【妊娠の記録⑦】希望が見えた日

今日から、また妊娠の記録の続きを綴っていきたいと思ってます。

まだたった4ヶ月前のことだけど、もう数年前のことのようにも感じてしまいます。

ちょっと専門的な言葉も登場してしまうかもしれないし、お医者さんの説明の解釈の仕方がズレてしまうかもしれませんが、一生懸命書くので、ご興味あれば読んでください。

前回、検査入院の記録はこちら。

この続きから書いていきます。



産婦人科での説明

産婦人科に着いて…


2024.2.26

この日は、検査入院の結果がわかる日だった。
とてもドキドキしていた。
仕事を早退して、15時ごろ夫とともに病院に向かった。

部屋には、先生が2人と看護師さんが1人。
いつもの産婦人科の主治医の先生と循環器小児科の若い男の先生だった。

先生たちは、淡々と説明を始めた。

母体の状態

まず私の状態から。
・母体の採血の結果、軽度の貧血以外に大きな所見はなし。
・糖負荷検査→正常
・風疹抗体16倍(分娩後ワクチン推奨)
・ウイルス感染も特になし

その後産婦人科の先生の、胎児(七奈ちゃん)の所見を聞いた。

胎児(七奈ちゃん)の状態

2/19(19w2d)の検査結果
・推定体重219g(18w4dの大きさ)→やや小さいが今のところ正常範囲
・羊水量→やや多めですが正常範囲
・頭蓋内、顔面に異常なし
・胸部→心尖は右向き、胃は右にある
・腹部→腎臓は正常の大きさ、肝臓は左葉が大きい(通常と反対)
・腸管の輝度が高い(超音波で白く見える)
・少量の腹水→病的な意味は不明
・四肢→見える範囲で異常なし
・心臓→循環器医師から後ほど説明

ここまで聞いて、とりあえずお腹の子(七奈ちゃん)の身体のつくりは普通と違うんだなということがわかった。え、普通と違くて大丈夫なのかな?と思ったけど、私も夫もとりあえずビックリするわ、難しい言葉がたくさんあるわ、で、最後まで先生の話を聞くことにした。

循環器科の先生の話

その後、循環器の先生が自己紹介、そして、説明してくれた。

メモをとろうとしたら、資料は全部渡せるし、メモは直接書いて構いませんよ、と言われた。(結局、難し過ぎて、メモはとれなかった)

胎児診断について


まずは胎児診断についての説明があった。
簡単にいうと、胎児診断をすることで、出生前から赤ちゃんの状態や病気を知り、十分な説明と準備を行なっておくことで、お腹の赤ちゃんが産まれてからすぐ治療に進めるということだった。
それから、胎児診断にも限界はある、とのことだった。重症な心臓病は診断がしやすいのが一般的だが、重症度まで正確に予測するのは不可能だという話もあった。

心臓のしくみ


まずは、昔学校で勉強したような、心臓の仕組みをもう一度復習(説明を受ける)することになる。

先生にもらった心臓の図


全身からきた老廃物の多い血液は、大静脈から右心房に送られ、右心室から肺動脈を通して、肺に送られる。肺で酸素の多い血液となって左心房から左心室に送られ、大動脈を通して全身に血液が送られる。

この際、お腹の中の赤ちゃんは、胎盤を通して、栄養や酸素、老廃物のやり取りもされている。そして、胎内では、動脈管が開いていて、右心室から下半身へ血液を流すのに重要な働きをしているそう。

七奈ちゃんの心臓

ななちゃんの心臓



さて、ここでななちゃんの心臓について。

①胃胞が右、心臓が右を向く(内臓心臓錯位)
②心房のしきりが欠けている(単心房)
③心房から心室のしきりの一部が欠けており、2つの房室弁は1つになっている(房室中隔欠損)
④大動脈の根元と大動脈弁が狭い(大動脈弁・弁下狭窄)
⑤肺動脈弁が狭い(肺動脈弁狭窄)
⑥脈が通常よりも遅い(洞不全症候群)

この複雑な心臓異常が生じた原因として、多脾症候群があると考えていると言われた。

私たちの体は表面から見ると左右対称ですが、内臓はというと、心臓はやや左に、胃も左に、肝臓や胆のうは右に位置するという具合に明らかに左右非対称になっています。稀に内臓が左右対称となる患者さんがおられ、この病気は内臓錯位症候群と呼ばれます。体の両側が左側となる場合には脾臓が複数見られるため多脾症候群、体の両側が右側となる場合は脾臓が見られないため無脾症候群と呼ばれます。これらの病気は、いづれも胎児の初期に内臓の左右が決まる過程に異常が生じたために起こる生まれつきの病気で、どちらも高い確率(50-90%)で 先天性 心疾患を合併します。

難病情報センターHP 多脾症候群(指定難病188)


