化学療法治療 【治療の流れと初期の副作用編】

化学療法治療というのがいわゆる抗がん剤治療になる。治療前にまず化学療法治療患者専用の採血室で採血をし、診察。診察後に抗がん剤が調剤されるのでそこから1時間程してから点滴、というのが治療の流れ。

治療開始前に化学療法治療日記というものを貰う。そこに検温や血圧、副作用などを毎日記入していくのだが、その日記を窓口で提出してから呼ばれるのを待つ。調剤の時間があるので結構待たされる。
病棟はベッドが幾つかあり、高齢で足が不自由な方や終末期の人はそこで点滴を受けるようだ。

私が治療を受けるのは自力歩行が可能で、介護を必要としない、リクライニング出来るチェアーユニットで、同じような診療台が部屋に8台程ある。
1台1台にカーテンで仕切りが出来るようになっていて、そこではテレビを見たり、飲食をしたり、好きにして過ごすことが出来る。
点滴が終わるまで3時間かかるので、事前に暇潰しに何か持ち込むことを推奨されていた。

チェアに座るとまず副作用を抑える薬を数種類飲む。そこから生理食塩水、アレルギーを抑えるステロイド、そこからパクリタキセル、アバスチンの順番で点滴していく。
点滴には患者IDが記されてるので、交換前に必ず復唱と診察券との照らし合わせをして確認する。

点滴は癌の部位と逆の左腕にするのだが、痛みはほとんどない。いよいよパクリタキセルの静注となるときだけ両手足にミトンのようなものを装着される。冷却用のアイスノンのようなもので、冷やすことで痺れを予防するのだそうだ。
しかし、これを着けた途端に左腕に激痛が走る。
痛みで涙が出て、我慢出来ないのでナースコールでミトンを外して貰ったら痛みは無くなった。
中にアルコールが含まれているせいか、静注が始まってしばらくすると眠気が襲ってくる。

眠気も強いが点滴の量が多いせいからか、とにかくトイレの回数が多くなる。トイレには自力で行けるのだが、一応看護士が付き添ってくれる。

アバスチンの静注が終わればその日の治療は終わり。
化学療法治療だけで3時間。その前の採血や診察を合わせるとほぼ1日がかりになる。これを毎週3週間続け、1週休みを入れる。これが1クールとなる。


私の癌のタイプは抗がん剤が非常に効きやすいことと、私自身が薬の効きが良く、抗体も付きやすいので副作用も効果もどちらも出やすいとは言われている。当日は特に何の変化も感じなかったが、翌日になって右の腫瘍部分の腫れと痛みが激的に引いた。
腫れ上がって皮膚が裂けてただれていたのに、表面の弾力が戻ってきてた。たった1度でこんなにも効果が現れるものなのかと驚く。久しぶりに痛みを気にせずに着替えることが出来て、右腕も上がるし使えるのが嬉しくて、ゴミ出しや買い物に出掛けたりもした。

しかし、その翌日から全身の関節と筋肉の痛みが強くなり始めた。副作用が出始めたのだ。全身を強く打ったような痛みで、丸くなったり、陣痛のときの呼吸法を思い出して痛みを逃して凌ぐ。喉だけが異様に乾くので2リットルのお茶がすぐに空になる。食欲は湧かない。2月26日から体重は12kg減。眉とまつ毛が抜け落ちて来てまばらになり、息子からいよいよ重病人らしく見えてきたと言われた。

一週間後。化学療法治療二回目

二回目。顔色も良く、血圧はやや低めで体重も下げ止まっているけど健康状態は良好とのこと。腫瘍部分の腫れと痛みが治まった、と訴えると診察になった。医師も驚くほどの効き目でその分副作用も大変だろうけど、かなり出だしは好調だそうだ。

人手不足で患者だけが多く、予約時間から2時間近く待つことになった。その間、医療相談窓口に現状の生活を訴えて相談をしにいったのだが、やはり生活保護を強く勧められた。保護受給は一般的に知られてる条件の他に特殊な例があるのだという。ひとつは私のような要看護認定と期間が定められているパターンで、期間限定の医療保護という形の適応例が実際にあるのだそうだ。もうひとつはよく言われる世帯分離。どちらも正当な手段で、法に詳しい人と申請をするといい、と役所の管轄になるという結論で話を終えた。


今回は抗がん剤はパクリタキセルのみ。
副作用を抑える薬を飲み、生理食塩水→ステロイド→水→生理食塩水+パクリタキセル→水 の順番で約1時間半で終了した。アバスチンは次回から最後に60分投与される。

このアバスチンの保険点数が異様に高い。
私の受けてる治療は全て保険適応範囲だし、癌治療の殆どは保険の範囲だ。それでもこのアバスチンだけで24000点もの点数が加算される。3割負担で8万近くになるのだ。アバスチン投与が無ければ1万円もかからない。処方箋と合わせても6000円内で済む。

高額医療限度額認定証はどの保険でも取得出来るので、当面はそれで凌ぐことになるが、一家の生活を担う人間が働けなくなった場合、その認定額を支払うのも馬鹿にならない。日本人の生活病とも言われる程の死因のトップとなっている癌の保険の必要性を強く感じている。


話を治療に戻すと、このパクリタキセルは無茶苦茶眠くなる。アルコールが含まれているせいらしいが、私は点滴後は酔いが回ってややへべれけ状態、のようになる。自分ではしっかりしてるつもりでも歩き出したらふらついて転倒してしまう。
転倒すると直ぐに数名の看護士が来て、搬送され、別室で暫く休むことになった。2時間弱眠ってから帰宅。

点滴中は飲食も出来るし、好きに過ごすことが可能。しかし、病棟内を撮影することは禁じられていて、撮影したい時はものを中心にし、撮影したものをチェックして貰う必要がある。私は大体眠くなるまでは映画を観て過ごしている。
「ホビット」「ロード・オブ・ザ・リング」のような痛快で力強い作品に傾向が偏っていて、これらの作品は繰り返し観ることになるだろう。
本来、好きなイーストウッド作品はなるべく避けてる。「許されざる者」を観ながら寝落ちしたときに悲しい夢を見てしまって、それ以降避けるようになった。大好きなんだが…時期を選ばざるを得ない。


抗がん剤治療、化学療法治療は確かに副作用は辛い。2日後くらいから出始めて数日続くし、そのうち心機能や肝機能、血液にも影響が出てくる。回数を重ねるごとに重くなる。それが8月の末まで毎週続く。今は眉毛とまつ毛が全てなくなってるので、そろそろ髪もゴッソリ抜け落ちるだろう。

副作用のみならず毎週の医療費も馬鹿にならない。この金銭的な不安が治療を妨げている事実を社会問題として、もっと大きく取り上げてもいいのではないだろうか。


それでも治療さえ受けることが出来れば、副作用の辛さの対価として、何をどうやっても治まることがなかった癌の痛みは劇的に治まる。まだまだ怖がられていて偏見の強い抗がん剤と治療、病に関して当事者から事実を伝えていけたらいいな、と思ってる。

最後に。
痛みや副作用で不安になるたびに思い出すのが

『絶望とはリアル。リアルなしでは希望は生まれない』

という言葉。希望を生み出すために絶望を生きよう、リアルを生きなければ生まれいずるものではないのだ、と今は強く思う。

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