VRChat上で自作のリズムゲーム大会を運営した
概要
6月20日、私が制作したリズムゲームワールド「Resonark」の大会を行いました。
大会の形式は、予選として指定された1曲のスコアアタックを行い、上位8名に本選である大会に出場してもらうというものです。
結果的に、出場の応募は20件近く、VRChatの中継をするワールド(40名が上限で、20名を超えると満員と判断される仕様)は満員になったらしく、
Youtube上の累計視聴回数は200回に届こうとしています。
今回の記事では、アーカイブ映像を掲載した上で、大会がはじまるきっかけときっかけと企画、大会準備、大会の実行、イベントを終えた所感を書いていこうと思います。
アーカイブ映像
きっかけと企画
・リズムゲームの大会への意識
リズムゲームを作っている上で、やはり意識を向けてしまうのは某K社のアーケードリズムゲーム大会です。
特に、とある機種の大会の決勝では、試合を行う2人が初見で新曲を遊ぶことになります。
新曲には高い確率で特殊な演出が発生するような仕込みがされており、プレイヤーや観客を驚かせます。
Resonarkをリリースしてから数週間後くらいに、私と楽曲提供をしてくれた方で(雑談的な感じで)大会をやって決勝で特殊演出を挟めたらおもしろいね、という話をしたことを覚えています。
・VRChatの他ワールドの動向
VRChatのスポーツ的なゲーム「某EKO PEKO BATTLE」では、大会を皮切りに
競技人口が増えた感じがあります。
(あくまで印象です。正確なデータはとっていません)
また、大会では特殊なルールのもと試合が行われているようで、
傍から見ていると「同じワールドを使っているにも関わらず、新しい遊びを作っている」ように思えます。
競技人口が増えるかや、新しい遊びができるかはともかく、大会を行うと
ワールド(もしくは制作者、プレイヤーなど)になにか変化が起きるのではないかという期待がありました。
・ワールドの変化を考える
Resonarkをリリースして時が経つにつれて、曲も増えてきたし大会をするか!というモチベーションが高まってきました。
前の項目で書いた「変化」は漠然と期待するだけでは仕方ないので、ある程度大会の目的や流れをつくってみることにしました。
大会の目的として、上手なプレイヤーの方に目立ってもらう(→本選や決勝に注目してもらう)こと、プレイヤー同士で交流してもらうことを念頭に置きました。
大会では、次のような流れが実現できればいいなと思っていました。
多くの人に大会に参加してもらう → 本選や決勝に注目してもらう
* 多くの人に大会に参加してもらう
まず、本選や決勝に注目してほしいにも、注目してもらうには「ゲームに対する強い興味」や「大会(もしくはゲーム)に参加している意識」が必要だと思われます。
「ゲームに対する強い興味」に関しては、大会に特化した施策をやるというより、日ごろからコンテンツの魅力を上げていくことで対処すべきだと判断したので、ここではあまり触れません。
「大会(もしくはゲーム)に参加している意識」の方に関して、大会の敷居を低くして参加を促すために以下の2つのことを行いました。
・ワールドに簡単なルールを書いたポスターを設置する
・参加賞をつける
Resonarkワールドの目につく場所に「000 [Nightmare] (課題楽曲のこと) のスコアアタックを行う」「エントリーすると参加賞がもらえる」のような簡単な予選ルールを書いたポスター(上の画像)を設置することで、入口を作りました。
楽曲を遊んだ流れで応募するという導線ができたのではないかと思われます(こちらに関してはアクセス解析など入れられなかったので成功したかがハッキリとはわかりません)
この導線を使った上で、当時Boothで300円相当で頒布されていたバッジの亜種が手に入るという参加賞を設けることで、大会への参加を促しました。
* 本選や決勝に注目してもらう
本選や決勝に注目してもらうことで「上手なプレイヤーの方が目立つ場」を作ります。
まず、本選全体のルールを作ることにしました。
勝敗判定としては、観戦する方も簡単にわかるように「ゲーム画面に表示されるスコア」を指標として用いることに。
遊ぶ楽曲の選択は、参加するプレイヤーにある程度任せ、予選で使った曲を除く、すべての曲の最高難易度を自由に選んでよいことにしました。
これにより、相手が驚きそうな曲を選ぶ、複雑な曲を選んで事故を誘発させるといった、大会ならではの戦略が取れるようになります。
選曲から、参加する選手の方の一面を知ることもできるので、主催側から課題楽曲を与える形などといった、ほかに思いついた方式よりも、こちらの方式の方がよさそうと判断できました。
次に、注目してもらえるような決勝とはどのようなものか考えました。
そこで、最初の方に述べたアーケードリズムゲームの大会を思い出しました。
その大会では、決勝のみ特別な演出が発生し、いままでプレイしたことのない楽曲を決勝出場者がプレイする方式がとられています。
今回企画する大会でも、初見で曲を遊んでもらった方が話題性もある(大会を見る動機になる)といった判断で新曲を初見でプレイしてもらうことにしました。
