見出し画像

『南蛮七宝/あまみーいろ大島紬』

2020年の秋から制作してきた、『南蛮七宝/あまみーいろ大島紬』。

画像1

当初、完成は遅れても5月中を予定。そこからさらに遅れて、織り上がったのは6月15日。ちょうど1ヶ月の遅れ。なんとか無事に完成しました。

画像3

この大島紬は今までの大島づくりと比べて、ある意味恵まれていたモノづくりでした。

南蛮七宝の大島紬は、泥から始まって、白、夏、しーぎなど制作してきました。もちろん、染めではなく、経糸・緯糸ともに絣糸を使用した、タテヨコ絣の手で織った大島紬になります。そのため、一から作る場合、図案→意匠図→試し織を行わなければなりませんが、それに関しては行う必要はありません。そしてさらに今回は、西村絹織物で今いちばん、制作意欲の高い『あまみーいろ』。いつスタートすれば良いのか?と制作の機会を窺っていました。

キッカケ

あまみーいろの南蛮七宝の大島紬をつくるキッカケとなったのは、ある方の話から。唐長文様が着物として、どのように使われているのか?また、どんな制作工程でつくられているのか?を撮影したい。そんな話を頂いていました。

大島紬の産地も非常に職人が少なく、高齢化のため、年々生産量は減っています。今はまだある程度思い通りモノづくりができても、数年後はどうなるかは分かりません。また、あまみーいろは特殊な大島紬ですので、それらを含めて映像に残しておくのも良い機会。そして、有難いことに先方の撮影要望は、大島紬の制作にとって重要な部分はほとんど含まれました。

そんなところから、このモノづくりは、はじまりました。

撮影とモノづくり

画像2

ただ、モノづくりを進めていくのはいつも通りでも、それをいつも通りの姿でカメラに収めることは簡単ではありません。カメラを向けると職人は、どうしてもそちらが気になるので、動きが固くなります(そのせいである工程はちょっとしたミスもあったり・・・)。うまく行ったモノづくりをする、それを残す、そのためにも普段の空気感になるまで、カメラが気にならないまで時間を掛けて、カメラを回し続ける。

原材料の採取、糊張り、草木染めなどの各工程、同様いつも通り自然に手が動くようになるまで、同様でした。

画像4

向こうに見えるのは、反物の経糸(糊張りの工程)。前日までは雨が降っていましたが、日程をずらし晴れて無風に近い日に撮影。


あまみーいろの染め

この南蛮七宝の大島紬は、たんかんで染めた草木染めの糸で製織しています。あまみーいろの染糸は1疋(2反)単位でしか染めないため、同じ反物は最大でも2反しかできない、数に限りがある大島紬です。

また小ロットの理由として、草木染めの糸は濃度が高くなるほど悪くなりやすく、長期保存できません。あまみーいろは草木染料100%。そのためすぐに使う分だけを染めている。のも小ロットの理由の一つになります。

ほかにも、一度にたくさんの量を染めてしますと、欲しい色の調整が難しい(大雑把になる)と言う理由からもあるそうです。


織について

画像5

この草木染めをつかった『あまみーいろ』。絣糸には通常の『黒』ではなく、『ワイン色』でつくりました。そのため、地色のたんかん色と絣糸のワイン。通常の大島よりも、合わせるのが難しく(泥と藍に近い感じ)、織り子さん的にも難易度が高い織物となりました。

織の一部ではありますが、カメラが向いている、ギャラリーが多い中での製織は、職人さんにとって、慣れないことですので、最初、大部分の時間は絣を合わせる手が震える、合わない、やり直しの繰り返しに。

様々な撮影の中でも、ある意味この製織場面で一番時間が掛かっています。ただ、時間が経つにつれ、少しずつ慣れていく(職人さんにとって、おそらく大変な時間だったと思いますが)モノづくりのこだわりが映像から伝わるものができたと思います。


そして、6月30日

修学院の唐長さんへ織上がりの大島紬を風呂敷に包み、持参。

画像6

11代目奥様 千田郁子さんへ織上がりの報告を行いました。ここもカメラが回っていて、どこが映像に残るかは分かりませんが、織り上がった大島紬の良さが伝わっていると嬉しいです。

いつもとは、少し違った過程でできあがった、また記録にも残る大島紬のモノづくりでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?