『藍 風』 風が通り抜ける、山あいに。
みずえさんが「ゆっくりしていって」っていつもの笑顔で言うから、
簡単に打ち合わせだけして帰るつもりだったのに、
ぼくは案内されるままにいちばん奥のテラス席に座った。
目にはやんばるの山々の自然と、透き通る空。
ささやかな葉擦れの音は、吹き抜ける風の仕業。
目を閉じれば、そのまま自然の中に溶けていってしまいそう。
藍風はカフェ&ギャラリーを併設した藍染の工房。
やんばるで育った琉球藍の葉から泥藍を作り、丁寧に藍染めしている。
手をそのまま藍染の液体に入れたとき、
全身が粟立つのを感じた。
それは、ふつふつとした「生命の情報」とでもいうような
自然のエネルギーだったのではないかと思う。
それから1週間ほどぼくの手は青く染まっていて、
マニュキュアのようで気恥ずかしくもあったけれど、
消えてしまうときには、少し寂しかった。
いつのまにかたっぷり時間が経っていて、
少し日が傾きはじめている。
自然の中で心を開き、体を委ね、
ゆったりとした時間を過ごすことの豊かさを、
この場所は思い出させてくれる。
藍風
本部町伊豆味3417-6
tel. 0980-47-5583
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