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野鳥が弱っていて

 勤め先の玄関先で日の暮れかかった16:30頃、地面に向けてフラッシュ撮影をしたかたがいて、何がいるのか聞いてみると、
「ウグイス?かな、弱ってるみたい」と言われ、野鳥が大好きな私は飛び出し、
コンクリートの上にポツンといた小さな鳥はメジロでした。
そっと手のひらに乗せると、冷たくて、昏睡しているように目を閉じ始めました。

手のひらに心臓の鼓動は感じますが、このまま息が止まってしまいそうでした。
外傷はありませんでしたが、弱っていたのです。
びっくりして、かわいそうで、どうしたら助けられるかと思ったら、私は滂沱の涙が止まらなくなりました。

きっともう死んでしまうかも。
末端冷え性の私の手は冷たい上、焦るともっと手が冷たくなるようでした。
温めてあげなきゃ、と思い、冷えていたメジロのからだに、マスク越しに息を吹きかけ、せめて寒くないようにしました。

すると、ほんのりあたたかくなってきて目を開きました。
しばらくすると、飛ぼうとして手から抜け出し、飛んで壁に軽くぶつかってしまいました。
周囲の人に相談し、飛ぼうとしているし、野鳥だから元の場所に戻してあげるといいのでは、と言われました。

でも、まだ元気とは言えないし、寒くて真っ暗な中に置いてきたら今度こそ死んでしまうのでは、そう思うと決心がつかずしばらく手のひらであたためていました。
その反面、連れて帰っても、正確なケアができないし、餌も食べてくれない可能性が高いので死んでしまうだろうと思われました。
一緒に仕事をしていた3人で、もとにいた場所の近くに連れて行きましたが、
今度は暗いのが怖かったようで、私の指をがっちり掴んでいて、暗い中戻すのはとてもかわいそうになりました。

背の低い街灯の脇の、明るさも少しあり、めだたない植え込みの低い木のところに連れて行くと枝にぴょんと飛び乗りました。
でも、飛び立つわけではなく、じっとしていました。

その後の時間はひとりで仕事をしていられる環境だったので、10分おきくらいにメジロの様子を見に行きました。
まんまるにからだをふくらませて、目を閉じて眠っているのか、体力を温存しているように見えます。
私が目の前で見つめていても、逃げたり、目を開けたりしませんでした。

野鳥がこんな環境で眠りだすなんて考えられず、やはり具合が相当悪いのだなと思いました。
何度見に行っても、コロコロに丸くなり、目を閉じています。
飲んでくれないのはわかっていましたが、お水の入った小皿をせめて下に置きました。
かわいそうで、また連れて帰りたくなりました。
でももし、枝に手をのばしたら、夜でよく見えない中おどろかせてしまい、きっとパニックで飛んで行ってしまい、もっと危険に思えました。

仕事を終えて、最後にもう一度様子を見に行きました。
もし、また下にいたりしたら、連れて帰ろうと思っていました。
すると、いなくなっていました。
枯れ草の間や、コンクリート、土の上、あちこち見ましたがいなくて、夜なので全てを探す事もできませんでした。

いなくて、ほっとした気持ちが最初にして、
あとから、心配のほうが大きくなりました。
少しからだを休めてどうにか、めだたないところに行けていたらと願ってやみません。

私はずいぶん、中途半端な救助をしてしまったと後悔しています。
完全に真っ暗になる前に戻してあげたら、どうにか安全な場所に行けたかも知れないのに、と。
辛そうに、寒そうに枝にとまっていた姿が忘れられないです。

野鳥が好きで、メジロは本当に大好きです。
助けたかったのですが、かわいそうな事をしてしまったようで、
どうか生きていてくれいるといいです。


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