見出し画像

【第14回】日米安保条約の変貌、イスラーム世界の社会運動、沖縄の新基地反対運動

【21世紀における覇権争いとウクライナ戦争の勃発】(2000年~2022年)【第14回】日米安保条約の変貌、イスラーム世界の社会運動、沖縄の新基地反対運動
第14回≪問い≫
1.テーマ:日米安保条約の変貌
  ・対テロ報復戦争は、世界と、とりわけ憲法9条をもつ日本の安全保障政策をどのように変貌させたか?
 2. テーマ:イスラーム世界における社会運動〜アラブの春〜
  ・アラブ諸国の独立、その後の政権運営に対する社会運動はどのように生まれ、それをどう   
   理解すべきか?
 3.テーマ:沖縄の辺野古新基地反対運動
  ・普天間基地基地の代替とされる「辺野古基地」は、米軍の再編の中で、なぜ不要な「新基
   地」と呼ばれるか?

≪問題提起≫
1.対テロ報復戦争は、世界と、憲法9条をもつ日本の安全保障政策をどのように変貌させたか?
日本政府は「憲法9条下の日本では、集団的自衛権の行使は不可」との72年以来の政府見解を覆し、現憲法のまま集団的自衛権を行使可能とする法制局長官まで起用し、安全保障関連法案を強行採決で成立させた。
米国は、かねてより「憲法9条を日米同盟協力に対する制約」と指摘し、日米の「高いレベルの作戦統合」に向けた解釈改憲による集団的自衛権の行使を勧告していた。米国の国防上の脅威とする北朝鮮の核と弾道ミサイル開発は、日本を通過・飛翔する過程の迎撃が必要とされ、集団的自衛権とミサイル防衛の巨額な「特別予算」の負担など大きな問題となった。
第二次安倍政権は自衛の措置でも武力行使は必要最低限にとどまるとする72年政府見解を真逆に援用し、憲法9条下でも集団的自衛権で「必要最低限な」武力行使を可能とする閣議決定を行った。しかもその武力行使の新要件とは、「我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し」、よって「我が国の存立が脅かされる場合」とした。誰が該当要件をどう判断するのかは示されず、すでに成立した特定秘密保護法によってその事態認定は秘密扱いとされ、大量化学兵器の発見されなかったイラク戦争のようにアメリカの国策による戦争への加担が強いられる法制となった。  

2. アラブ諸国の独立、その後の政権運営に対する社会運動はどのように生まれ、それをどう理解
 すべきか?
オスマン帝国時代のアラブ諸国は、民族、宗教、宗派に配慮したミレット制を基礎した緩やかな共存自治制をとっていたが、第1次世界大戦に勝利したイギリスとフランスによる保護国、委任統治におかれ、且つパレスチナ先住民を排斥してイスラエルの建国による抗争を生み出した。
第2次世界大戦後独立したアラブ諸国に発生した「アラブの春」と呼ばれる社会改革運動のうち、チュニジア、エジプト、シリアに絞って検討する。「アラブの春」は、チュニジアに起きた無許可露天販売で逮捕された青年の抗議の焼身自殺を発端とし、反独裁・反腐敗・反格差の大規模な市民参加の運動に発展した。アラブの春を考える上で、重要な視点は、この抗争を人種・民族、宗教・宗派による対立として捉えてはならないこと、またイスラーム主義運動は、政教一致の国家構想として打ち出されたが、破綻したということである。
チュニジアでは、選挙で勝利したムスリム同胞団政党は、退場を余儀さなくされ、政教分離政党を主軸とする政権運営に移行した。エジプトでは、2回に渡る大規模デモとストライキ運動によって、政権交代を実現し、イスラーム同胞団を含むイスラーム主義運動はその支持を失った。シリアでは、民族主義政党バアス党とムスリム同胞団の対立の中でも、イスラーム主義運動の政権関与の是非や、宗派対立を煽る介入への批判は継続しており、「今世紀の最大の人道危機」を脱する和解が求められている。

3.普天間基地の代替とされる「辺野古基地」は、米軍再編下の中で、なぜ不要な「新基地」と
 呼ばれるか?
米軍普天間基地の辺野古移設の是非を巡り、日本国政府と沖縄県の対立が深刻化する中で、「保守と革新を越えた沖縄」を掲げた市町村議会議長らは、政府に「オスプレイの配備撤回と普天間基地の県内移設断念を求める建白書」を提出した。辺野古新基地の是非を問う県知事選では建白書の実現を公約する「オール沖縄」候補が大差で当選し、新知事は、前知事の海面埋立承認を取り消した。しかし、政府は行政不服審査法を利用し、沖縄防衛局を「一般私人と同様の立場」に仕立て、農林水産大臣認可の下に「辺野古が唯一の解決策」として埋立を強行し、SACO合意から4半世紀が経過する現在も普天間基地は返還されていない。
一方、米国は世界的なパワーバランスの変化に対応して米軍再編をすすめ、日米両政府は、沖縄海兵隊実働部隊を2000人規模に縮小し、沖縄滞在を半年とする計画に合意した。
米軍はすでに9.11以降、テロ・大規模災害などの「予期せぬ脅威」を想定し、効率的作戦計画と現地集合型の迅速で機動力ある部隊配置戦略に移行した。沖縄を拠点とする海兵隊部隊を、佐世保を母港とする強襲揚陸艦隊と共にインド太平洋を巡回する役割と見れば、沖縄に海兵隊基地を代替する必要性はない。辺野古を唯一の解決策とする歴代政権の問題解決力が問われている。 

写真:辺野古新基地(建設設計計画)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?