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作楽#17 投網に鯉(荒磯)/紹巴織


1,デザイン

帯型①-4

まだ、作楽がなかった時代のモノづくり。この帯は、図案家によって描かれた図案をベースにモノづくりしました。

デザインは、大きく広がった投網、それに掛かったか、掛かりそうになった鯉が一匹。着物・日本の文様で「鯉」といえば、「荒磯」(あらいそ、ありそ)柄が有名で、荒波に鯉が跳ねる文様を思い浮かべます。室町時代に大陸から伝わった名物裂の一種です。

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「鯉」は登竜門の故事「黄河にある竜門というところには、激しい急流があり、そこはほとんどの鯉は遡ることができないが、さかのぼった鯉は龍になる。」。立身出世の意味を持ち、鯉のぼりもこの故事にちなんでいると言われています。

そんな鯉を掴むデザインの袋帯です。古来から人間の身近にあったもの、力強さ、生命力、神秘さの意味もあり、吉祥文様の一つです。


2,織組織

20200512-Captureone セッション1081

紹巴織で製織。

地には、「引粉織」
緻密な表現を可能とする紹巴織。この帯では、緻密な表現は投網の表現に、そして地の織りにその特徴を活かしています。紹巴織といえば、地紋すら入れない素無地が美しいですが、そこへ最初に変化をつけた『引粉織』地紋をこの帯では採用しています。

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黒と濃いグレー色を梨地のように織りで表現する「引粉織」。元々は、染めの技法「引粉染め」から。この染めは生地の上におが屑をまくことで、染料を吸わせ、地に味をつくる染め方。それを経糸緯糸で表現しています。

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また、紹巴織の特徴、絹の光沢をそのままストレートに表に出すのではなくて、素材感や質感に少し重きを置いた織り方でもあります。ちなみに、この後、この地組織を利用して、「沈み引粉織」という派生の織り方も作り出しました。

後日、紹介する、「作楽水仙」の帯参照。

投網部分
投網の先部分は銀糸。網には多色を使い、ふわーっした広がりを織で出そうとしました。

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網には、①主たる色2色と②地の色とミックスすることで、ここへ影を付けています。類似の柄も見られますが、奥行きが感じられないものもあり、この辺りの特徴が紹巴織の気付きにくい、地味な良さだったりします。

他にも、コーディネートした際に、角度によって、網が動くようにも見える。配色を変えても、これが生きるように、それが素材が変わっても大丈夫なように設計。

色々と考えて制作しています。

3,裏地

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裏地は、大きな七宝繋ぎ柄。
表と合わせて、大柄の共通。大柄は身長によっては避けられることもありますが、この帯の裏表ともに共通するのは、身長に合わせて、小さくしても、柄が成立します、かえって可愛らしいことも。


4,コーディネート

御召とのコーディネート。
大柄な投網でも、さりげない着姿となりますが、ちゃんと着姿の顔になっています。また、タレには「鯉」。これもアクセントになってくれています。



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この袋帯は仙福屋Onlineでもご紹介しております。

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