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【story23】「かわいい」を千住に-千住暮らし100stories-

la feuille(ラフイユ)
帆足泰子さん(50歳)



ネギや大根を持って
入れる魅力的な雑貨店


千住警察署も面する大踏切通りとミリオン商店街が交わる角にたたずむのが、雑貨店la feuille(ラフイユ)。生まれた頃から千住に暮らしてきた帆足泰子さんが営む、ハンドメイドのグッズでいっぱいのお店だ。

緑色の屋根にレンガの腰壁、三角の窓がかわいらしいラフイユ。店先にはお客さんから譲られたという数多くの多肉植物が置かれ、優しい雰囲気をかもし出している

店内には色鮮やかなアクセサリーやバッグ、ベビー服や子ども向けの雑貨、置物などがいっぱいに置かれている。いずれも店主の帆足さんや作家さんによる手作り品。海外製やブランド製などのおしゃれな布を使っていたり、デザインが凝っているなど、センスを感じさせるものばかりだ。

女性や子ども向けのきれいな色合いの雑貨でいっぱい。店主の帆足さんが手がけたものもあり、布製品からアクリルのアクセサリーまで種類豊富だ

店の大きな窓辺にも色とりどりの子ども服やバッグ、雑貨がディスプレイされており、千住の人の目を楽しませながら店内へと優しく誘ってくれる。

店外からも目がとまる、窓辺に並べられたキュートでおしゃれなアイテムたち

帆足さんがla feuilleを開店したのは今から13年前。

お店を始める前にもハンドメイド作家として活動していたんですか?と尋ねると、
「ハンドメイドは趣味で、ちょこちょこ作るだけでした」とのこと。

「今みたいにプロ用ミシンを使うようになったのも、la feuilleを開店してからです。開店する前は店舗ディスプレイの仕事をしていました。仕事柄、かわいいお店をたくさん見てきて、千住にもあったらいいなとずっと思ってたんです」。

レジの横にはミシンが置かれていて、そのまま作業スペースとなっている。店番をしながら縫いものを進めていく

la feuilleを開店する半年前に、帆足さんは3人目の娘さんを出産した。

「赤ちゃんをベビーカーに乗せて、よく千住を散歩してました。散歩のたびにかわいい店にふらっと立ち寄りたいな、と思っていたけれど、千住だとマルイやルミネにしかそういう店がなかったんです」。

出産や誕生日のお祝いに人気のTシャツ。カラフルなワッペンを自由に配置して、世界で1枚のオリジナルTシャツを作ってもらうことができる

改めて千住の町を気にするようになった帆足さん。改装工事をしている店を見ては「かわいい店ができるかも!」と期待して「こんな店だといいな!」と夢を膨らませても、ほとんどが飲み屋さんになってしまって毎回がっかりしていたそう。

「何度もかわいいお店を期待して、妄想してはがっかりするのを続けて。そのうち、それなら自分でそんなお店をやろう!って思ったんです」。

目指したのは、買い物袋にネギや大根を挿したまま誰もが行ける、かわいい店。
赤ちゃん連れの帆足さん自身が足を運びたかった、千住の町を彩る店だ。

白を基調とした店内には、かわいいものでいっぱい!
贈り物や自分へのプレゼントを探しに来る人も

さっそく店舗となるスペースを借りようと、不動産屋の吉村商事に足を運んだ帆足さん。

「当時、千住4丁目にあったおしゃれなワンピース専門店・透明マニラが大好きだったんです。透明マニラさんから紹介してもらったのが吉村商事でした。透明マニラさんのそばでお店をやりたい!と思ったけれど、吉村さんにおすすめされたのは、ちょっと離れたところにある、今の店舗スペースだったんです」。

元気で明るく、笑顔の多い帆足さん。店舗前での撮影でも、いい笑顔!

