ストロークスについて

The Strokesはニューヨーク出身のバンドでしゅ.単にニューヨーク出身なだけでなく,メンバーのほとんどが富裕層出身の,おおよそRockとはかけ離れていると思われるバックグラウンドを持っている.実際曲も,汗水染み付いたシャツのような労働階級の不満のこもったrockではなく,いろんなものがそぎ落とされたクールな,どこか寂しささえ感じられるrockである.曲がいいのは2000年代最高のアルバムに選ばれていることからも確かだが,私はその歌詞にもすごく魅力を感じる.パッと見ると女性関係のことを書いてるように見えるが,半分ぐらいの部分が抽象的な表現になっていて,自分達の恵まれた環境から出た寂しさを叫んでいるように思える.金持ちが自分の苦しみを発露したところで素直に理解してくれるような世の中ではない.きっとThe Strokesは,そんな自分達の悩みをクールな音楽に乗せて,なんてことないように,でも誰かわかってくれないかと世の中に向けて叫んでいるのだ.だから曲を聴くと,どんな人にも苦しみは平等なんだと元気になれる.とりあえず私の好きな歌詞を紹介する.

Last Nite

全体的な歌詞の内容は女性に振られて店を出て行って愚痴るというものなのだが,以下の部分とかは,そんな同情を得やすい問題を蓑にして差し込んだ心の底からの愚痴に思える.

And say, people, they don't understand
Your girlfriends, they can't understand
Your grandsons, they won't understand
On top of this, I ain't ever gonna understand

世の中の誰も理解してくれないし,なんなら俺だって理解できない.
裕福な人も貧乏な人も辛い思いを抱えてるけど,そんな感情を理解して心から同情してくれるやつなんていないし,自分だってなんでこんな辛い思いをしてまでいきているのかわからない.自分の不幸の原因を求めるのも,それへの慰めを求めるのも結局一時的な救いを求めてるだけで,解決なんてしないんだ,だから悩むだけ無駄だと言い聞かせてくれるようで,この曲を聴くと元気になれる.それと余談として,ストロークスは絶対PVは作りたくないと言ってたが,売れすぎたのでライブ形式でならとLast NiteのPVを作った.マイクスタンドを投げたり録音マイク?をぶっ倒したりのやりたい放題感を見るのも元気が出る.

Whatever Happend

2ndアルバムのRoom On Fireの1つめの曲.これも同じく,女性に振られて何もかも嫌になったみたいな曲だ.でも,規則的なイントロの後に待ち受ける次の一言は,世の中全てに嫌気がさしたことを純度100%で伝える破壊力を持っている.

I wanna be forgotten
And I don't want to be reminded

世の中はSNS全盛期で,ネット上は僅かな自己承認欲求を得るための,雑なテキストに溢れている.誰もが賞賛を得るために行動し,自分のコミュニティでの優位性を実感するために生きているように思える.この一言は,自分はそんなものを得るために音楽をやってるんじゃない,誰もがなんの先入観も持たず,自分を見て欲しいという叫びのように感じられる.常に絶対的な評価と自分の信じる物だけを拠り所にして,変な賞賛に溺れないようにしようと思える一文.

You Only Live Once

The Strokesが大きく音楽性を転換した3rdアルバムの1曲目.レジェンド的評価を得ていたクール感溢れる1, 2作目を大きく脱して,感情的側面が歌詞面だけでなく音楽面にも大きく出たようにも感じられる.

Some people think they're always right
Others are quiet and uptight
Others, they seem so very nice-nice-nice-nice, oh
Inside they might feel sad and wrong, oh no
Twenty-nine different attributes
Only seven that you like, oh
Twenty ways to see the world, oh
Twenty ways to start a fight, oh

いくらかの人は自分が絶対正しいと思っていて,他の人はただ黙ってたり,表面では最高という風に見えながら間違ってるのではと感じている.人間全員とは仲良くなれないし,見てる方向は全員違うというような歌詞.
昔はいろんな人と解り合えなければいけないし,それができないなら世の中で生きていくの失格みたいに思っていたが,他人なんて結局合うかどうか,そして世の中もいうやつ言わない奴がいるだけなんだと,いろんな理不尽を諦められるようになった.心を広く持ちたいときによくきく.

最後に

世の中,自分は辛いですって言おうとすると,四方八方から罵倒が飛んでくる.自分は貧乏ですと言おうとすると,プレハブ小屋に住んだことあるのか?片親の気持ちわかるのか?と言われそうになったりするし,逆に経営辛いと言っても,そんなことできる時点で恵まれてるとか足の裏を突かれる.そんな中,The Strokesは,超富裕層であるにも関わらず,自分達の悩みを,女性の悩みのようなどこにでもありそうな?ことの裏に隠してぶちまけた(本当にそうなのかは知らない).だからきいていると,色んな悩みによる辛さは平等だと思えるし,自分の立場による感情を絶対的な尺度で受け取れるようになる.乾ききったような音の中に,色んな複雑な感情が濃縮されている,本当に最高なバンドです,と私は勝手に想像している.

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