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3君とはなんだったのか

こんにちは。世田谷ボーイズの中野悠平です。
今回は、私が世田谷ボーイズ以外に唯一所属しているバンド「3君」の話をしましょう。

GONGON Recordsに恐れ多くも所属させてもらった3君。
唯一の楽曲「しゅうまい」も、その存在自体も、とても気味が悪いですよね。

どうしてこのようなものが産まれたのか、ここに記録を残します。



しゅうまいができるまで

3君は、2019年に結成されました。

元々「しゅうまい」という曲を完成させるために集められたのです。


メンバー

3君のメンバーを確認してみましょう。

一角
GONGON(ex.B-DASH)
酒井一(画家)
RIKUTO(自営業)
中野悠平(世田谷ボーイズ)

3君のみなさん(上から一角さん、その他のメンバー)

メンバーはこの5人です。

当然GONGONさんのことはメンバー全員が知っていますが、それ以外のメンバーについてはお互いがお互いをまったく知らない状況で結成されました。

それだけでなく、3君にはもっと恐ろしい事実があるのです。

なんと結成のきっかけとなった中心人物であり、唯一の楽曲「しゅうまい」の作詞・作曲者でもある”一角さん”には、現在に至るまでメンバーの誰一人として会ったことがありません。

なぜ、そのような気味の悪い状況が発生してしまったのでしょうか。


3君前夜

GONGONさんは当時、「公式LINE」というもので全国のファンに向けて、近況やお気持ちなどを発信をしていました。

この「公式LINE」には誰もがメッセージを送信できて、その殆どに、いや、おそらく全てにGONGONさんは返信されていたようです。

ある日、そんなGONGONさんの「公式LINE」に1通のメッセージが届きます。

GONGONさんの紹介で僕とバンド組んでくれそうな方いらっしゃいますか?
GONGONさんと一緒にグループを組んでGONGON Recordsから出したいです。
京都在住なのでデータでのやり取りになると思います。
基盤になる曲はこれで、ここから形にしていきたいと思っています。

実際のメッセージ

このメッセージの送信主は”広末”(仮名)。

当時は本名を名乗っていた、のちの”一角さん”です。
我々、下僕であるその他メンバーが、”唯一神”と崇めることになる、あのお方です。

そして、実際にこの広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)からのメッセージに「基盤になる曲」として添付されていたのが、この音源です。

しゅうまい(最初のデモ)

作詞・作曲:広末(仮名)(のちの一角)
(実際の音源)

そうです。
既に完成された「しゅうまい」をお聴きになっている方もいるかも知れませんが、実は「しゅうまい」の作詞・作曲にはGONGONさんは一切関わっていません。
すべては、このB-DASHファンの少年のデモテープから始まりました。

この衝撃のデモテープを受け取ったGONGONさんは、こう思いました。

「🤗笑」

と。

そして、GONGONさんは驚きの行動に出るのです。


3君の産まれた日

広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)に「バンドメンバーを探してほしい」と頼まれたGONGONさんは、なんと本当にメンバーを募る「公式LINE」を送信しました。

「誰かやりましょう笑」

もちろん、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)のデモテープも添えて。

しかし、待てど暮らせど、バンドメンバーは集まりませんでした。
それもそのはずです。
お聴きの通り、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)の楽曲は、あまりにレベルが高い。
素人が簡単に手を出せるものではありません。

そのうち、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)から、GONGONさんに進捗状況を尋ねるメッセージが来ます。
GONGONさんは、知人を召喚することにしました。

GONGON RecordsでPVの制作をしている酒井さん(画家)と、ファンのRIKUTOさん(自営業)です。

2人は快くGONGONさんの提案を受け入れました。

4人集まればもうバンドです。
ついに地獄への扉は開かれたのです。


しゅうまいに命を

広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)の楽曲「しゅうまい」を完成させるためのバンドがついに結成されました。しかし、バンドなのでバンド名が必要になりました。

そしてついた名前が「3君」。

4人なのに「3君」。

とても不気味な響きです。由来は誰も知りません。誰が決めたのかという事実さえ、誰の記憶にも残っていません。呪いの言葉のようです。

バンド名が決まったので、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)の名曲「しゅうまい」に取り掛かることにしました。

しかしハイレベルな楽曲なので、どこから手をつければ良いかわかりません。

そこで、男・GONGONさんが最初に口火を切りました。

「じゃあ、僕がデモを作ってみますね笑」

そうしてGONGONさんは、「しゅうまい」のAメロとBメロにコードをつけ、メロコア風のアレンジを施しました。

実際のGONGONさんのデモテープがこちらです。

しゅうまい(GONGONさんの1stアレンジ)