思っていたエリアではなかったものの、以前はカフェだったというこじんまりとしてきれいな外観と、子育てサロン併設で健診も行う千住庁舎のそばのため子連れのお客さんが来てくれそうなことが、帆足さんの背中を押してくれた。

そうして13年前、雑貨店la feuilleが生まれたのだ。

「かわいい」がいっぱい詰まったla feuille。帆足さんの夢を叶えてくれたお店だ

「la feuilleは、このあたりになかった雰囲気のお店。だから開店当初は近所の方に遠巻きにされていました。でも当時、生後半年だった三女を連れてお店に来ていて、娘も1日お店にいたおかげで、『赤ちゃんがいるのね』と皆さん来てくれるようになったんです。今でもたまにお客さんから、『ベビちゃん、どうしてる?』って聞かれるんですよ」と帆足さん。

開店当初にla feuilleの看板ベビーだった娘さんが愛用した乗り物おもちゃは、今では店内のディスプレイに。お客さんに連れられてきた小さな子どもが乗って遊ぶことも

赤ちゃんがきっかけとなり、お店の雑貨も注目されるようになって、la feuilleを訪れる人はゆっくり、じわじわと増えていった。

店先の多肉植物はお客さんにプレゼントしてもらったものがほとんど。「千住の人って気前がいいですよね」と帆足さん

今では創業13年を迎え、店内では帆足さん自身が作った雑貨のほか、ハンドメイド作家さんのアクセサリーやバッグ、子供服なども扱うようになった。お客さんとの絆も育ち、壊れたアクセサリーの修理を頼まれたり、物づくりの相談を受けたり、親子向けにワークショップを開催することもある。

アクリルで作った鉱物標本風のデコレーション。店内でこんな作品が作れるワークショップを開催することも

開店当時は、店の中をハイハイする赤ちゃんだった娘さんは、今では元気いっぱいの中学2年生。

店も家族も、すくすくと成長を遂げてきたのだ。

お弁当4個を作って
家族を送り出したら店へ!

千住で生まれ育ち、今も千住に暮らして千住に店を構える帆足さん。

そんな千住づくしの理由を尋ねると、
「親の持ち家を譲ってもらってそのまま暮らしてきただけなんですが、千住はいいところですよね。路線が多くて便利だし、気取らない、気のいい人が多くて住みやすい。最近、若い人向けの店も増えてきたのもうれしいです」とにっこりと答えてくれた。

店を持った今、朝から晩まで1日中、千住で過ごすことがほとんどだという。

朝の過ごし方をうかがうと、
「子どもが3人いるんですが、今は朝の登校時間が全員バラバラ。一番早く家を出る次女に合わせて5時に起きて、朝ご飯と長女・次女・旦那・自分のお弁当を用意しています」ととても忙しそう。

昼食にはいつもお弁当を持参。娘さん2人と旦那さんのお弁当と一緒に、毎朝ささっと作るのが日課。「昼は外に出られないので、お弁当を持っていくようになりました」

あまり早く朝ご飯を食べると午前中のうちにお腹がすいてしまうので、帆足さん自身の食事は6時半~7時の間。「朝ご飯は旦那と長女と一緒。その後、7時頃に3女が起きてきて、8時には全員家から出かけていきます」。

la feuilleへ出勤!大きなバッグの中身は布地。店内のスペースは限られているため、雑貨を作る布はいつも自宅でカットしてから持参している

家族全員が出かけたら、家事や布地のカットをする時間。限られた時間内に忙しく動き回ってから出勤し、10時半にla feuilleをオープンさせる。明るくて元気な帆足さんらしく、慌ただしくもにぎやかなルーティーンだ。

店舗に到着したら、シャッターを開けて店先の多肉植物たちのお世話をするのが日課

「子どもがいると、生活リズムが子どもに合わせて変わっていきますよね。子どもたちが成長してきたら登校時間がずれていって、ここ数年はこういうペースになりました」と帆足さんは笑う。

店舗奥のお客さんから見えにくいエリアには、小さい頃のお子さんたちの写真が飾られている

la feuilleの閉店時間は17時半。自宅に帰ったら、手早く夕食の準備だ。

「休日に作り置きした料理などで夜は簡単に。うどんなどの麺類もよく食べますよ」。

今では珍しくなった、町の製麺所・まにわ商店

そんな帆足さんのお気に入りで、la feuilleから帰る途中に立ち寄ることもあるのが製麺所のまにわ商店だ。

「まにわさんの手打ちうどんでカレーうどんを作ると、とにかくおいしい!煮込むと麺が太くもっちりするんです。中華麺や焼きそば、冷やし中華もおすすめです」
と、まにわ商店のおいしさについて話し出すととまらない帆足さん。

撮影をお願いしたところこころよく許可してくれた、まにわ商店の店主ご夫婦。毎朝6時から、店内で色々な麺や餃子などの皮などを作っている

「餃子を作る時も、ここの餃子の皮を使います。皮ももちもちでおいしいんですよ!」と帆足さん。聞けば、子どもの頃からまにわ商店の麺や皮で作った料理を食べてきたのだという。

