心なのか、同僚のことを素直に好きと言えなかったけれど、今では「みんなのことめっちゃ好き、ラブ!」ぐらいのことは毎日言えるようになったし心からそう思っている。
会社員として、1日のうちかなり長い時間を費やさざるを得ないのに、いい年して仕事が嫌いとかつまんないとか言っているの(そういう人も多いのだろうけど)自分はそうはなりたくないな…とあるとき思ったので、変わることができてよかったなと思う。別に仕事が好きなのが偉いとかではなく、単純に、平等に限られた時間をなるべく楽しく過ごしたいっていうだけです。楽しいっていうのは、ラクとかハッピーってことだけではなく、ちゃんと心が動くってことね。怒ったり嘆いたりも含めて楽しめるといいなっていう。

労働はクソと言いながら、結局推しが選んだのは、より過酷な労働だった。だから推してるんだよなぁ。


そんなわけで今週は現実の労働のことを考えたり対処したりするのに相当の時間と労力を割いて、そんなときこそ早く寝なきゃいけないのにベッドでぼんやりしたり、ネットを永遠に彷徨ってしまう。オードリー・タンが「大変なときは寝る、もっと大変になったらもっと寝る」(意訳)って言ってた気がするけど、オードリー・タンですらちゃんと寝るのに、凡人なら尚更ですよ。でも頭がちゃんと冷却できてなくていろいろなことがぐるぐるしてるんだろうな。

頭を冷却するには、いろいろ渦巻いていることを書いて吐き出すしかなくて、このnoteやらブログをあらかじめ作っておいてよかった。しかもある程度吐き出すことが習慣にできていて尚更よかったと思った。慣れていないと、下手に他人にぶつけかねない。いや別にぶつけてもいいんだろうけど、あんまりそうしたくないんだよね…。弱みを見せたくないという気持ちもゼロではないが、もうちょっと自分の感情を自分だけでこねくり回して楽しみたいっていう。さっきの「限られた時間を楽しく過ごしたい」っていう享楽思考がベースにあるだけな気がする。


とはいえ、やることが多いのと移動疲れのせいか、先日はある北関東の街での打ち合わせの途中から、ずっと「本屋のきれいな空気を吸いたい…」しか考えられなくなった。打ち合わせが終わって電車に乗り、新幹線の某駅まで出たとき、理由をつけて部下と別れ、駅ビルの本屋に向かい、しばらく新刊の棚などをぼんやり眺めた。夏の本屋って読書フェアたくさんやってていいよね。昔は各出版社の冊子をそれぞれもらって、各社がどんな本を推しているかを見比べ、読みたい本が多すぎて溜息をついたりしたなぁ。


なんで本屋に駆け込んだかというと、週末に朝井リョウの「正欲」読んで、脳がフィクションにちゃんと揺らされて心が動いたことに助かったのと、好きな書評家さんがやっている芥川賞直木賞予想のスペースを聞いたからだと思う。

スペースは、お二人の「物語を読みたい!」という熱がとてもよかった。「情報の羅列は物語とは呼べない」「回想の多い小説ってつまんない」っていう、それな!のオンパレードだった。「思ったより辛口で面白い」ってコメントしたら「だからアーカイブ残せないんですよ!」って反応してもらえたのでさらに笑ってしまった。各候補作のいいところも引っかかったところもめちゃめちゃ早口で語られてて面白すぎた。


現実って楽しいけど、やっぱり人間には「物語」が必要なんだよなぁ…っていうのとを、去年大学院への入学を考えていたあたりに考えたり、調べたりしていたのだけど、このへんもまた考えたいんだよなぁ。自分の現実って、ある程度時間が経って俯瞰できないと、「物語」にできないし。


その勢いで、金曜日の深夜は小説をいろいろとポチってしまった。仕事の合間に読もう。っていうか原稿もあるんですよね…間に合うのかな…?

休んで吐き出して、ときどき他人の物語を取り入れてぼちぼちやっていくしかない。それでやっていけるように自分を訓練していてよかった。これは自画自賛です。

自分の人生は自分にしか助けられないっていうのを知った気でいたけど、去年いろいろあってようやく理解して、実践し始めている気がする。もう少し手が空いたら、もしかしたら他の人のことも助けることができるかもしれない。そうなったらよいのだけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?