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ヘイロー系・ロベルト系の特徴と種牡馬

ヘイロー・ロベルトについて

現在日本競馬で活躍をしている種牡馬にヘイロー系とロベルト系の一族がいる。前回投稿したサンデーサイレンスもまたヘイロー系の種牡馬である。

ヘイローとロベルトは一大系統ではTurn-to系と呼ばれ、いずれも父はHail to Reason(米)で米ダートで活躍した競走馬である。Hail to Reasonはサンデーサイレンスの投稿でも触れたが牝系の良さを引き出す能力を持っており、それによって現在の日本競馬会においてもその産駒たちが活躍している。

K-means法で分類した下図でヘイロー系(濃緑枠)とロベルト系(緑枠)の産駒たちがどの条件で好走しているかを確認する。表示している種牡馬名は2017年から2021年の間に産駒が30勝以上している種牡馬名である。

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ヘイロー系についてはダート中心に活躍しており、ロベルト系については芝ダート、距離問わずその種牡馬が活躍しているのが分かる。これは先でも話したが、牝系の良さを引き出すからこそである。よって今回も牝系に注目しながらヘイロー系・ロベルト系の後継種牡馬について見ていくこととする。


1. ヘイロー系

ヘイロー系を大きく分けるとデヴィルズバック系とサンデーサイレンス系に分類できる。
デヴィルズバッグ(米)は現役時代、米ダ1600mで活躍した超がつくスピード馬。その産駒も同様にマイルで活躍した馬が多い。
サンデーサイレンス系については前回の投稿で詳しく説明したので、まだ読んでない興味のある方はそちらをチェック。


1-1. ロージズインメイ系

ロージズインメイの血統構成と適性能力とその産駒の適性能力についてみていく。

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母系はセントサイモン系のプリンスキロ系。この系統は母父として凱旋門賞馬を多数輩出するなど、豊富なスタミナと底力を伝える。ロージズインメイ自身は、米ダートの中長距離で活躍し、ドバイワールドC(G1ダ2000m)などの勝鞍がある。また、デビューは3歳と米競走馬としては遅く晩成型である。

その産駒は米国指向のスピードというよりも欧州型に近い適性をだすのが特徴である。平均勝利距離はマイル以上でダートの勝鞍が多い。しかし、牝系のタフさから芝の重い馬場での前残り展開の粘りこみでも好走が目立つ。


1-2. メイショウボーラー系

メイショウボーラーの血統構成と適性能力とその産駒の適性能力についてみていく。

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父タイキシャトルは父父デヴィルズバッグのスピードを受け継ぎ、安田記念(G1芝1600m)やマイルチャンピオンS(G1芝1600m)2連覇を成し遂げた名マイラー。母父Storm Cat(米)はヤングアメリカS(G1ダ1700m)を勝利を収めるなど2,3歳で活躍したように早熟タイプでスピードを強化する血統である。
メイショウボーラー自身はデビュー当初、皐月賞(G1芝2000m)、NHKマイルC(G1芝1600m)で3着と馬の出来の速さで芝レースで活躍した。しかし、本質はやはりダート馬で4歳のフェブラリーS(G1ダ1600m)で初G1制覇を成し遂げた。

産駒はメイショウボーラー同様に早熟タイプが多く、2歳戦での活躍が目立つ。父、母父ともにスピード血統ということもあり、ダート1400m以下の短距離に適性がある。どちらかといえばダートが主戦場だが、2歳戦に限って言えば馬の完成度の出来の速さから芝短距離で好走することがあるので注目してほしい。



2. ロベルト系

ロベルト自身は英ダービー馬で、そのスタミナと馬力が産駒一番の特徴である。現在日本競馬会ではクリスエス系-シンボリクリスエス系シルヴァーホーク-スクリーンヒーロー系ブライアンズタイム系が後継種牡馬として活躍している。活躍している一つの要因としてはやはり牝系の良さを引き出すところにあると思う。母父としてはリアルシャダイ系がその血筋を今もなお受け継ぎスタミナと馬力の能力を伝えている。


2-1. シンボリクリスエス系

シンボリクリスエスの血統構成と適性能力とその産駒の適性能力についてみていく。

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父クリスエス(米)は現役時代5戦3勝と目立った成績ではない。母Tee Kay(米)は父父にシアトルスルーを持つボールドルーラー系でダート中距離で活躍した。ボールドルーラー系から引き継ぐスピードの持続力とロベルトのパワーとタフさが日本競馬会にはまり、シンボリクリスエス自身は、天皇賞秋(G1芝2000m)、有馬記念(G1芝2500m)をそれぞれ連覇した。そのレース運びは、中団からギアを入れスピードの持続力を生かして押し切るものだった。いかにもロベルト系らしい走りである。

産駒は米国のスピードの持続力を生かして好走する馬が多く、どちらかというとダートでの活躍が目立つ。しかし、本質はパワーとタフさで産駒のエピファネイアが不良馬場の菊花賞(G1芝3000m)を勝利したように、スタミナを要求されるレースにも強い。

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後継種牡馬としてはストロングリターンとエピファネイアが活躍している。

2-1-1. ストロングリターン系

ストロングリターンの母父Smart Strike(加)はミスプロ系で芝・ダート、距離問わず産駒はマルチに活躍した。ミスプロ系特有のスピードの速さを受け継ぎ、ストロングターン自身は芝マイルで活躍した。初G1勝利は6歳の安田記念(G1芝1600m)で遅咲きのマイラーである。
産駒は重賞の勝利こそないが、Smart Strikeの馬の出来の速さスピードを生かして、ダート短距離の未勝利戦での活躍が目立つ。