帆足さんにとって、まにわ商店の麺や餃子の皮は子どもの頃からおなじみのほっとする味なのだ。

江戸時代から栄えてきた宿場町の商店街は、帆足さんにとって子どもの頃からのなじみの場所だ

お気に入りの
飲食店で話もはずむ

もう1軒、千住で帆足さんのお気に入りなのが国道4号沿いにあるフレンチ店、SUZA bistroだ。

SUZA bistroの須崎昭治シェフと。今では家族全員がSUZA bistroのおなじみに

「オープンして間もない2015年に家族でSUZAさんに行ったら、子ども向けメニューがないからと、特別にオムライスを作ってくれたんです。すっごい大きいオムライスだったんですよ!」と帆足さんは店主の須崎さんとおしゃべりしながら説明してくれた。「子どもたちが大喜びで、SUZAさんもフレンドリーなのでお祝いの食事をするたびに行くようになったんです」。

コロナ禍でなかなか外食に行けない時期も、SUZA bistroにはパンを買いに来たりしていたのだそう。

「塩バターパンや食パンがおかずに合うんですよ!」と帆足さんは力説する。

すっかり話が盛り上がる帆足さんと須崎シェフ。上級のビストロとジビエ料理が食べられると人気のSUZA bistroでは、店頭や店内で焼きたてパンも購入できる

la feuilleがお休みの日曜日には、別の店でパンを購入することもある。

「イチカベーカリーやふらんすやにも、開店して間もない頃から行ってます。ふらんすやでの定番はホワイトロール!子どもたちと行くと、店内でチョコやクリームをはさんでもらって勝手に食べてます」。

帆足さんのお気に入りの飲食店は、家族に影響されたものも多い。

「お弁当屋さんのペコペコ亭も、子どもたちが唐揚げ弁当を食べたい、ってよく行くんです。唐揚げが大きめで、食べ応えあるらしいですよ」というように、育ち盛りの子どもたちにせがまれて足を運ぶこともあるという。

千住で働き暮らす人にとって、千住のお店は家族との思い出に重なるのだ。

親切な美容室の手で
「緑のおばちゃん」に

帆足さんのトレードマーク、鮮やかな緑色の髪。オリジナリティがありつつ、自作のかわいいイヤリングともなじんでいる

帆足さんが千住で気に入っている店は、食べ物関係以外にもある。

「美容室のふらここさん。店内に手作り感があって落ち着くし、すっごい親切なんですよ」。

ふらここの内装は、店主ご夫婦でDIYしたもの。lafeuilleと雰囲気が似ている、と友人に知らされて帆足さんも通うようになった

「ふらここに行くと、2人ともほわんとしていて親切で、いつもすごい癒されます。髪を切った後のことも考えてくれて、『少し伸びたら自分でこうするといいよ』と教えてくれるんです」と帆足さんはにっこり。

「ふらここさんなら、カットしてから時間が経っても、形が崩れないんですよ」。

いつもフレンドリーな、ふらここの店主ご夫婦

ふらここで緑の髪にしてもらって以来、いいこともたくさんあった。

「この髪の色で、色んな人にすぐ覚えてもらえるんです。服のことなどで近所の子が困っていたら、お母さんから『緑のおばちゃんとこ行っといで!』って、気軽に来てもらえるといいなって思ってるんです」と帆足さんは笑顔で言った。

お店にやってきたお子さんが作ってくれた、味のあるかわいいキャラクター。もらった日以来ずっと、お店の片隅に飾られている

いつも笑顔で明るい「緑のおばちゃん」は、雑貨屋さんで日々かわいいものを生み出して、千住を元気づけている。


Profile ほあし やすこ
雑貨店lafeuille店主。千住生まれ千住育ち。店舗ディスプレイの仕事を経て、2010年、雑貨店lafeuilleを開店。店内で販売されている雑貨やアクセサリーの製作も手がける。店舗にてアクセサリーや服のリメイクなどの相談に応じることも。3人の女の子の母。
https://www.instagram.com/lafeuille405/


取材:2023年5月19日、5月26日
写真:伊澤 直久(伊澤写真館)https://www.izawa-photostudio.com/
文 :大崎 典子

文中に登場したお店など


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