フリーランス薬剤師レポート~時間・場所・人に縛られるのをやめた特別有能でもない薬剤師の一例~



 はじめに
目に留めていただきありがとうございます。おおくぼみおです。約2年「フリーランス薬剤師」をしておりました。薬剤師の業界ではまだ珍しい働き方です。大多数の薬剤師の方は通常の働き方で基本的には満足しているかとは思いますが、多様性の時代でもあるので、今の働き方に不自由を感じている薬剤師に新しい選択肢として加えていただけたらと思い体験談をnoteに書いてみることにしました。あくまでも個人的な感想を述べています。他にも色々な考え方があるかもしれませんが、こういう考え方もあるのか、という気持ちで見ていただければ幸いです。


Contents

1. フリーランス薬剤師って何?
2. 薬剤師の一般的な働き方
3. なぜフリーランス薬剤師は普及しないか?
4. 私がフリーランス薬剤師を始めた理由
5. フリーランス薬剤師のメリット
6. フリーランスはこんな人に向いている!
7. フリーランス薬剤師はいいことばかりじゃないぞ!
8. それでもやってみたいと思ったら?
9. フリーランス薬剤師の今後


1.フリーランス薬剤師って何?

冒頭でもふれたように、フリーランス薬剤師という働き方はまだ珍しい働き方です。研修会や交流会などで同業者の方と名刺交換する際に「フリーランス薬剤師をしています。」と紹介すると、皆ピンとこない。毎回詳しい説明を求められます。フリーランス薬剤師とはいったい何なのか?

フリーランス薬剤師とは、誰かに雇われず、所属せず、自分の意志で仕事を受けるスタイルの薬剤師です。

薬についてのコラムなど書いたりする薬剤師もフリーランス薬剤師です。私の場合はそういった医療ライターではなく、依頼が来た薬局に出向いて薬局薬剤師業務を行っていました。

フリーランスという働き方は、クリエイティブな職種の場合、そう珍しいものではありません。ですが薬剤師はフリーランスという働き方はあまり普及していないようです。ではフリーランス薬剤師が定着していない背景を見ていきたいと思います。


2.薬剤師の一般的な働き方

まず、薬剤師の一般的な働き方をざっくり整理すると、

薬剤師の勤務先は主に、

病院
調剤薬局
ドラッグストア
企業
行政(公務員)

その中でも薬剤師と言えば調剤薬局で勤務する薬剤師がまず頭に浮かぶのではないでしょうか。

また、薬剤師の勤務形態としては、

正社員
非常勤(パート・アルバイト)
派遣社員
経営者(調剤薬局、コンサルティングなど)

などがあります。


3.なぜフリーランス薬剤師は普及しないか?

勤務先として最も多い調剤薬局勤務の薬剤師を中心にいくつか考えてみました。


その1: 正社員の需要が多く、希望する人も多い
薬剤師が不在だと薬局の営業ができない、1つの薬局に必ず管理薬剤師を置かなくてはいけない、というような法律上の理由から雇う側としては主に正社員を必要とし、囲い込みしたいと思われます。特に地方の人手不足は深刻です。
まだ売り手市場のため、それなりに給料をもらえます。薬剤師は安定志向の人が多いようで、正社員として普通に働いていれば安定しているので、わざわざフリーランスになる必要がありません。

その2:パート勤務も高需要、高時給
正社員を抱えるより人件費が抑えられ、忙しい時間帯だけでも勤務してくれると助かるのでこちらも需要があります。薬剤師パートの時給は一般的なパート勤務の2~3倍。わざわざフリーランスになる必要がありません。

その3:派遣という働き方が普及している
継続的に雇用されるような働き方が合わない薬剤師にも適した場所が整っています。色々縛られるのが嫌だという薬剤師向き。好きな場所、好きな期間、希望の報酬、条件が合致するところを派遣会社から紹介してもらえます。就業先を自分で探したり交渉したりしなくて済むので、わざわざフリーランスになる必要がありません。

その4: 独立の先は薬局経営が王道
薬剤師が独立するといったら薬局経営にたどり着きます。自分の城を持ったのだから、わざわざフリーランスになる必要がありません。

その5:そもそもフリーランス薬剤師という働き方は選択肢に入っていない
フリーランス薬剤師という働き方があることを多くの薬剤師が知りません。私も知りませんでした。というか、なってから知りました・・・。


こんな感じで理由を考えてみましたが、フリーランス薬剤師が普及しない一番の理由は、そもそも選択肢に入ってないからかな、と思っています。正社員・パート・派遣・経営者のいずれかで事足りる場合が多く、また、なんとなく合わないと思っても決められた枠に収まろうとするのかもしれません。私も枠から出るつもりはなかったのですが・・気が付いたらはみ出ていました。フリーランス薬剤師という働き方があるならやってみたい、という人がもしかしたらいるかもしれない、と密かに期待して書き進めております。


