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あなたの木陰 小さな森の薬草店

『あなたの木陰  小さな森の薬草店』
萩尾 エリ子(著)
発行:扶桑社

また、ずっと大切に、折に触れて開くであろう
宝物のような1冊が現れました。
-人生の旅のひと休み-
表紙には、そんな一言が森の中で陽を浴びる木々の緑と同じ、薄い緑色の帯に添えられている。
「香りの扉、草の椅子」の萩尾エリ子さんの、待ちに待った新しい本です。
本の隅々まで、エリ子さんの感じているこの地球への愛情とやさしさが溢れています。それはエッセイでの言葉の運びの美しさとして現れ、四季折々の暮らしのかけらを収めた、左ページの2枚の写真と山での生活の気配と添えられた説明の文章に現れ、彼女の全身から醸すオーラに現れ、生活する場所を写した写真にも表れています。

まだ陽が昇るまえに起きたら、冬の冷えた朝に読んで欲しい。
外が暗くてライトの灯りに頼っていた室内の色が、だんだんと外の明るさと共に変わっていくひとときの時間にすら、奇跡を見ているような慈しみが増してきます。今日もはじまる。今日も終わる。そんな時私は変わらない無限を感じ、それと合わせて、今身体と命あってここに立ち会っている。そんな有限を感じるのです。

この本を読んでいると、春が待ち遠しくなります。春に芽を出す小さな花たちを早く見たい。寒さ混じる中、春の光を浴びて山の中を歩きたい。それからやっぱり山菜を料理したいし、食べたい。ふき味噌やウコギ、春の味の小さなおむすびが紹介されていて、春がきたら絶対やりたいと心が喜んでいます。
でも、これから来る冬も素晴らしい。キンキンに冷えた水に触れる痺れる感覚、耳が痛いほど空気が澄んで、どこまでも青く輝いて見える冬の空。雪が降った朝の胸が躍る感覚。
雪を温かい家の中から眺めながら飲むココアの美味しさ。
終わってしまったらしばらくは会えないのだから、今ここにある季節を思う存分愉しみたい。
64ページの「お宝」は今まさに最後の秋にできるものじゃないかしら?
この本の世界に触れるだけで、今目の前にある世界が何倍も何百倍も感じとれるようになるのです。
本来、誰しもに備わっている生命の光のようなものが、反応して喜ぶのを感じるのです。
知らなかった自然と共に在る遊び方、過ごし方、愉しみ方が詰まっていて
何度も何度もお湯を注いでまだ飲めるハーブティのように、いつまでも嬉しい。
花束茶を入れて、身の回りのどこかに自然のエッセンスを共にして、、
この美しい本の世界を愉しんでもらえたら嬉しいです。

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