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妖刀猫丸 1 🐾毛皮の鞘🐾
その少女の名は早夜といった。伊賀の国の出ではあるが、それ以上はここでは言うことはできない。
小夜は家に帰ると、鞘に細工を施すことを始めた。猫の鳴き声をするのだから、勿論鞘は猫のような毛皮で覆ってみようか…と。
小夜は思案したのであるが、さすがに猫の皮を剥ぐわけにもいかず、村の中で毛皮の調達を試みるのであった。
猟師の家には鹿や兎の毛皮はあるのだが、いまいちしっくりくるものが無く、さらに探していると、村の社に古くから伝わるという、白い毛皮があるとの話を長老から聞くことができた。
さっそく社に行くと、桐の箱に収まった毛皮があるのではあったが、それが何の動物の毛皮なのか、もともと色は白かったのか、謂れはあるのかなどなど何も全く分からないまま、収められているということなのである。
神主は早夜の遠い親戚でもあり、この際、刀の鞘に生まれ変わるのであれば、これも何かの縁…という運びとなり、すんなりと小夜の元に毛皮は譲り受けられ、その夜のうちに見事に刀の鞘として生まれ変わり、早夜の懐に収まるのであった。
白と聞いていた毛並みは、太陽の下と月の下では全く別のものに見え、雨の日、晴れの日でさえまるで虹の光を纏っているかのように、というと大袈裟ではある。厳密に言うと、ちょうど深山にむす、苔のような趣であった。
得体の知れぬ動物の毛皮と、猫の肉球の刃紋、夜な夜なと昼間にも鳴くと噂されるこの刀は小夜丸の元で、少し嬉しそうに妖しく光り続けるのであった。
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