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MAXサマースクール・イン・藝大 2018 に参加した話

2018年8月6日から8月9日にかけて開催された、MAXサマースクール・イン・藝大 2018に参加してきました。
https://maxsummer2018.geidai.ac.jp

オリジナルのMAXサマースクールは、開催概要にもありますが、かつて(1999-2000)MSP/DSPサマースクールとしてIAMASで開催されたMax/MSPの講座で、当時の受講生から多くの著名人を出している、一部界隈では伝説化されている(と僕は思い込んでいる)夏のイベントでした。
その2018年版として東京芸術大学北千住校地で開催されたのが「MAXサマースクール・イン・藝大 2018」です。

講義内容はファイルの開き方、"Hello World"、四則演算といった本当に初歩的なMaxの使い方から始まり、三輪さんの作曲手法の話、仲井さんのMSPでの音響合成などといった実践的な話、後藤さんの Max for Live、Genの使い方、Jitter上でのシェーダー(GLSL)の扱い方とレベルもジャンルも非常に多岐に渡り、初学者の僕にとってはMax/MSPという環境の全貌、可能性を把握するのに非常に役立ち、普段コードを書いている人間にとって、使い方によっては、ほとんどパッチングせずに、ゴリッとコードベースで制作してしまうという、一周回った使い方もできるMax/MSPの懐の深さに感銘を受けました。

また、「イブニング・セッション」と題して各分野のスペシャリストの方々の30分程のトークが毎日3,4回あり具体的な制作手法の話を聞かせてもらいました。

個人的に大きかった収穫としては、

1.そもそもMaxの使い方をちゃんと勉強できた事
個人的にMax/MSP環境自体は何度か挑戦していて、基本的な操作はなんとなく分かっているつもりでしたが、きちんと入門書を読んだりしたわけではなく、なんとなくで遊んでいた程度だったので、初歩的なところで勘違いしていたところが多々ありました。

主に初級コースを担当されていた仲井さんのパッチは本当にキレイで、予め用意されているパッチだけでなく、講座中に説明のためにパッチを作成する際にも、きちんとオブジェクトの位置合わせを行ったり、合理的な配置に配置し直したり、書き直したり、教科書のようなパッチを作成されていました。

今まで自分の周りのMax使いの画面を見る限り、大抵の場合、エライことになっていて、
「Maxにはリファクタリングという概念が無いのか?」と聞くと
「とりあえず(エラーはいても)動くからいいんだよ」と言われていた体験から、

「Maxの流儀では実装の美しさという概念は無いんだろうな(ディスではなく考え方の違い)、そんな時間あったら出音をブラッシュアップして勝負しているんだろうな」
という本当に失礼な先入観を持っていたところ、コーディングで言うところの「コードの美しさ」に該当する概念がMaxの世界にもあって少し安心しました。(よくよく考えてみればメディアアート界隈の大規模案件のベースで使われているほどの環境なので、アーティストのための環境とはいえ、オブジェクト指向なり、大規模開発にも耐えうる設計にもなっているはずですね)

2.自分の制作/仕事で実践的に使えそうな点が結構あったこと
例えば、ライゾマやbackspaceではoFと並んでMaxが根幹ツールとして使われていた(oFに関しては半過去形?)事は、知識としては知っていましたが、個人的にはデバイスやモバイルアプリと連動するためにOSCでやり取りをする場合などといった、プラットフォームをまたいだ環境で制作する必要に迫られない限り、Macの中で完結するものを作るときにはoFなりUnityなり、一つの開発環境で制作することがほとんどでした。
比嘉さんの講演で、oFからTouchDesignerにベースを移してもそれらのツールは画作りのツールであり、きちんとAPI化してOSCで外部から制御する。その制御元となるのはやっぱりMaxであるという話があり、改めて、枯れた技術としてのMaxの安定性を利用していこうと思いました。
Unity界隈の人たちがそれっぽいことやってますが、タイムラインのある作品であれば Max for Live を利用して、Ableton Live でシーケンスを組んで制御するとかもイケてていいなーとか妄想は膨らみます。

3.RME Babyface Pro もらったこと!
これは書くと妬まれそうで迷いましたが、MI7に感謝を表すために書きます。
MAX の国内販売代理店である MI7 のスポンサードで Babyface Pro, GENELEC 8010AP, ROLI Lightpad Block といった豪華景品のプレゼントがあったのですが、抽選で Babyface Pro が当たってしまいました。
かれこれ5年ぐらい、ずっと欲しくて、どこかのタイミングで買おうと思っていたのですが、ガチのレコーディング、ライブするわけでもないし、単純に家で良い音で音楽聴きたいなという動機が大きかったため、(ヘッドフォンアンプとして使っても良かったんですが)スピーカー等一式揃えるとなると結構な額になるので躊躇していました。
正直、僕がもらうより有効に使える人いっぱいいるだろうし(というか会場で一番有効利用出来ないのが僕だったんじゃないか) 少しだけ負い目はあったのですが、もらった以上、使い倒します。週末に、Logicの音源アップデートかけて、ギターの弦を張り替えて、いろいろ準備を整えました。やるやる詐欺にならないように、少しづつでもやっていこうと思います。

まとめ
今回の講座の主な参加目的は、「メディアアート界隈での共通言語としてのMax/MSPの習得」で、どちらかと言えば実務的なスキルというよりは教養を身につける事が目的だったのですが、結果として「自分の仕事(業務)の制作フローでもMAX全然使えるじゃん!」という発見に繋がりました。(実際のところ、映像演出の仕事自体はそんなに多くはありませんが...)
あと、エモい話でいうと、普段会社員してて、久しぶりにアカデミア/アーティストコミュニティーの中で4日間過ごして、色々と失いかけていた部分を刺激された事も大きかったです。

※8/15 文章の乱れを修正しました


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