大会に注目してもらうには、気軽に大会の様子を見られるような環境も必要です。Youtube Liveで中継することを決めました。
そして、目的のひとつ「プレイヤー同士で交流してもらう」ことを達成するために、大会の様子を見るためのワールドを作り、(Friend+で開いておき)当日VRChatでそこに行けば観戦ができるようにしました。
・準備段階へ
こうして、大会を行いたいという思いと企画が揃ったので、実際に準備に移っていくことになります。
大会の準備
早速準備に取り掛かりたいところですが、大会を運営するためのリソース(ここでは大会を行うワールドや決勝楽曲)がないことには、無を準備してプレイすることになります。
この節では、リソースの確保、スタッフの募集、大会に向けた準備、配信の設定の順番で解説していきます。
・リソースの確保
リソースとして必要なものは、以下のものが想定されます。
・決勝で遊ぶ2曲
・決勝ワールド
・観戦ワールド
* 決勝で遊ぶ2曲
大会のルール上、1試合2曲で進行していたので、決勝も2曲でいこうかなという想定になっていました。
前々からNoshiさんに書下ろしの楽曲「Recollexion」をお願いしており、大会の企画段階でまだ未発表だったものがありました。そのため1曲をNoshiさんの楽曲にすることを決めました。
もう1曲をyuugen6さんにお願いしました。OKをいただいたので、決勝の2曲が揃うことに。
* 決勝ワールド
↑決勝ワールドの画像です
決勝なので「普段とは違うResonarkで、ラスボス感がある」といった設計をしたいと思いました。
そこで、某DJシミュレーションゲームを参考に、1曲目をEXTRAの隠し曲、続く2曲目をONE MORE EXTRAの隠し曲と見立てました(話が分からない人は 10th style one more extraとかで検索してください)
上記の見立てに沿って、1曲目のアレンジ曲をメニュー曲としたかったので、Noshiさんに数十秒でループする「Recollexion」アレンジ版の制作をお願いしました。
選曲画面の雰囲気も特別感を出したかったので、GPUパーティクルを散らすことに。
...といった流れで決勝ワールドが完成しました。
* 観戦ワールド
↑観戦ワールドの様子です
大会の様子と観戦ワールドの雰囲気を乖離させたくなかったので、自前でYoutube Liveが見られるワールドを作ることにしました。
ポスターやグッズ、本家Resonarkっぽい壁などを配置することで、体験に連続感が生まれたのではないかと思います。
・スタッフの募集
もし今回の規模の大会を1人で運営するなら、(中継用インスタンスは有志で管理してもらうとしても)最低3アカウント必要になります。試合の様子を実況しながら点数の集計をしながら選手と選曲の相談をしながら...になって多忙なので、大会の運営に参加してもらうプレイヤーの方が必要になりました。
大会の中心的な運営は、ある程度リズムゲームがわかっており、参加者とコミュニケーションがとれる人がよかったので、選手とのコミュニケーションと点数の集計を、普段からResonarkでよく遊んで下さっているcleanttedさんにお願いしました。
中継用インスタンスの運営は、決勝の曲を制作していただいたyuugen6さんにお願いしました。
また、私は選手のサポートと中継の他に、解説が必要だと判断しました。
大会の様子を中継するにしても、ただプレイの様子を流すだけでは(特にこのゲームを知らない方や初心者の方が)どこを見ればいいのかわからずにつまらないかな、と思われます。
プレイの解説も交えながら中継することにしました。
解説を、以前からVRChatで遊んでもらっていたTAKA.Sさんにお願いしました。
・スタッフで行う大会準備
スタッフ間では全員で当日の動き方を(時系列に沿って)共有しておく必要があると判断しました。
今回はスタッフの人数が少ないので、うまく点数集計と表示を自動化させておく必要があります。
さらに、解説に関してもある程度準備を行います。
以下、当日の動き方、点数の集計と表示、解説の順に書いていきます。
* 当日の動き方
スタッフで当日の動き方を共有するために、Google Docsを用いました。
上の画像はドキュメントの一部を抜粋したものです。
一度私が草案を用意した後、予行練習を行いながら、問題があるところを修正するといった形で組み立てていきました。
* 点数の集計と表示
点数の集計と表示をほぼ同時にやりたかったので、Google SpreadsheetとSlideの連携機能を使いました(最悪プログラムを組むつもりでしたが、コピペで簡単に利用できる機能だったのでうれしくなっていました)
集計役のスタッフが試合の点数を入力したら、配信役のスタッフのスライドが更新されるといった流れにしておくことで、無駄な工程を省くことができました。
* 解説
試合の解説を行うにあたって、あらかじめ各楽曲の特徴をまとめたドキュメントを作っていました。
初期バージョンではリズムゲーム用語を多用していたのですが、解説を行う上での心構えとして、TAKA.Sさんから初心者(リズムゲーム用語を全く知らない人)も楽しめる解説を念頭に置いた方がよいとのご助言をいただきました。
