ガチなコンクールに出て思ったこと

11月に地区予選通過したコンクールの全国大会は本来なら3月に開催予定だったが、コロナ禍で7月に延期になってしまった。

というのがわかったのが2020年末で、次の全国大会までモチベーション維持ができるのか心配だったので、違うコンクールを受けてみようと思い立った。

そのコンクールではカルチャー(音大等で専門教育を受けてない人)とスター(専門教育を受けている人)に分かれていて、私はカルチャー部門でエントリーした。

予選は動画審査だった。動画審査は初めてだったから、よくわからないままとりあえず自宅のアップライトピアノで弾いてiPhoneで撮影して提出。
本当はきちんとスタジオとかでグランドピアノで弾いて撮影すべきだったかな…とあとから思ったけど、まあ大丈夫だろうと思った。

そして、予選は通過できた。通過率は発表されてないが、受付番号で大体の応募人数がわかり、ピアノ部門で通過したのはだいたい40%ほどのようだった。
今年はコロナの影響か応募数が例年より多く、レベルも高かったとのこと。
予選なんて大体通過するんだろ、と思ってたら余裕ではなかったのかも…と、通過できて単純に嬉しかった。

そして、先日、ついに本選の日がやってきた。平日だったので仕事も休み(年度末でクッソ忙しい時期に…)、子どもたちも無事に預けることができ、自分の体調も万全な状態で臨んだ。連日仕事が忙しく、本選前の2日間はピアノに1秒も触れることができなかったが、当日取り戻せば大丈夫だとあまり気にしなかった。

11月に受けた別のコンクールの地区予選のときはとにかくテンポが速くなりすぎ、焦ってる感じが全面に出た演奏だったので、今回はとにかく速くならないこと、弾いてる最中に音をきちんと聴くことを心がけようと決めていた。

会場に到着したときには、大学生のスター部門の演奏がロビーに聞こえていた。知らない曲だったけど明らかにレベルが高いことはわかる。もしかして、私はガチなコンクールに来てしまったのかと少し不安になった。

この不安は的中することになる。

『一般』のカルチャー部門の演奏が始まった。先生からは「前の人の演奏は聞かないほうがいいですよ」と言われていたが、舞台袖で待っているのでどうしても聞こえてしまう。前の人は私の知らない曲を弾いていたけど、ミスタッチなんてほぼしていないだろうし、間の取り方、カデンツァも美しく音色が綺麗に響いていた。明らかにハイレベルで自分がこんな素晴らしい演奏ができる気がせずに不安になった。きっとこの人は優勝候補なのだ・・・と思うことにした。

自分の番が来た。客席には審査員しかいなかった。舞台袖から出ていくと、エントリー番号だけ呼ばれ、一礼。
椅子の高さの調整も焦らず、座ってから一度膝に手を置き深呼吸してから弾き始めた。

そして…音が、違う!舞台袖で聞いていた音と違いすぎる。音を聴きたいと思っても全然響いて聞こえてこないし、強い音、弱い音の調節ができているのか判断がつかない。聴こう聴こうとしても音がよく聞こえない。
小さなミスはたくさんあったものの、「うまく弾けている!」と思う瞬間もあったのだが、中盤に大きなミスをしてしまう。左手がパッと消えてわからなくなった。そのフレーズは右手だけ弾いて次に進んだ。ああ、これはもうダメだ…と思ったけど、最後まで諦めずに弾き切った。

次の人の演奏も聞こえてきて、明らかに私とレベルが違った。私は予選を通過したのだから、ここにいる権利はあるのだけど、あまりにひどい演奏で場違いだったのが恥ずかしくて早く会場を後にしたかった。子どものお迎えもあったので結果は聞かずにそそくさと会場をあとにした。

そして結果がホームページに掲載され、もちろん私は落選。わかってはいたけど、結果がはっきりするとやっぱり悔しかった。どうしてあんな大きなミスをしてしまったのだろう・・・あのミスさえなければ奨励賞くらいはとれたのかも?
ちなみに私の前の人は入賞はしたけど、最高位ではなかった。あのレベルでも1位ではないのか…ミスタッチなんてしてたら入選は無理なのだとこのコンクールのレベルを思い知った。

後日、レッスンで先生にコンクールの模様を報告すると、そもそも入賞を狙うならベートーヴェンやショパンは選ばない、熱情は有名すぎるし音の粒を揃えないと目立つと。音の粒云々は一朝一夕でできるものではなく、音大生でも難しい曲、と言われた。

もともと、コンクールに出場した理由は「人前で弾きたい」ということだったので、熱情で出たいと押し切った(先生は違う曲を薦めたが)。が、いざ出場してみると欲が出てしまい、本選(全国大会)で入賞したいという気持ちが出てきた。
もちろんピアノの演奏の良し悪しというのはコンクールの賞だけで決まるものではないけど、私のようなアマチュアが客観的に「認めてもらう」なら、コンクールの入賞が一番わかりやすい。

そして本番はどうしても緊張する。11月の本番では自分でも驚くほどに緊張してしまい、その緊張に戸惑って演奏が極端に速くなり、ミスを連発してボロボロになった。だから、今回は緊張しない方法を考えるのはもうやめて、緊張するのは仕方がないと受け入れた。すると前回よりは落ち着いて演奏できたし、あとで聞いてみても焦っている感じにはならなかったと思う。そこは成長した。落選したけど、得るものはあった。

7月の全国大会はまた結局熱情で出場することにしている。だから先生の話からすると入賞は難しいのかもしれないけど、せめて大きなミスはしないで演奏したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?