2-1-2. エピファネイア系

エピファネイアの母は言わずも知れた名牝シーザリオで、産駒にはサートゥルナーリア(父ロードカナロア)やリオンディーズ(父キングカメハメハ)がいる。母父スペシャルウィークはサンデー系の中でもスピードを強化する指向を持つ。母母父であるSadler's Wells(米)は欧州中長距離で活躍したように馬力とタフさが持ち味。とてもバランスの取れた血統と言える。
エピファネイア自身は不良馬場の菊花賞(G1芝3000m)を勝ったようにタフさが持ち味で、前目好意からスピードの持続力を生かす競馬を得意とした。

エピファネイア産駒はシーザリオの影響が色濃く出ており、広く直線の長い競馬場での活躍が目立つ。また、根幹距離を得意としており、非根幹距離で凡走後の根幹距離変わりは注意したい。早い流れの追走が苦手で、距離はマイル以上で好走し、なおかつ距離延長は大歓迎。
内にもまれるのが苦手なこともあり、ダートの成績、内枠での成績は悪くなるため注意は必要。
奥底にはロベルトとサドラーズウェルズの馬力とタフさがあるため、デアリングタクトが重馬場の桜花賞(G1芝1600m)で好走したように、タフな馬場も苦にしない。

エピファネイアはこれからの日本競馬会を牽引する一頭であろう。


2-2. スクリーンヒーロー系

スクリーンヒーローの血統構成と適性能力とその産駒の適性能力についてみていく。

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母父にサンデーサイレンス、母母父にノーザンテーストを取り込んだまさしく芝の日本競馬らしい血統構成。スクリーンヒーロー自身G1の勝利はジャパンC(G1芝2400m)のみと圧倒的な成績は残していないが、種牡馬として成功を収めた。

産駒はダートだとマイル以下芝だとマイル以上で勝ち星を集める。特に未勝利戦、1勝利クラスに強く前目で二の足を使って粘りこむ競馬が得意。今までの傾向だとダートでの大物は現れていない。また、ロベルト系の血を引いていることでタフな馬場で好走する。

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後継種牡馬としてモーリスが活躍している。

2-2-1. モーリス系

モーリスの母父カーネギー(愛)は凱旋門賞(G1芝2400m)を制覇した名馬。Sadler's Wells系で底力とスタミナを伝える。モーリス自身はクラシック戦線に挑むが結果が現れず断念。その後、芝中長距離の名門堀厩舎に移籍したことで才能が開花したと言われる。移籍後は安田記念(G1芝1600m)、マイルチャンピオンS(G1芝1600m)と勝利していき、香港C(G1芝2000m)制覇で引退した。
産駒は芝のマイル以下で活躍しているが、モーリス自身、洋芝の2000mで勝利したようにタフな芝中長距離でも好走する。また、産駒はモーリス、母父カーネギーのように晩成型となるだろうし、キャリアを重ねてからのほうが能力を開花するだろう。

今後スクリーンヒーロー産駒の後継種牡馬としてゴールドアクターも活躍していくだろう。スクリーンヒーローの母父はレイズアネイティブ系でスピードの持続性を高めることから、モーリスよりも芝の軽い馬場、ダート中長距離で米国産馬が苦しむ展開で活躍していきそうだ。


2-3. ブライアンズタイム系

ブライアンズタイムの血統構成と適性能力とその産駒の適性能力についてみていく。

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ロベルト系の中では異質のダート一流馬でフロリダダービー(G1ダ1800m)ではフォーティーナイナーを破り勝利を収めた。種牡馬として菊花賞(G1芝3000m)、有馬記念(G1芝2500m)を制覇したナリタブライアンやマヤノトップガンを輩出した。歳追うごとにその産駒はダート馬としての活躍が増え、晩年ではタイムパラドックス(ジャパンCダート 2100m)やフリオーソ(帝王賞 2000m)などを輩出した。ダート中長距離でのスピードの持続力は一級品で今もなお引き継がれている個性である。

2-3-1. フリーオーソ系 

後継種牡馬としてはフリオーソが活躍している。母父にミスプロの血を有し、さらにスピードの持続力を強化した血統である。
産駒は芝での勝利はなく、すべてがダートでの勝星で、その多くがダート中長距離に集まる。前目でスピードに乗せてからのそのままなだれ込む競馬が得意で、スピードの持続力が引き継がれている。また、フリオーソ自身が叩き良化型の晩成型であったこともあり、その産駒も晩成型が多い。

2-3-2. タイムパラドックス系

母父にノーザンダンサー系-Lyphard系のAlzao(米)を持つ血統。Alzao自身は欧州芝中長距離で活躍した競走馬だが、最高成績がG3勝利と派手なものではないが、その血筋は日本芝のトップスピード能力を高めた。
タイムパラドックス自身は母系からくる欧州的スタミナとトップスピード能力と、父ブライアンズタイムのスピードの持続力で、ジャパンカップダート(G1ダ2100m)や、NARのダート中長距離重賞で活躍した。

フリオーソ同様に、産駒はダート中長距離での活躍が目立つ。こちらも叩き良化型で、2歳より3歳での好走のほうが目立つ。特に、京都ダート1900mなどのダート中長距離のトップスピードとスピードの持続力が求められる舞台が得意な産駒が多いので注意してほしい。

以上

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