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「モシ」という布のこと

「モシ」=苧麻(ちょま)、からむし

麻の一種ですが、リネンではなくてラミーの方ですね。
苧麻を平織りしたもので、涼しくシャリシャリとした手触りの夏の高級布です。

昔、知り合いの韓国人の家にお邪魔したときに、奥さんがおもむろに白いモシのチマチョゴリを出してきて見せてくれたことがありました。とても涼しげで、清楚で、綺麗でした。高級なモシで仕立ててもらったチマチョゴリをきっと自慢したかったのでしょう。それくらい、白いモシもチマチョゴリは韓国人女性の憧れだったのかもしれません。


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元は韓服を作るための布地ですが、今はチョガッポの材料としてもよく使われます。(昔とは違い、チョガッポを作るために布を購入してわざわざ切って端切れにしてから縫い合わせます。)
たくさんの色がありますし、プリント模様の入っているものや、刺繍が入っているものもあります。

反物の幅は大体30~33cmくらい、反物によって差があります。
天然素材で織られるものなので、繊維の細いものやちょっと粗いのもの、色も反物によって微妙に違ったり、全く揃っていません。

韓国には日本の手芸店のように布が何でも揃っているお店は基本ないので、モシやサンベ(大麻、ヘンプ)を扱う専門店に行けば買うことができますが、店先に置いてあるものは全部中国産です。工場が中国にありそこで生産しているお店が多いのですが、材料の苧麻自体が中国産なのだそうです。


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写真は少しぼけていますが、昔お店で見せたもらった「韓山モシ(ハンサンモシ)」です。(これの色は生成りですが、精錬・漂白をした光沢のある白いほうをイメージされる方が多いかも。)

韓国でモシの産地として一番有名なのは、 忠清南道 舒川郡(ちゅんちょんなむど そちょんぐん)の韓山(はんさん)というところで手作業で織られる「韓山モシ」で、今ではとても貴重な高級布です。
中国産のモシとはまるで別物で、透き通るほど薄く繊細なモシはまるで絹のように柔らかいんですよ。

高級品なので、お店の一番奥の見えないところに1反ずつ木箱に入れられて風呂敷に包まれて保管してあります。苧麻を育てて繊維を細く裂くところから織りあがるまですべてが手作業で、1反が出来上がるまでに膨大な手間と時間がかかります。今では職人のなり手も少なくなってしまって、価格もここ数年でかなり上がっています。偽物まで出回っているそうです。


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ちなみに、先程話の途中にでてきた「サンベ」という布は、大麻(ヘンプ)で織られた布のことですが、モシよりも粗くザラザラしています。
慶尚北道の安東(アンドン)というところで織られる「安東布(アンドンポ)」が有名です。


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モシは布の裏表がないので、チョガッポの作品としては一重で仕立てるのに向いています。間仕切りのようにして飾ると優しく光と風を通してくれます。


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もちろん、裏を付けて合わせ仕立てにしても良いです。
私は小さな端切れももったいなくて捨てられないので、それらを集めて写真のように繋いでコースターやテーブルマットなどを作ることが多いです。

見ていただいて、ありがとうございます!