多脾症候群には、徐脈性不整脈を合併することがあるという。

規則正しい脈を作り出すには刺激伝導系(洞結節、房室結節、ヒス束)が必要になるが、多脾症候群では刺激伝導系の発達が悪く、脈が遅くなることがある。
洞結節の機能が不良…洞機能不全
房室結節〜ヒス束の機能が不良…房室ブロック
洞機能不全による徐脈は進行することがある。房室ブロックによる徐脈は、突然出現し進行することがある。

現在、お子さまの心拍数は、90/分と正常(140-150/分)よりやや遅く、軽度の洞機能不全を認めます。現時点では、心機能の影響ない程度ですが、徐脈は進行することが多いため、出生前、出生後ともに経過観察が必要です。房室ブロックが出現した場合には、胎児水腫になり、胎児死亡の原因になります。また徐脈が進行した場合、出生後にペースメーカー留置を要する可能性があります。

徐脈については、このように説明があった。

多脾症候群では、心臓以外の疾患を合併することもあるそうだが、ここでは説明を割愛する。


さらに、大動脈弁と肺動脈弁の狭窄についての説明があった。

現在は、大動脈弁・弁下狭窄は重症(狭い)、肺動脈弁狭窄は中等症と考えている。
(この弁狭窄の程度によって治療方針は大きく異なるが、この時点での見解を伝えられた)

出生後の症状について

大動脈弁・弁下狭窄によって、体に血液が送りづらい心臓となる。そのため、生まれて時間がたつと変化が起きてきます。
胎盤で大量に作られていたプロスタグランデインの濃度が低下してくると動脈管が閉鎖してしまう。動脈管が閉鎖すると、体への血流が減少し、全身の臓器の機能が低下する(多臓器不全、動脈管性ショック)。このような変化は早い場合は半日、遅い場合でも数日以内に起きてくる。
また動脈管が閉鎖しない場合でも、出生後時間とともに肺動脈の血管が拡張し、肺への血流が増加します。肺への血流が過剰になると呼吸が苦しくなる(多呼吸、陥没呼吸)。また、肺血流が増加すればその分体血流が減少するので、腎臓、腸管などへの臓器への血流が減少し、尿量減少(腎不全)や血便(壊死性腸炎)を起こしてしまう。


ここまで現状と、今わかる出生後の症状についての説明であった。

治療の方針について


まず産まれてすぐに内科的治療が始まる。
①プロスタグランジンの点滴
動脈管が閉じるのを防ぐために、プロスタグランジンを投与。
②窒素ガスによる低酸素療法
肺血流を増加させ過ぎないようコントロールするため、空気に窒素を混ぜて酸素濃度を下げたガスを使って換気。
③抗心不全治療、利尿剤、強心剤

そして、外科的な治療をしていく。
新生児期の手術
生後1週間以内に、両側肺動脈絞扼術を行い、肺と全身への血流のバランスをとる。また肺動脈弁狭窄をカテーテル治療もしくは弁形成術で軽減。動脈管維持のため、プロスタグランジン投与は、継続。

体が大きくなった生後1ヶ月以降
DKS手術(肺動脈を切断し大動脈につなげる)
右室肺動脈シャント手術(肺への血流は右心室から肺動脈を人工血管でつなぐ)

心内修復術
房室中隔欠損をふさいで、房室弁を1つにまとめる。

ペースメーカー植え込み術
徐脈が進行した時点で行う。


心内修復術後(おそらく2歳以降)は、正常と同じ循環になり、生命予後や運動能力は正常と変わらないと言ってもらえた。

もちろん、弁狭窄の程度によって、治療方針は変わることはあるし、より重症だった場合は手術ができないこともあるが、今のところは、こういう見解だと伝えられた。


全体の説明を通して質問

質問はありますか?

と言われ、夫が手術の成功確率を聞いた。そうすると、ここで提案している手術は、ほぼ99%成功するものだと伝えられた。(病院としては、成功する確率の低い手術は、ほぼやらないそう)私は、房室ブロックになる可能性は、どのくらいあるのかと尋ねた。循環器の先生は、二十数年勤めている医師が、見た前例では20年間で2,3例しかないため、ほぼ考えにくいと伝えられた。


その上で、先生たちは、妊娠継続しないことを考えているかと尋ねてきた。


私たちはほぼ90%以上、妊娠継続しないことは考えていないと伝えた。
夫は、妻に何かあるのは困るから、妻の体が守れるのなら、産んで育てたいと言っていた。私は、胎動も感じているこの子を殺すことなどできないと思っていたので、100%産む覚悟でいた。イバラの道かもしれない。産んで大変なことのが多いかもしれない。でも、それは、この子が、私たち夫婦を選んでくれたから、きっとそのことに意味がある。私はそう思っていた。


説明後に感じたこと

私たち夫婦は、この説明が終わった後、正直な感想を言い合った。


ホッとしたね。助かるんだね。今の医療ってすごいんだね。


とにかく、この特別な心臓をもった我が子が助かるんだ、生きていけるんだ!そう信じて、希望がもてた日になった。

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