送られてきたデモは最高でした。

GONGONさんのアレンジにより、キーはハ長調からニ長調になりました。
(ニ長調とはD-Durのことです。)
この声で、このアレンジで、さらにニ長調になってしまったら、もうこれはもはや、足が早くなるボタンを押しているような気持ちになってしまいます。

「もう充分じゃないか」

「これ以上、何を求めるんだ」

「ここでやめておけ」

そんな世間の声が聴こえてくるようでした。


地獄の門を叩く男

2020年1月2日。私、中野は新年早々気になっていました。

数ヶ月ほど前、大好きなGONGONさんの公式LINEで、妙な楽曲と、それを演奏するバンドメンバーを募集する記事が投稿されたのです。

公式LINEでしょっちゅう世田谷ボーイズを紹介していただき、たまにやりとりをするようになっていた私、中野は、ファンであるという枠を越えて生意気にこう思っていました。

「あたしだってGONGONさんとバンドやりてえし」

とはいえ自分で頼むのは恥ずかしい。ならばこの妙な募集に乗っかろう、そう思ったのです。

しかし、募集はすでに数ヶ月前。きっとこの魅力的な募集には応募が殺到しているに違いない...。
そう思っていました。

しかし、今日は1月2日。
勇気を出して踏み出してみよう、いい1年の始まりにしようと、GONGONさんにLINEを送ることにしました。

まずは状況の確認です。

「既読無視されちゃうかも知れないナ。。。」
震える指でLINEを打ち終えると、1分で返事が来ました。

強烈な返信スピードです。
”返信スピードの速さこそ男の根性”と考えている私、中野ですら、恐れおののきました。

返信によると、メンバーは楽曲制作者とGONGONさん以外、2人しか増えていないではありませんか!
しかも、まだ加入の意志すら伝えてないのに、もう参加の確認がとられています。

”スピード契約こそ男の色気”と考えている私、中野は、ひどく感銘を受けました。
そのまま、とんとん拍子で参加が決定します。

私、中野は小躍りしながら、置いてあったモチにバターをたっぷりと塗りつけ、汁粉で一気に流し込みました。
最高の年明けだ。

それが地獄への入口だとも知らずに...。


最初で最後のオフ会

「しゅうまい」は、GONGONさんがデモを作ったところで止まっていました。

私、中野はサビの部分を追加してみようと、ずうずうしくもさっそくGONGONさんのデモに付け足しました。
”納品スピードこそ男の生き様”と思っていた中野は、それよりもお腹が空いたと泣き叫ぶ自らの腹を蹴り飛ばし、大好物のクリームアンパンを食べながら録音に臨みました。

しゅうまい(中野の2ndアレンジ)

本当にクリームアンパンは美味しいなぁ、誰が考えたんだろう?
そしてなによりGONGONさんと音楽を通じて交流できていることに深い喜びを感じていました。

同時に、遠く京都に住む彼の人にも、深い感謝をしました。
「広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)、素晴らしい機会をくれてありがとう。」

しかし、このあとから「しゅうまい」の制作はあまり進まなくなってきました。

根っからのクリエイターである広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)は、「ベソパパイエ」「赤ワイン」など次から次へと新曲のデモを送ってくるので、我々メンバーの技量では追いつけません。

そこで、一度メンバーで直接会ってミーティングをしようじゃないか、という話になりました。

広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)は京都にいて来れないので、GONGONさん・酒井さん・RIKUTOさん・中野の4人で会うことになりました。

オンライン(LINE)でしか交流してなかった4人が、文字通りオフ会で集うことになったのです。場所は目黒のファミリー・レストラン。

このときが最初で最後の集合になってしまいました。

最初で最後のミーテイング

ミーティングでは、主に「広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)の圧倒的な世界観に、我々が追いついていくにはどのような努力が必要か」という内容が議論されました。

結論としては「うまくやりましょう笑」ということになりました。


動き出すしゅうまい

穏やかなミーテイングを終えると、「しゅうまい」は再び動き出しました。

ある日、酒井さんは画家でもありラッパーとしての才能もあるということを見抜いた3君は、”RAP”を「しゅうまい」に加えることを思いつきます。

そのことを酒井さんに伝えるのには勇気が必要でした。

それは、酒井さんから”画家”という上品な称号を奪い、”ラッパー”という怖い称号を掲げて生きていく覚悟を問うものだったからです。

実際にそのことを伝えると、まるで酒井さんではなくなってしまったかのような怖い顔をするかと思いましたが、いつも通りの優しい顔でした。

酒井さんの売りは、その優しい笑顔です。

その瞬間、酒井さんは静かに、”優しい画家”から”優しいラッパー”へと生まれ変わっていったのです。

こうして酒井さんのオリジナルによるメロ&RAPのパートが追加されました。

しゅうまい(酒井さんのRAP追加)