そのため、解説の準備はなるべく日常でも使いなれているであろう音楽用語を中心に組み立てることにしました。
例えば、私が思いついたところで、リズムゲーム用語は以下のように変換できそうです。
ソフラン → 楽曲中にテンポが変化する
トリル → (左右の手に対してなど)交互に音符が流れてくる
発狂 → 大量の音符が演奏しづらい配置で流れてくる
・配信の設定
今回、大会の中継をするにあたり、以下のアプリケーションを使いました。
・OBS Studio
・Voicemeeter Banana
・Youtube Live
* 音声処理
今回、VRChatの方に加え、解説役の方ともコミュニケーションを取りながら大会の進行をする必要があったので、少し音声まわりは工夫する必要がありました。
解説役の方がYoutube Liveを見ながら話すとラグがひどく、会話が成り立たない可能性があります。DiscordでOBS Studioの映像と音声を解説役の方に送りながら、解説をしてもらうといった形式をとりました。
音声の処理は以下の通りにしました。
** 入力
[VRChat, Chrome] -> [VAIO Input]
[Discord] -> [AUX Input]
[Mic] -> [Windowsの音声入力]
** Voicemeeter Banana
[VAIO Input] -> [VAIO Output, AUX Output]
[AUX Input] -> [VAIO Output]
** 出力
[VAIO Output] -> [OBS Studio] -> [Youtube Live]
[AUX Output] -> [Discord]
[Windowsの音声入力] -> [VRChat]
* 映像
OBS Studioのトランジション機能 + シーン切替機能を使って、映像を見せられないシーンと見せられるシーンで切り替えました。
映像の流れは以下のようにしました。
2nd Desktopに映したいものをすべて置いておき、配信しました。
[2nd Desktop] -> [OBS Studio] -> [Youtube Live]
[OBS Studio] <-(Capture)- [Discord] -(LIVE)-> [通話相手のDiscord]
余談ですが、1st Desktopの様子は上記ツイートのようになっていました。
大会の実行
だいたい先述したような準備をしたところで、大会の実行に移ります。
ここでは予選→本選という順に解説を行います。
ただ、実行部分に関しては比較的観測しやすかった部分だと思うので(アーカイブなどをみた方がわかる)最低限のバックグラウンドに関する説明のみ行います。
・予選
予選の応募に関してはGoogleFormで記入をしてもらい、csv形式で情報を受け取り、フィルタ機能で点数を並び替え、最終的に申請画像とあっているか目視で確かめ...という流れで行いました。
今後もやるなら自動化したいですね...。
・本選
参加者に試合に参加する以外の部分で気を遣ってもらうのはよくないという判断で、運営について参加者と共有した情報は、上記のような次第くらいです(あとは大会に関する規則など)
実際に大会を進めてみたら、奇跡的にVRChatやネットワーク周りの大きな問題が起きることなく進みました。時間も10分オーバーくらいで終わりました。
大会を終えて
↑ 本選参加者&本選スタッフでの記念撮影です
上記のような感じで大会は幕を閉じました。
私はVRChatを行う中で、今回が初めてのイベント主催でした。さらにはライブでゲーム実況っぽいことをやるのも未経験です。しかし、スタッフの方や大会に対して助言をくれたVRCプレイヤーの方(そして、調子が悪くならなかったVRCのシステム...)のおかげでなんとか終わることができました。
「きっかけと企画」で書いたワールドや制作者、プレイヤーの変化について、制作者に関しては確実にあったのではないかと思っています。
私自身、過去の譜面を見直す機会になりました。
解説のために譜面の傾向を言語化してまとめたのに加え、決勝2曲目の譜面制作では今まで登場した曲の難しい or 特徴的な音符の配置をまとめたような譜面を作ろうと意気込み、これまでの譜面を振り返りながら制作を進めました。
コンテンツにはある程度の変化が求められるものだと思います。今まで通りのシステムで新しいプレイ感覚の譜面を作るにしろ、システムに変更を加えるにしろ、Resonarkをリリースして2ヶ月が経とうとしているこの時期に振り返りをできてよかったです。
また、普段からワールドで遊んでいただいている方との交流を持つことができたなどもあります。このゲームをたくさん遊んで下さっている方とお話しすると、ゲーム運営にとって大きなヒントになる情報をいただくことが多く、とても助かります。
今回は運営していて楽しかったので、また機会があれば自作ワールドの大会にしろ、それ以外の集会にしろ、興味が向けばぜひやっていきたいところです。
今回のイベントでもとても多くの方にお世話になりました。
本当にありがとうございました!!