4.私がフリーランス薬剤師を始めた理由

なぜ私がフリーランス薬剤師になったかをお話ししていきたいと思います。

職歴について触れます。

薬学部(当時4年制)を卒業後、

地元の病院 5年弱
ショッピングモール内のOTC売場&調剤薬局(全国に店舗あり) 4年
ドラッグストア内にある調剤薬局(地元企業) 1年
上京し漢方薬局 7か月 
地元にUターンし調剤薬局(新規立上げ) 2年半 
2017年6月法人設立ししばらくは複数の薬局でアルバイト
2018年4月からフリーランス薬剤師
2020年2月 フリーランス薬剤師終了


新卒で入って割とすぐの頃から独立を意識し始めました。そのうち気が変わるかもしれないし、とりあえず色んな所で働いてみたい、ということで様々な規模や業態のところで働いてみました。どの職場も楽しかったけど、結局独立したい気持ちは変わらず、気の向くまま自分一人だけの会社を設立しました。

これといってやりたいこともなく、見切り発車もいいところでしたが、勤務薬剤師時代に、こんなサービスがあったらいいなと感じたことを自分が提供する側になれないか、と思いつきました。

あまり忙しくない薬局で一人薬剤師をしていた時のことです。休みは多いし残業もほとんどなく、一人薬剤師は気楽で最高だったのですが、自分しか薬剤師がいないから用事があっても休めない(薬剤師がいないと薬局の営業ができないため)。必要な時だけスポットで来てくれる薬剤師はいないだろうか。また、薬剤師が複数いる薬局でも急に薬剤師が必要な時があるのではないだろうか、とふと思っていたのでした。

しかし周りでそのような事をしている薬剤師を見たことがなかったため、思い付きでやって法律上何か問題があったらまずいと思ってなかなか踏み出せず、会社は開店休業状態。とりあえず、複数の薬局でアルバイトして過ごしていました。


そうこうしているうちに、会社の通帳の預金残高がだんだん減っていき、いよいよ本気でやらなくてはいけなくなり、法律上問題ないか、どういった運営の仕方をしていけば良いのかを専門家に相談し、事業としてやっていくことになりました。

その事業内容は、派遣会社を介さず直接交渉し、必要時に依頼を受けて薬局薬剤師業務を行うというものです。法人または個人事業主と業務委託契約を結ぶことになります。
自分の契約したい薬局と契約し、自分が行けるとき仕事を受ける、というスタイルです。


無我夢中で事業を始め、少し余裕が出てきた頃に、これってフリーランスってやつではないかということに気が付きました。自分が行きたい方向に向かっていたら自然にたどり着いたという感じです。

では次に、実際やってみて良かったと感じたことをお伝えしていきます。


5.フリーランス薬剤師のメリット

フリーランス薬剤師をして良かったことは、自分の裁量で何でもできるということです。自分が手伝いたいと思うような薬局と契約し、契約期間や料金も自分で設定できます。週に何時間という決まりもなく、自分で調節可能です。自分次第で正社員より稼ぐことも可能です。


6.フリーランスはこんな人に向いている!

自分がフリーランス薬剤師と気づいたのは、この支援業務を始めて3か月くらい経った頃でした。そして、世の中に同じような事をしている薬剤師がいないだろうかと思い探したところ、何人かのフリーランス薬剤師とつながっていきました。そんな方々を見ていて、フリーランス薬剤師はこんな人に向いていると思ったのは


自分で考え、行動し、責任を持てる→つまり、自立している


課題解決のために使命を持って取り組んでいる


私の場合は、他人に自分の人生を振り回されるぐらいなら多少大変でも自分のことだけはちゃんと責任を負って自由に生きたいと思っただけなのであまり偉そうなことを言えませんが・・・。

単に今の仕事が嫌だとかもっと自由に働きたいだけだったら続かないかもしれません。
フリーランス薬剤師はメリットがありますがいいことばかりではありません。


7.フリーランス薬剤師はいいことばかりじゃないぞ!

フリーランス薬剤師はデメリットもあります。

全てを自分で決めないといけません。

メインの業務以外の周辺業務も自分で行わないといけないので、何かとエネルギーを使います。フリーランス薬剤師は一見自由なようでいて全て自分次第です。


8.それでもやってみたいと思ったら?

やってみたいと思ったら行動あるのみ、とりあえずやってみて、やはり前の方が良い、と思ったら戻ればいいです。

やる気さえあればすぐに始めることができます。個人で賠償保険に入っておくことと、契約書は専門家にリーガルチェックしてもらうことを忘れずに。


9.フリーランス薬剤師の今後

フリーランス薬剤師は今後も急増することはないと思いますが、自由な働き方の一つとして選択する人が出てくるのではと思っています。興味はあるけど何から手をつけていいかわからない、という薬剤師のために今後詳細を発信していきたいと思います。


また、フリーランス薬剤師終了後、保険調剤を行わない薬局を開局しました。これもまた見切り発車ですが、開局体験記やお金をなるべくかけない方法、お役立ち情報などを伝えていきたいと思います。

フリーランス薬剤師普及活動に役立てたいと思いますので、参考になった、続編を期待、などの場合はサポートよろしくお願いします