【ハイパーハードボイルドグルメリポート】

とんでもないものを見てしまった...

見てはいけないものを見たような、そんな感覚を関東ローカル番組のグルメリポートで体感しました。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』はテレビ東京系列で2017年から不定期特番として放送しているドキュメンタリー番組・グルメ番組。
「食べる=生きる」をコンセプトに、ギャング・兵士・難民・出所者・貧困層などの世界各地の危険な場所・危険な仕事をして生きる人物のもとへディレクターが赴いて密着取材を行い、彼らがどんな食事をして生きているかを伝える番組。

https://ja.wikipedia.org/wiki/

概要はこのようになります。

https://note.com/bunko_x/n/n5e94963d113b

こちら長江貴士さんという作家の方がその番組の著書を参考に書いてる記事なのでぜひ一読してもらえばと思います。以下ブログの内容を一部抜粋。

【「ヤバい世界のヤバい奴らは何食ってんだ?」
番組の掲げる旗印はたった一つ。普通は踏み込めないようなヤバい世界に突っ込んで、そこに生きる人々の飯を撮りに行く。いかにも粗暴、いかにも俗悪。
しかし、実際に見たヤバい奴らの食卓は、ヤバいくらいの美しさに満ちていた】
著者はこんな風に言っているが、画面越しに見ているだけでも、著者が相当にぶっ飛んだ橋を渡っていることは理解できる。
例えば、このゴミ山には家畜がいる。ゴミ山には養分がたくさんあるからと言って連れてくるのだ。このゴミ山で飼育されている豚は、他の地域の豚と比べて血中の鉛濃度が35倍だという。人間は、鉛を摂取すると、脳を始め様々な器官に悪影響をもたらす。
ということを知った上で著者は豚を食べる。
【この豚の血液が、鉛に侵されているのだ。
食ってみたい―。
鉛に侵された豚の味を確かめてみたい。】
マジで何なんだコイツは、と思う。はっきり言ってこの著者が一番ヤバいのかもしれないと思う。

いかにやばい番組であるかということがよくわかると思います。

かくいう自分もこの記事を読んで番組の存在を知り、ネットフリックスで見るきっかけになりました。

これまでドキュメンタリーというとマイケルムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』やインドネシアの大量虐殺の歴史を辿った『アクト・オブ・キリング』といった作品を見てきてどれも衝撃的な体験をした記憶がありましたが、この番組はその衝撃をさらに超えてくる代物でした。

事実は小説より奇なりとはまさにこの番組のためにある言葉と言ってもいいほどです。

普段日本から見ている現実は衣食住整っているのが当たり前でどこにでも働く環境があり、空腹で死ぬなどあり得ない世界ですが、本当の現実は違うのだと、普段見れない現実、見ようとしない現実をこの番組はとことん突き付けてくるのです。

そして、どんな環境で育とうとも自分たちは腹が減ったら飯を食う同じ血の通った人間であるということに気付かされます。

これまで世界で生じる様々な問題や出来事はどこか対岸の火事のように思っていた自分がいましたが【食べる】というごく一般的な行動にフォーカスされるため、身近に起きる出来事のように感じるというとんでもなく恐ろしい番組なのです。


個人的に最も心を揺さぶられたのは『全米一危険な街で殺し合う極悪ギャング双方のアジトに潜入!』の回でのメキシコ系ギャングについての話。

アジトを紹介してくれるのはその組織で元ボスだったシクストさんという中年の男性。彼は取材前にこう言います。

『中にいるのは現役のギャング達だ、ひとつ約束してくれ。組織の詳細を聞くのは無しだ。下手すると消される。殺されるんだ。』

番組はこのように常に途切れることのない緊張感で満ちているのです。

そして、そのギャング内でタトゥーの彫師をしているルイスという人物のご飯を取材できることになります。

彼は13歳で初めて刑務所に入り、取材した半年前にも刑務所から出たばかり、取材をしている現場で対立する組織に襲撃され銃で撃たれたこともあるという。いつどこで死んでもおかしくない、生まれたときからそんな環境で育ちギャングにならざるを得なかったのだと。

この回では現実離れしている現実が彼を通して明らかになっていきます。

そして、忘れてはならないのがこれはグルメ番組であるということ。

紹介してくれたのは行きつけの老舗メキシコ料理店で頼んだ故郷の定番料理であるナチョス。

ルイスは出来上がったナチョスを食べながらこう話します。

『メキシコは行ったこともないんだ。じいちゃんよりも前の代でアメリカに移り住んできて俺は生まれた時からずっとここ。でもやっぱりメキシコの血が流れてるんだよ。だからこのナチョスは特別なんだ』

なぜか自分のことのように思えて不思議でした。

こういう見知らぬ祖国へ抱く感情は在日コリアンだけが持つ特別なものかと思っていましたが、まさかそれが海を越えてアメリカのメキシコ系ギャングと共通する部分であるとは想像もしませんでした。

日本で生まれて日本で育ち家族とも友達とも主に日本語で話すけど、食卓には必ずキムチが出てくるし、人が集まるとすぐに七輪に炭火を焚いて焼肉したがる僕らは自分たちが朝鮮民族であることに誇りを持って暮らしているのです。

そして、それはメキシコ系ギャングも同じなのだと。

意外なところからこれまで抱いてきた疑問の答えに一歩近づけたような気がした瞬間でした。


そして物語は続き、番組の後半では敵対するアメリカ最大の黒人系ギャングのアジトに取材するという展開。

驚くことにそのアジトは先ほどのメキシコ系ギャングのアジトからたったの3キロしか離れていないということ。

敵が目と鼻の先にいるという緊張感。

黒人ギャングの案内人は言います。

今あなたはいつどこで死んでもおかしくない状況にいる

そして、抗争で死んだ仲間の名前はその現場に書くんだということを教えてくれます。

一見普通の住宅街に見えるその道には仲間の名前がカラースプレーで描かれていました。

ここにも同じように現実離れした世界が広がっていました。

そんな彼らも言います。

なりたくてギャングになった訳じゃない。そういう環境で育ってしまったんだ。

もし違う人生をを送れるなら平穏な街で普通に暮らしたいんだと。


彼らの生業は主に違法なことでありそれに同情するつもりは一切ありませんが、じゃあ自分が逆の立場になったらと考えると、綺麗ごと言える自信はありません。

そして、育った環境がいかにその後の人生に影響を及ぼすかということを考えさせられた番組でした。

グルメ番組の枠を超越した『ハイパーハードボイルドグルメリポート』

自分が抱いていた人生の価値観を大きく揺さぶられた、そんな作品でした。

映画やこういう作品を見る意義はここにあります。


おわり。


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