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色が白くて、睫毛が長かった。

久しぶりに小田急に揺られている。わたしは高校1年のころから大学3年途中まで、毎日この電車に乗っていた。
鎌倉の辺鄙な山奥からバスにのって、藤沢にでて、小田急江ノ島線で町田まで。30分ほどかかるけれど、始発駅であることもあって、ちゃんと計算して駅に着けば座れる。

高校生のころ、毎朝7時31分発の急行の一両目に乗っていたが、いつもギリギリに滑り込んでくる男子高生がいた。その人の顔面がタイプすぎて、いつもどこかで気にしていた。

制服は東海大相模。
試験期間に開いていた教科書はひと学年上。
一時期からベースを持つようになった。
(元来作家肌に弱いわたしは気になった。)
たまに途中駅から友達が乗り込んでくる。
そうすると当たり前だけど会話が聞こえる。

別に惚れ込んでいたわけでもないけれど、毎朝気にはしていた。しかしある時からみなくなった。

一両目は、女性専用車になってしまったのだ。しょうがないことだけれども、ひとつの環境の変化が与える影響は甚大だということをその時に身をもって知った気がする。
喪失された可能性の量と、そこから生まれた新たな出会いとが必ずどこかにある。

(その3年後、彼はわたしがバイトをしていた駅前のサブウェイに彼女と一緒にくることになる。)

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