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月の立つ林で

『月の立つ林で』
青山美智子 (著)
発行:ポプラ社

ー私たちは、知らないところで
 知らない誰かの「普通」を支えている。ー

この本のコピーの一節です。
人と人とは関わりあって生きているということは誰しも感じるところですが、時代が流れテクノロジーが発達し、また少し人と人とのかかわり方も変わっているのかもしれません。

SENSE OF WONDERはインターネットの本屋さんです。
2024年2月現在、これまで1267人の人たちが私たちのオンラインショップを利用してくれました。
目当ての本が出た時にという方、マスタードやパンをお目当てに利用してくださる方。毎月1冊ずつと楽しみにしてくださる方。毎回私たちがびっくりするくらいの大人買いをしてくださる常連さん(笑)
この1267人の方たちのなかで、実際に会ったことがあるのは数十人。オンラインで顔を合わせたことがある方を含めても100人に満たないはずです。
でも、私たちがひとつひとつ梱包して「いってらっしゃい」と送り出した本たちが、手元に届いて、その方を笑顔にしているなら、そこに関係はあるのだと思います。
オンラインなんだけど、顔の見える本屋さん。
それは、リアル店舗であっても、不特定多数のお客さんを「お客さん」として機械的に対応するよりは、顔は合わせてないけれど、購入履歴を見たり、毎回のやり取りや備考欄のメッセージを読んで入れる納品書のメッセージ、いってらっしゃいと箱に詰めるその瞬間に「SENSE OF WONDER」と誰じゃない「あなた」との密な関係ができているといいなと思ってやっています。

ちょっと、本のことから外れたようですが
この小説の第1章には、長年勤めた病院を辞めて今後のことに悩む看護師さんが登場します。
彼女はインターネットのショップサイトを通して購入したアクセサリーに背中を押されてちょっとだけ前を向くようになります。それは、アクセサリーが素敵だっただけではなく、作者でありショップサイトのオーナーの想いがスッと彼女に届いたことにも一因があるんじゃないかなと思うのです。

ああ、私たちが目指すものがこの小説のなかにも描かれている。
心がポッと温かくなりました。
誰かを想う気持ちは、満月のようにわかりやすいときも、新月のようにまったく見えないときもあるでしょう。でも、そこに確実にある。そんなことに気づかせてくれる小説です。

***
私はひとりごとのように言った。
「いくらご機嫌だからって、会ったこともない、好きでもなんでもない人のためにどうしてそんなに良くしてくれるんだろう」
佑樹さんはちょっと顔を揺らす。
「好きとか嫌いとか、そういうことじゃないんじゃないかな。ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う。・・・・」

ー「月の立つ林で」よりー

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人間関係が希薄になったといいながら、京都にいる私たちが北海道の人とも九州の人ともサンディエゴの人ともそんなに苦労せずに想いを伝えることができる。関わることができる。それはまたそれで嬉しいことだと思います。
これからも、あなたの心にポッと灯をともすような、そんな場所でありたいです。
そして、この先営業形態を変えることがあるかもしれませんが、月のように見え方がかわっても、その想いは変わらずそこにありつづける存在であるように頑張ります。

そして、お気づきかもしれないですが、今月は2月。
にゃんにゃんにゃんと、ねこの出現率が高い今月。
この本にもかわいらしいねこが登場しますよ!

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