酒井さんのRAPが加わったことにより、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)の「しゅうまい」の世界観が、より一層複雑で難解なものになりました。

その頃から、楽曲制作の疲れから、メンバーの体にも徐々に影響が出てくる危険性が出始めました。

メンバーが痩せ細ってしまうかも知れない...。誰もがそう思いました。

しかし、広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)、GONGONさん、酒井さん、中野の4人は肉付きが良く、食べるのも好きなので心配ありませんでした。

とはいえ、「痩せるかも知れない...。」という不安は4人に常につきまとい、毎日3食しっかりと食べるほどまでに憔悴してしまいます。

ここでついにRIKUTOさんが動き出します。

憔悴しきったメンバーに代わり、もとからスリムなRIKUTOさんは、普段通りガリガリになりながらも「しゅうまい」のアレンジの基礎となる構成を作り上げました。

しゅうまい(RIKUTOさんの3rdアレンジ)

しかし、このデモを仕上げたところでRIKUTOさんはタイへ自分探しの旅へ出かけてしまいました。3君の楽曲制作で、すっかり自分を見失ってしまったのです。

今考えると、RIKUTOさんは辛い食べ物が苦手だったような気がするので、とても心配です。
でも、これを書いてるときはそれから4年も経っているので安心です。

メンバーがすっかり疲弊してしまったので、私、中野は「しゅうまい」をまとめあげることに今後の人生を費やすことに決めました。

本当ならこんなことはせずに、毎日寝たままワイドショーを見て暮らし、食べるときだけ起き、たまに近所のおばさんとゴシップの井戸端会議を開催していたいのです。
それに、私、中野は椎間板ヘルニアなので、パソコンの前に座ると痛くてかわいそうなのです。

しかし私、中野には、”途中から加入してきた半端者”という後ろめたさがありました。

こうして最終アレンジを施し、私、中野は椎間板ヘルニアの治療のために長い療養生活に入ったのです。

しゅうまい(中野の4th最終アレンジ)


そして伝説へ…

アレンジを終え療養生活に入っていた私、中野は、楽曲に歌が入っていないことに気付きます。

しかし、メンバーは相変わらず疲れ切っており、誰一人として「しゅうまい」に目を向けようとしませんでした。

私、中野は、もし自分が体力がないとき、どうすれば元気になるか考えました。

「キッスだな…!」

メンバー一人ひとりに熱いキッスをすることで、みんなの体力が回復することに気付いた私、中野は、全員を蘇らせることに成功します。

そして、アレンジが完成した「しゅうまい」に、全員のボーカルが吹き込まれました。キッス前と、キッス後では、ボーカルの潤いもケタ違いです。ケタ違いに悪いです。

ついに念願の「しゅうまい」が完成しました。しかし、何かが足りません。そう、「プロモーション・ビデオ」です。

我々は、酒井さんが画家であり、ラッパーであり、さらに映像クリエイターであることも見抜いていました。

そこで、こう考えます。
「ノーギャラでやらせよう。」
しかし酒井さんは言います。
「みんなの熱いキッスさえもらえれば充分なのサ…。」

とはいえ世のなかは未だコロナ禍。メンバーが集まって収録をすることは叶いそうにありません。そこでメンバーが各自映像を撮り、それを酒井さんに編集してもらうことになりました。

酒井さんのもとに送られてきた映像は、それはそれはひどいものでした。

  • 強烈なまでの高画質で粘土細工をする自分を撮った広末さん(仮名)(のちの一角さん)(唯一神)

  • 家の近所の小道(ワークマン前)で適当に撮影するGONGONさん

  • 本人よりも可愛い犬が目立っているRIKUTOさん

  • 練習スタジオで撮った無味乾燥な映像の私、中野

しかし酒井さんは、これに「室内なのにコートを着ている寒がりの画家とその帽子」というコンセプトの映像を加え、統一感を出すことに成功します。

天才・鬼才映像クリエイターである酒井さんは、これらの素材をすべて無料ソフトを使って編集し、一つの映像にまとめあげました。

さまざまな葛藤、怒り、苦しみ、悲しみ、うらみ、つらみを生み出しながら駆け抜けた1年。

こうして、3君の「しゅうまい」は完成したのです。

おしまい。


3君・しゅうまい(PV)



あとがき

3君というグループと、楽曲「しゅうまい」について、丁寧な脚色と分厚いオブラートで解説いたしました。

2024年7月、GONGONさんがPVの素材撮影に使っていた「家の近所の小道(ワークマン前)」に、メンバーで会いに行ってきました。

3君は、とてもしあわせなバンドでございました。




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