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夕立ち

私の名前ですか?柴田と申します。えぇ、職業は警備員をしています。

今日は私が体験した不思議な話しでもしましょうか?

その日は通行止めの仕事でした、そうです車は通れ無いと言う仕事です。相棒と仕事場に行った時、私がついた場所がいわゆる「交通事故」があったらしく新しい花やらお菓子やらが電柱に積み上げられていたんです。
(嫌な場所についてしまったな……)
と思いながらも午前中は結構車が来て、忙しい中お昼になったんですよ。

普通は現場のつく場所を交代するんですが、相棒が体調不良で午後もまた同じ場所につく事になってしまいました。ため息をつきながらさっきの場所についたんですが、午後は全然車が来なくなって夕方頃には雨まで降ってきたんですよ。こういう時に限って工事も終わりそうにありません。嫌な雰囲気の中立ってたんですよ。

そうするといつの間にか茶色のランドセルを背負った男の子が立ってましてね。仕事柄、
「こんにちは、学校の帰りかい?」
と声をかけると、
「こんにちは!そうなんだけど……帰る場所を忘れてしまったの……」
と泣き始めてしまったんですよ。

私は慌てて、
「おじさんも一緒に探すから泣かないで」
と声をかけると泣き止んだ男の子は、どう見ても普通の小学生何ですが何か言い表せない違和感があったんですよね。
(あぁ……この子がお供え物の子なんだな)
すぐにピンときました。

その時です無線で、
「黒服の女性が今そちらに向かいました」
と入ったのです。私は男の子に、
「ちょっと待っててね」
と言うと、女性を誘導しに行きました。まだ若い女性で黒服を着て、お菓子の入った袋と花を持っていました。少し憔悴した感じで誘導に応じてくれました。

女性はまっすぐあのお供え物のある電柱に向かい、手を合わせながらお供え物を置き初め、さっきの男の子は女性に、
「ママ……僕だよ!ママ!!」
とすがりついていました。

私は女性に近寄り、
「失礼ですが、亡くなったのはお子さんだったんですか?」
と聞くと女性は涙をうかべながら、
「えぇ、一昨日学校帰りに暴走してきた車にはねられて……」
私は男の子の子を一瞥してその女性に、
「お家に帰りましょうって言ってもらってもいいでしょうか?」
すると、訝しげに私をみながらたどたどしく、
「お家……に、帰りましょう?」

すると男の子は女性を見て笑顔で、
「ママ、帰る!」
と女性の手を掴みました。女性は一瞬はっとしたように手を見ましたが一礼してもと来た道に帰ってゆきました。男の子は私を振り返りバイバイしたので、思わずバイバイし返すと監督から、
「何やってんだ?柴ちゃん、後もう少しだから頑張ってな!」
背中を叩かれてしまいました。
不思議な事にいつの間にか雨はやんでいました……。

どうでした?え?何でそんな体験をするのかって?困りましたねぇ。それは、私の前職に関わってくるんですよ。

聞きたい?じゃぁ又この居酒屋で会えた時にでもお話しする事にしましょう。では。

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